/ Faster Than The Speed Of Life ( Rev-Ola / 1969 )
さて、60年代後半のロックを聴いている人ならば、ステッペンウルフの大ヒット”Born To Be Wild”の作者Mars Bonfireって何者?と思うはず。私もずっと疑問を持ってきたわけだけど、ここ数年で氷解。ステッペンウルフの前身となったカナダのバンド、スパロウのメンバー、デニス・エドモントンが改名したということだったんですな。カナダ時代には、リック・ジェイムスとニール・ヤングが在籍したマイナー・バーズとも交流があったらしく。デニスはステッペンウルフがファーストをリリースする頃に脱退したようだ。
これはその、改名したマーズ・ボンファイアの唯一作。Rev-Olaから再発CDが出たのは2年前。1回ほど聴いてしまってあったのを今日取り出してみて。
冒頭にステッペンウルフに提供した2曲のヘヴィー・ドライヴィン・ロックM-1” Faster Than The Speed Of Life”、M-2”Born To Be Wild”を並べていてぶっ飛ばされる。もちろん、ジョン・ケイの凄みの効いたうねりのあるボーカル(特に”Born To Be Wild”〜とエキゾチックに歌う所)とは比べようにもないけれど、こんなちょっとしたローカル・アーティストの楽曲がロック史に残る名曲となったことに感動する。
さて、本盤はデモ・レコードの体裁をとっているゆえ、UNIレーベル(1968)とCBS(1969)から2度リリースされているとのこと。割と多彩なロック・チューンが並んでいて。コーラスがブリティッシュ・ビートを思わせる切ないポップM-3”Sad Eyes”、カントリーっぽいM-5”Tenderness”(ステッペンウルフがレコーディング)、ジョー・サウスの”Hush”なんかを思わせるM-6”She”も良い。でも、ブルーズを発展させた重いビートが炸裂するM-7”Ride With Me , Baby”(これもステッペンウルフが演っている)やM-11”Night Time’s With You”みたいな曲がどうにも魅力的。ビートリーな階段コードが飛び出す、M-8”How Much Older Will We Grow?”なんてのもあり。
ライナーを読んでいたら、当時彼の作る音楽に衝撃を受けたのか、ストーンズのミックとキースに呼ばれてスタジオでセッションした話だとか、スパロウ時代から繋がりがあるキム・フォウリーのバックを演っていた話だとかが書かれていて。こんな人でもロック史に残る名曲を書いて消えてしまったのがなんだか不思議で。”Born To be Wild”の印税だけで生活できるのかな、なんて小市民的邪推をしてみたり。