少々単調な気もしたけれど、ロージーのアジテーション的な拡声器パフォーマンスは、ロックという音楽が何者だったのかを思い出させてくれる。開演前に客席に拡声器片手に登場したとき、お客さん無反応だったのがちょっと悲しかったけれど。新作聴いとらんのかい、っていう。冒頭のThe Revolution Will Be Televised はギル・スコット・ヘロンの「革命はテレビ中継されない」っていうThe Revolution Will Not Be Televisedを引用したもの。「革命もテレビ中継される、でも誰も関心をもたない」っていう痛烈な現代情報社会への皮肉ですね。Angelのスケールを意識的に取り入れたジミヘン・トリビュートScared For The Childrenも素晴らしかったし、Live In The Darkも一聴して耳に残る曲。『Loud Hailer』はまさにLive In The Dark な2016年という不穏な時代を掴み取る現代性があったと思うし、キャリアを総括するような、ジェフの多様なサウンドの型が詰まっている良作だった。
ジェフのギターは快調。ツアーで日々演奏しているわけだから、東京の初日は腕鳴らし程度で流しているような軽みもあったけれど。とはいえ流石です。ベタベタに耳タコレベルなCause We've Ended As Loversを聴いた瞬間に身体に流れる電流ですよね、グッと来ちゃうんですから。ロニー・マックのLonnie On The Moveもあったし、Beck's BoleroやらSuperstitionやら、代表曲を絶妙に網羅していて。個人的にはボニー・ドブソン〜ティム・ローズという流れでジミヘンにイメージが繋がるMorning Dew(『Truth』収録)やサム・クックA Change Is Gonna Comeを朗々と歌い上げたボーカリストのジミー・ホール(『Flash』で名を挙げた)もいかにもジェフ好みだなあと思った。イギリス的なブラック・ミュージックの感性というか。ジミー自身はアメリカ出身てかアラバマのサザン・ロック・バンド、ウェット・ウィリーのメンバーだけれども。ジェフやクラプトンもそうだけれど、イギリス的なアメリカ音楽への距離感や感性って面白いですよね。妄想が入っている部分があって。日本も似たようなところがある。
開演前のSEからして、ロックンロール〜R&Bのオンパレードで、レス・ポール・トリビュートなんかもありましたが、ロックに原点回帰しているようにも思えたり。このご時勢、俺がやらなきゃ誰がやる的な。とはいえ、ジェフらしいな、と思ったのは『Wired』『Blow By Blow』期の楽曲でした。最も革新的な音を作っていた時期だった、ということなのだ。でも、今回のプレイヤー的に、再現は厳しいのかな。ヤン・ハマーやマックス・ミドルトン的なキーボーディストも必要だし。
1.The Revolution Will Be Televised
2.Freeway Jam
3.Lonnie On The Move
4.Live In The Dark
5.The Ballad Of The Jersey Wives
6.You Know You Know
7.Morning Dew
8.A Change Is Gonna Come
9.Big Block
10.Cause We've Ended As Lovers
11.O.I.L.
