いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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The Strangers / Land Of Music

*[45s] The Strangers / Land Of Music( kr / 1966 )

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前回のジェイムス・テイラーのいたフライングマシーンの写真にジェリー・バーナムが映っていた。彼が在籍していたフィフス・アヴェニュー・バンドの前身が、ピーター・ゴールウェイ、ケニー・アルトマンらが在籍したストレンジャーズ。失礼ながら、ジェイムスが吉田拓郎だとするなら、ピーターは加川良でしょうか。音楽性の話ではないけれど。リリース元のチェス傘下のkrは、ジェイムス・ギャング~ゲス・フーのギタリストだったドミニック・トロイアーノ在籍のマンダラのシングルなどをリリースしていたレーベル。レーベル名はKoppelman/Rubin(コペルマン・ルービン)の頭文字を取ったものだろう。チャールズ・コペルマンは元バンドメイト(アイヴィー・スリー)のドン・ルービンと組んでドン・カーシュナーのアルドンに入り、その後独立してラヴィン・スプーンフルを大成功させ、後にCBSビリー・ジョエル、ジャーニー、ジャニス・イアンなどを手掛けた大物裏方。今作のプロデュースはスプーンフル同様エリック・ジェイコブセン。このシングルはフォーク・ロックが胎動した60年代半ばニューヨーク、グリニッジ・ヴィレッジの雰囲気を伝えてくれる音。もちろんボブ・ディランがその起爆剤だったわけだけれど、フライングマシーンやフィフス・アヴェニュー・バンドは、フォーキーながらソウルと近接したファンキーかつメロウな音が魅力的だった。それと比べると、ピーター・ゴールウェイのデビューとなったストレンジャーズは、習作の時期と言ってよいのか、もっと直截的に1965年のボブ・ディラン(”Like A Rolling Stone”)を引用してみせる。でも、コーラスにはドゥ・ワップのメロウな黒人音楽の成分を含み、グッドタイミーな色もある。ただ、”Like A Rolling Stone”のAメロは、リリース前年の1964年にバリー・マン(&シンシア・ワイル)が作り、フィル・スペクターがプロデュースしたライチャス・ブラザーズ”You've Lost That Lovin' Feelin'”のCメロの循環コードに似たものがあるわけで、その点が黒人音楽をルーツにもつピーター・ゴールウェイ達の演奏によって浮かび上がってくる。これも音楽のひとつのマジックに違いない。ちなみに手元にあるシングルは白DJコピーで裏面も「Land Of Music」。イエロー・レーベルのものには”I need Your Love Inside Me”というフィフス・アヴェニュー・バンドを彷彿とさせる名曲が入っているが、そちらの盤はなかなか入手困難でお目にかかったことはない。さらにもう一枚、ストレンジャーズにはテストプレス盤「Give Way Or The Other / Hassles Castles」があるというけれど、果たして本当に存在するのだろうか?

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