いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

f:id:markrock:20190212213710j:image
いしうらまさゆき へのお便り、ライブ・原稿のご依頼等はこちらへ↓
markfolky@yahoo.co.jp

[NEW!!]2022年2月24日発売、ビッグ・ボッパー『シャンティリー・レース』、フィル・フィリップス『シー・オブ・ラブ:ベスト・オブ・アーリー・イヤーズ』、チャド・アンド・ジェレミー『遠くの海岸 + キャベツと王様』の3枚のライナーノーツ寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20230129183945j:image
[NEW!!]2022年12月23日発売、バディ・ホリー・アンド・ザ・クリケッツ 『ザ・バディ・ホリー・ストーリー』(オールデイズレコード)のライナーノーツ寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20221230235618j:image

 The Aerovons

markrock2010-08-25

/ Resurrection ( RPM / 2003 )


エアロヴォンズ。アビーロードスタジオで1969年に録られてお蔵入りになったアルバム音源(ノーマン・スミスのプロデュース、ジェフ・ジャレットアラン・パーソンズのエンジニアリング)は、どう考えてもビートルズ似(シングルのみ2枚のリリース)。髪型も。でも、バッドフィンガーよりも嫌いじゃないかな。バッドフィンガーも相当好きで良く聴いているんだけれど、聴いているとビートルズの弟扱いされたのが可哀想すぎて。ピート・ハムの音盤に込められた哀しみがじわじわと効いてきて、辛くなってきてしまうことが良くある。とっても好きなバンドではあるけれど。


それと比すると、こちらはモロにビートリッシュに作ろうとして作っている感じもして。タイトル曲の”Resurrection”なんて、ビートルズのメロトロンを使ってアタマからシッポまで”Across The Universe”だし。”Say Georgia”は”Oh! Darling’”ですか、本人は意図していないと言っているけれど、分かり易すぎるよ!替え歌じゃないんだから。とはいえ、あの時代にアビーロードの機材を含む環境でコレを作ったってのは重要すぎる。これ以上元ネタ明かしはやめましょう。ビートルズファンならすぐ思い浮かぶはず。でも、言っておくとそのクオリティは高度ですよ、カナリ。全てのソングライティングを手がけたトム・ハートマンは恐るべし。他の著名ビートバンドより録音はしっかりしてるかもしれない。ちなみに、”She’s Not Dead”という曲はソウルっぽいニュアンスもあって、ビートルズっぽいけども、ビートルズには作れないような独自の世界がある。ドラミングがどうしてもリンゴっぽくて、ビートルズになっちゃうんだけれどね。


元々はアメリカのバンド。不思議に思いながらも長文ライナーについつい惹き付けられてしまった。ざっと読んだだけなので、誤訳があったら申し訳ないけれど、まだ16歳だったトム・ハートマンのバンドに、ロンドンに赴き、EMIでデモ・テープを聴かせる段にこぎつけたのはトムの母親の手柄だったようだ。しかしバンド解散の理由ってのが、悲しいですな。レコーディング前に決定したメンバーのうち(元のメンツとは入れ替わっている)、リズムギターのフィル・エドホルムは、「このバンドは俺の曲を演る機会を与えようとしねぇ!」とシングルのレコーディング前にバンドを飛び出してしまい、残った3人の内、ドラマーのマイク・ロンバードは、妻が彼の居ないところで浮気をして、そのショックでバンドの演奏を続けられなくなってしまう。しかもそれをバンドに伝えたのが彼の母親だったってのが笑える。お子ちゃまバンドじゃないですか!


そんなわけで、アルバムのリリースがキャンセルされて、トムはロスに渡り、マイク・ポストの元でシングル”Sunshine Woman”(Bell Record)をリリース。しかし、反響はなく、ポストの勧めもあって大学へ戻ったようだが、そのマイアミで撮った映像とその音楽が認められたことが縁で、テレビやラジオのコーマーシャル音楽を手がけることになったようだ。


こんな数奇な運命を回顧しつつトムが、「レコードを出したことなんかより、ビートルズというロックの歴史に出会えたことが嬉しい」なんていうコメントを残していて泣ける。何しろバリバリ現役時代のポールやジョージとコンタクトがあったんだからね!