/ 時代遅れのラブ・ソング( Victor / 1978 )
ワイルド・ワンズのドラマー植田芳暁が結成したウェストコースト風味のバンドのセカンド。昔湘南サウンドを軽く本気で研究したことがあって、その時にレコードで買ったような記憶もあったけれど…今日CD化されていることに気づいて手に入れてみた。うーん、やっぱり持っていたような…負けたような気分だが、探すのも面倒なので聴こう。
実はそこまで期待しなかったのだが、かなり良質の気持ち良いサウンド。歌謡色は比較的薄く、ウェスト・コーストの風は確実に吹いてますよ!ライナーのインタビューで植田が明かしている通り、ビーチ・ボーイズからイーグルスに至るウェスト・コーストのハーモニーものに焦点を当てている。時はまさにポパイな時代が一通り到来し、西海岸がキていたわけで。ワイルドワンズ自体もむちゃくちゃコーラスが上手いバンドなわけだけだが(ビーチ・ボーイズなんかをやらせると凄い!)、このバンドもこれまたキレイにハモるんだな。植田のハイトーンがやはり光っている。
オーストラリア出身のピーター・シューイがヴォーカルと詩で参加した”サーフラ・サーフラ”は、タイトルでもじった“さくらさくら”な、というよりベンチャーズ歌謡な和のメロディと“サーフィンU.S.A”な、というより“Back In The U.S.S.R.”を融合させたユニークな作。英語詞でありまして。ラストはボーナストラックでディスコもの単発シングル“ゴー・ウェスト”(ヴィレッジ・ピープル)。ここまでいくとサーフものでも何でもなくなってきて、このバンドの末路が一発で理解できるけれど、それは抜きにしても日本語のディスコって面白いですな。
森雪之丞、鈴木義之(バニーズ)がライターで参加。対バンも演っていたハルヲフォンの近田春夫が鍵盤を弾く曲も。ライナーの裏にはRCサクセションと対バンを演った懐かしのチラシなんかが当時の空気そのままに刷られていて、日本のロックの正史からは消え去っているけれど、確かに存在した、ベテランが気を吐いたこのバンドを忘れてはならないと感じさせられた。カバーも入ってよりサーフィンGS的な作りのファーストもCD化されている。山下達郎みたいな化け物級のアーティストが世に出てこなければ、そこそこ話題にはなっただろう。