/ Same ( Reprise / 1970 )
シーナー&コスというと、1972年の唯一作が、フィフス・アベニュー・バンドのケニー・アルトマン参加作と言うことで、ジョン・セバスチャンの『Welocome Back』とともに注目に値するけれど。さて、今日はシーナ&コスの2人が在籍していたデトロイトのロックバンドのファースト。実はもう1枚出ている。メンバーはジョン・シーナー(ピアノ・ハープシコード)、ラリー・ザック(ドラムス・パーカッション)、アル・ジャックス(リードボーカル、ベース)、ロン・コス(リードボーカル、ギター)の4人。
音としては1970年という時代をある意味素直に反映したロックサウンド。あくまでB級だけど、これぞロックですね。プロコル・ハルムにもろにインスパイアされたようなクラシカルなアプローチが見られるシーナー作”Lady Rain”が聴きもの。ボンゴの入るコス作”Dear Lenore”も、ちょっぴり後期ビートルズの入ったストレンジなロックなのだが、フレーズにビートルズの”Rain”が入っていたり、影響をある意味素直に反映させた音が微笑ましい。ボブ・ディランの”All Along The Watchtower”も純粋にカバーしていて(ギターソロなんぞそこそこ熱い!)、ほんといいとこ取りの趣。まあそれでいて個性と呼ぶには至っていない所を良いと思えるかどうかは音楽への愛情にかかっている。
オスカー・ピーターソンの代表作”Hymn To Freedom”のインストで幕を開けるB面はますますつかみ所がないが、村上春樹かっていう”1984”なんてのもあって。
プロデュースはジョー・ウィサート。ボズ・スキャッグスの泣く子も黙る大名盤『Silk Degrees』を手がけたことで知られているが、キャリア初期にはタートルズ『Happy Together』、ラヴィン・スプーンフル『Everything Playing』を手がけたこともあった。スプーンフルとのコネクションを見てみると、ロン・コスはジョン・セバスチャン作品に参加しているし、シーナー&コス盤へのケニー・アルトマンの参加もその繋がりと推測できる。さらに、ジョー・ウィサートは70年代半ばにアース・ウィンド&ファイアーのプロデュースも手がけており、ケニー・アルトマンの”Feelin’ Blue”をアルバムに忍び込ませている。フィフス・アヴェニュー・バンド繋がりで言えば、ケニーは大成しなかったけれど、ジョン・リンドはアース・ウィンド&ファイアーに提供した”Boogie Wonderland”をきっかけにトップ・ソングライターとしての地位を確立したことも思い出される。
さて話は戻って、こんなサヴェージ・グレースの盤だけれど、ビルボードで182位にランクインしたようだ。