/ 青春の世界 ( 東芝EMI LRs-408 / 197? )
このLP、歌謡界を代表する作曲家、都倉俊一の自演盤。ピンク・レディーのヒット曲の全てや、狩人”あずさ二号”、山本リンダ ”狙いうち” ”どうにもとまらない”、椎名林檎もカバーした”白い小鳩”(朱里エイコ!)なんかを作ったことで知られているこの方、ナカナカ歌える人なのだ。特にコレ、ネスカフェで有名なネッスルの販促用に作られた非売品で、A面はこの盤のみで聴けるレアな自演集、B面は前編英語詩で海外発売もなされた意欲作『This is my song』からの抜粋となっている。
B面の素晴らしさはいわゆる和モノソフトロック・ブームで語られた通り。ミドル・オブ・ザ・ロードをゆく素晴らしい楽曲群は、お坊ちゃまの遊芸というには失礼なほど素晴らしい出来。海外進出してレイフ・ギャレット盤をプロデュースした、その実力を思い知る。
さて、歌謡ファンにとって堪らないのはA面の方。ネスカフェ「青春の歌」コンテストの最優秀作品A-1”友がいれば”、初期アリスがレコーディングしているM-2”青春時代”なんかはこっ恥ずかしくなるほどに70年代な青春フォーク歌謡。神田川な時代の息の詰まるベッタリ感が堪りません。さらに、スタンダードな所ではペドロ&カプリシャスのM-6”ジョニイへの伝言”の自演版が貴重。高橋まり(現真梨子)程の歌唱力を求めるのは酷だが、男声でよく歌えている。
ちなみにペドロ&カプリシャスで思い出したが、昨今、スーツでキメたキャバレーの箱バンってな雰囲気を残したバンドは少なくなって参りました。キャバレー自体が衰退しているわけだし。平田隆夫とセルスターズとか、洋楽モノを演らせてもなかなか上手いバンドが結構いたのだ。田中昌之がいたクリスタル・キングもそれっぽいバンドに見えます。
さて、都倉のLPでもう一枚知られているのがキングから1976年にリリースされた『抱擁』。この盤でも、大塚博堂 ”ダスティン・ホフマンになれなかったよ”の作詩で知られる藤公之介とがっぷり四つに組んで、実に毛並みの良い歌謡ポップスを展開。甘い多重コーラスものA-2”ソネット”、歌謡ボッサA-3”青春のさすらい”、嫌でもピンク・レディーを髣髴とさせるアッパーなA-4”イルミネーション”、洋楽的感覚と歌謡曲らしさが同居したB-2”雨にうたれて” など佳曲多数。B-1”いとしのチャーリー”はシングルが切られている。