/ Formerly Anthrax ( Elektra EKS-74084 / 1970 )
口蹄疫騒ぎは胸が痛む限りだけれど、今日はFormerly Anthraxというタイトルのアルバムを。同じ家畜の病気でも“炭疽病(Anthrax)”の名が入っている。“以前は炭疽病”って何のこっちゃ。
その名の通り、ジャズ・ロック・テイストのむちゃくちゃ変なバンド。フォーキーな要素もあるし。何とも掴めない感じが魅力なのだ。メンバーは多くの曲を書くキーボーディストJack Jacobsenにパーカッション(ドラムス)のRick Cutler、そしてボーカル・ギター・フルートのJerry McCannの3人。これがまた冒頭のA-1”No Words Between Us”から何ともスリリングな演奏を披露してくれる。A-2”Stanley’s Theme”はラストにスキャットなんかもあって。最近こういうシンプルな生演奏にグッと来る。
一番有名なのはVan Morrisonのむちゃくちゃカッコイイカバー、A-3”Moondance”に尽きるかな。コレは1970年という時代を思うと早すぎる音。コレ一曲でも買いな一枚。ロックとジャズのおいしいとこ取りでありまして。この時代だからこんな尖った音に出来たのだな、と思う。
妙ちきりんなブルーズ・ロックみたいなA-4”These Things I Know”(コレはJerryの作)や、Richie HavensのカバーB-1”No Opportunity Necessary, No Experience Need”もグルーヴィーでなかなか。ジミヘンのB-2”May This Be Love / One Rainy Wish”なんてのもあって。コレはStephen Stillsみたいに聴こえる瞬間もある。そう言えばStillsもJimiに心酔していてファーストでは共演もしていたなと。B-3”Mount Olympus Breakdown”はバンジョーとアコギで奏でるインスト。とはいえ、ブルーグラスな雰囲気で行くのかと思ったら、レイト・シックスティーズを引きずったメロディが飛び出して。Jerry作のB-4”Like A Child”はアクースティックでSSWライクな作品。ファルセットなども飛び出してなかなか感動的。ラストのB-5”Toy Piano and goodbye”は悲しげなメロディが印象的。ただし、あんまりジャズ・ロックなテイストはないかな。
今手元にあるのはプロモーションコピーのLPだが、どうも調べてみるとWounded BirdからCDが出ているらしい。こんなのをCD化するなんて面白いな。全然関係無いけど、Wounded Birdが出すような奥の細道的名盤CDは売り切りなのか、廃盤になるのも早いので、欲しいと思ったら買っている。ボーナストラックみたいなせこい商売をしていないのは実に素晴らしい。でもそうなると、CDにそこまで固執しなければ、LPで持っている場合はわざわざ買い直さなくても良かったりする。
Jerryは2000年代に本盤の再演を含む2枚のアルバムをリリースしている。JackはHuey Lewis & The Newsの2001年の快作『Plan B』にキーボードで参加、RickはMichael Franksの1982年のアルバム『Objects of Desire』で叩いている。