/ dEMOS ( Atlantic/Rhino R2 519624 / 2009 )
ニール・ヤングのアーカイブ・ボックスと抱き合わせか?と言ったCSNのデモ集。1991年の名4枚組ボックスを大事に聴いていた頃から思うと、マサカこんなものが出る時代になったのか、と感慨深くもあるが。ちなみにニールのボックス、CD版をアマゾンで予約したところ、予約直後に1500円も値下がりするという客を馬鹿にしくさった商売をされてしまいました。
さて、気を取り直してこのデモ集。2007年リリースのStephen Stillsのデモ集『Just Roll Tape April 26, 1968』(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20070714)、グレアム・ナッシュとジョエル・バーンスタインが編集したライノのボックス(デヴィッド・クロスビーのボックス『Voyage』(2006)とグレアム・ナッシュの『Reflections』(2009))の一連の発掘作業の締めなのか。2006年リリースのCSNのリマスター盤にも幾つか見逃せない未発表テイクが含まれていたのだけれど(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20060224)。
さて、中身を見てみると全体的に音質は良好。スティルスの蔵出しテープが酷かったものだから警戒してしまう。録音は1968年から1971年にまたがっているが、CもSもNも、後にソロとして発表する楽曲も含め、殆んどの代表曲をグループ結成時点に準備済みだったことが判る。つまり満を持してのデビューだったと言うこと。
M-1”Marrakesh Express”はCとSも参加して、スタジオライブ・テイクの趣き。M-2”Almost Cut My Hair”はクロスビーのボックス『Voyage』にも収められていた弾き語りデモ。CSNのマジカルなハーモニーを初めて合わせた曲M-3”You Don’t Have To Cry”は1968年の音源。スティルスの弾き語り(1番まで歌われる)。M-4”Deja Vu”も嬉しいクロスビーの弾き語りデモ。M-2と同じタイミングで録音されたものだろう。後半のジャジーなスキャットなど思わず失禁しそうになる。M-6”My Love Is A Gentle Thing”はその後1978年になって『Throughfare Gap』で発表されるスティルスの未発表曲だが、スティルス・チューニングによる意外と陰鬱な作りで、1978年版の方が好感が持てる。M-2”Singing Call”の方は既に完成されている仕上がり。M-8”Music Is Love”はクロスビーのファースト収録の名曲だが、オーバーダブ前の音源。ニールとグレアムのコーラスは入っている。
M-10”Long Time Gone”はスティルスのギター、ベース、ドラムスが入ったC&Sのヴァージョンで、既にクロスビーのボックス『Voyage』で発表されていたもの。しかし、『Voyage』では前に出てこなかったボーカルが前にせり出してきていることからして、リミックスを行ったのかも。
M-12”Love The One You’re With”はスティルスの弾き語り。いつ聴いても素晴らしい曲。しかしソロアコギ・スティルスの真の実力は公式盤に残されていない気もする。1975年の『Stephen Stlls Live』にその一端は垣間見えるのだが、例えば、1974年のCSN&Y再結成時のブートDVDなんぞを見てみますと、狂ったように凄まじいスティルスのソロが聴ける。コレ、未聴の方は是非どこかで探して見て下さい!
ナッシュのM-5”Sleep Song”、M-7”Be Yourself”はCとSの存在感に負けている。ピアノ1本、緊迫した調子で歌われるM-11”Chicago”のような、時代がナッシュに書かせた名曲もあるにはあるのだけれど。しかし、ナッシュの本当の実力が花開くのは、CとSのエネルギーが落ちてきた70年代後半以降。ナッシュのボックス『Reflections』を聴いて改めて感じたことだ。