/ 受験生ブルース 高石友也フォーク・アルバム第2集 〜第2回・高石友也リサイタル実況より〜 (Victor 18233 / 1968)
最近再々発されて手に取るのも容易になった高石友也の名ライブ盤(1968年大阪サンケイホールのリサイタル実況)。この人もオリジナル曲が少ないことで、同志とも言える岡林に比べて正当な評価を得ていないような気がする。でもそもそもフォークソングなるもの、民衆の遺産を歌い継いでいくものではなかったか。そういう意味ではホンモノの風格がある。
なんといってもA-1の大ヒット”受験生ブルース”から軽妙なギターの弾き語りがいい。客席との掛け合いを楽しむようなアドリブ感が実にいい感じ。まさに「アドリブでございます」。赤い鳥のレパートリーでもあるがA-3 ”お父帰れや”では際立った歌の上手さに気づかされる。この曲はA-2 ”あの人の日曜日”、A-4 ”とび職ぐらし”とともに、1950年代からうたごえ運動に参加していたすずききよしの作。高石も別の盤で歌っている”俺らの空は鉄板だ”も彼の代表作だ。A-5”のんき節”は御馴染みの演歌師添田唖蝉坊の作。高田渡ともども左翼歌手のお手本となった人だが時代を超えた批評性がまことに痛烈。A-6 ”時代は変わる”はディランを日本語に翻訳した熱い一品。冒頭のフォークソング常套句”Come gather around people”を中川五郎は ”受験生ブルース”で「おいで皆さん聞いとくれ」と訳したが、ここで高石は「あなたのまわりをごらんなさい」と聴衆に呼びかける様に訳す。高石の訳詞は原詩に忠実かつ気持ちがよく伝わるいい詞だ。ちなみに高石が訳したBarry McGuireの”明日なき世界”は80年代にRCサクセションが、発禁騒ぎで物議を醸した反戦・反原発アルバム『COVERS』で取り上げた。A-7の代表曲”想い出の赤いヤッケ”を経て裏を返すとB-1”一人の手”は言わずと知れたピート・シーガー曲。とうとうシングアウト開始。会場が一丸となって歌う歌う。熱い時代の息吹をイヤというほど感じます。B-2佐々木勉の”旅立つ人”を挟んでB-3”あるおっさん云いはった”は脱力するユーモアがなんともいい感じ。反戦歌B-4”拝啓大統領どの”はフォークルの加藤和彦も歌っている。後半は怒涛のシングアウト。トム・パクストンのB-4”橋を作ったのはこの俺だ”、B-5”新しい日”、そして最後の定番B-6”We Shall Overcome”まで。もうここまでくると私などでは入り込めない雰囲気に。そういえばヒットした”受験生ブルース”のシングルバージョンのエンディングには”We Shall Overcome”がチラッと入っている。
ところで、高石と言えばブルーグラスに果敢に挑戦したナターシャセブンの諸作も良いが、1993年に出版した本『さあ、陽気にゆこう フォークソング年代記』の付録CDが捨てがたい良さ。過去の代表曲全28曲を弾き語り中心に聴かせている。また、マラソンランナーとしての側面をも持つ彼だが、有森裕子がアトランタ五輪で思わず引用してしまった”自分をほめてやろう”という名曲も忘れがたい。