/ East of Angel Town ( Warner / 2007 )
ロジャニコの40年ぶりの新作が気になるこの頃。とりあえず新しい盤のレビューを。
ピーター・シンコッティ。何という覚えにくい名前。この盤、デヴィッド・フォスターとフンバルト・ガティカがプロデュースしているとなると、マイケル・ブーブレやジョシュ・グローバンに続く大型新人ボーカリストかと言う先入観を抱く。とりあえず期待して聴いてみると、自作曲ばかりを収め、プロデューサーの色はそんなに感じられない。しかも、聴いた時点ではハズカシながら全く知らなかったが、そもそもコノ人、2003年にフィル・ラモーンのプロデュースでデビューしていた若者。そこでは王道のジャズ弾き語りを披露していたことを考えると、ここで聴ける大胆なロックアレンジは、シンガーソングライター的側面をクローズアップすべく、イメチェンした作と考えて間違いない。
冒頭のピアノが踊るファンキーロックM-1”Angel Town”でちょっと裏切られた感じもあるが、映像的な美しいバラードM-2”Goodbye Philadelphia”を聴いて本物と確信。ファルセットが堪らない。この曲をはじめ、著名な作詞家ジョン・ベティスとの共作が13曲中10曲。見事なコラボレーションとなっている。ピアノマン風情のM-3”Be Careful”ではビリー・ジョエルを思わせる。M-4”Cinderella Beautiful”やM-6”December Boys”M-13”The Country Life”もとりわけその色。一面の銀世界を思わせる、流麗で簡素なメロディが素晴らしい。
その他では弾き語り調のM-8”Another Falling Star”、ポップなM-10”Man On A Mission”が良い。しかし聴き進めていくと、ちっちゃいハコで、コレほど過度なアレンジ無しで聴いたら良いんだろうなぁ…という気に。この人、きっといずれ弾き語りの音に戻っていくんじゃないだろうか。フォスターには悪いが。