/ 馬耳東風( Warner / 1979 )
大好きな歌い手だ、新井英一。“清河(チョンハー)への道”で90年代に話題をかっさらったコリアン・ジャパニーズ・シンガー。今日レコード屋で、彼の一枚目のアルバムを見つけたので、買ってみた。
彼が29歳の時、1979年の作品だ。帯には「時の流れを超えて、心を揺さぶる歌がある。今、ビッグ・スケールのシンガー&ソングライター登場。」とある。ビックリするくらい、90年代の諸作と肌触りが変わっていない。時代が気づかなかっただけのことで、しゃがれたディープな歌声は既にこの時完成されていたのだ。エクゼクティブ・プロデューサーは新井にデビューのきっかけを作った内田裕也だ。
映画『けものみち』のテーマに採用された無伴奏の”カラス” や弾き語りの”はなたれこぞう”に強烈なインパクトがあった。歌謡タッチの”物語””狼の挽歌”も沁みる。”ボロボロ””セクシー”は新井の音楽の一つの重要な要素であるブルーズを感じる。ニューミュージック風の味付けの”早春賦”は歌詞の重さと合わない部分があった。
シングルには”北北西の風”、”南人情博多節”(全集Vol.1にも収録)が切られたようだ。長渕剛をはじめとした九州フォークの文脈からも聴けるけれど、背負うモノは違うなと。