12.Thugs Club
13.Scared For The Children
14.Beck's Bolero
15.Blue Wind
16.Little Brown Bird
17.Superstition
18.Right Now
encore#1
19.Goodbye Pork Pie Hat
20.Brush With The Blues
21.A Day In The Life
encore#2
22.Going Down
ディック・ドマーニは1973年にRCAからホワイト・ウォーターというバンドで唯一作『Out Of The Darkness』をリリースしている。こちらはヴィニ・ポンシアのプロデュース、ということで、アンダース&ポンシアにプロデュースしてもらった幸運な人、ということになる。こちらは結構ファンキーでソウルフルな仕上がり。その後も音楽活動を続けて、自主盤をリリースしたりもしていたみたいだけれど、公式HPも閉じちゃってるみたいだし、現在ご存命なのかもわからない。
さて、今日はマーク・コーンを聴いている。大統領就任式の日の彼のツイッターを見ていたら素直に、悲しい!と書いてあった。去年『Careful What You Dream: Lost Songs and Rarities』(http://marccohn.net/)というレア・トラック集を出したんだけれど、アメリカ国内のみCD販売があり、国外販売もいずれ、とHPにある。でも、待てど暮らせど国外からの購入環境が整わない。ダウンロードなら買えるんだけれど。Walking In Memphisでグラミーを獲って一世を風靡した彼でも、国外ファン層は限られているし、現状はシビアなのかもしれない。
ウェスト・コースト・ロック界のリベラリスト達が90年代に一押ししていたのがシンガー・ソングライターのマーク・コーンだ。1991年のファーストにはジェイムス・テイラーが参加した。1992年のバルセロナ・オリンピックの公式CDに収録されていたOld Soldierは、デヴィッド・クロスビー1993年のソロ『Thousand Roads』でナッシュ、マークのハーモニー付きで歌われたし(先日紹介したデヴィッドの新作にもマークとの共作があった)、ジャクソン・ブラウンのアルバム『Naked Ride Home』にコーラスで参加していたこともあった。そう、アート・ガーファンクル1997年のチルドレン・ソング集『Songs From A Parent To A Child』にはマークのThe Things We've Handed Downが取り上げられている。
一方、1993年のセカンド『Rainy Season』はCDのみのリリース。シングルカットされた曲のみ、レコードでリリースされていて。このアルバムは丸ごとアナログで聴いてみたかったから、ちょっと残念。手元にあるシングル盤はアルバム中一番好きなWalk Through This Worldという曲。2012年にジョー・コッカーもカバーした。シングル盤の音自体はというと、この辺の時代からアナログ向けの音と言うより、そもそもデジタルなCDリリースを前提とした音って感じがします。バンドサウンド自体は王道アメリカン・ピアノ・ロックなんですが。これはCDと変わりはないですね。いやー、それにしても、この曲を下敷きにして作った曲もあるんですが、時効ということにして下さい…。
ニルソンのトリビュート・アルバムでTunn On Your Radioを歌ったりというのもありました。これはカセットをロンドンで買った記憶がある。
三作目の1998年『Burning the Daze』でアトランティックと契約が切れて(2006年にベスト盤が出た)、その後は2005年にライブ盤『Marc Cohn Live 04/05』が、2008年にはデッカと契約してアルバム『Join the Parade』(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20071111)をリリース。これがまた素晴らしくて。ザ・バンドを聴いたときのイノセントな感動が伝わってくるListening To Levonが最高だった。カーラジオから流れてきたリヴォン・ヘルムの歌声に心を奪われ、ガールフレンドの話は耳に入らなくなっちゃった、なんて曲。
ASKAがチャゲ&飛鳥時代に書いた曲でオンリー・ロンリーって曲があったけれど、その語感はYou’re Only Lonelyかな。ロイ・オービソンのOnly The Lonelyではないだろう。さて、唐突ですが2011年に出たJ.D.サウザーのセルフカバー盤『Natural History』のアナログ。You’re Only Lonelyも入っています。コレ、彼の公式サイトで一時期売っていた。6年前は今ほど新譜アナログ熱を帯びていなかったためか、最後は彼のサイトでCDと抱き合わせで叩き売りされていたのを思い出す。なぜかその時手を出さなかったのだけれど、今になってCDと聴き比べしてみたいと思うに至って。しかし時すでに遅し!サイトでは販売終了、2015年の新作『Tenderness』(レビュー→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20150625)のアナログが日本のレコ屋にもたくさん入荷した割に、売れ残っていたのと対照的で。やっぱり有名曲のセルフカバー盤の方が売れたんだろうな。てなわけで、見つけるのに意外と難航して、最後はレコーディングが行われたナッシュビルの業者が持っている在庫を取り寄せた。内容に関しては下に2011年に書いたレビュー(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20110611)を参考にして頂きたい。
ちなみにJDのソロ『John David Souther』『Black Rose』『Home By Dawn』の3枚がOmnivore recordingsより、デモ音源などのボーナス・トラックやアウトテイクなどを含めて昨2016年の1〜2月に再発された(http://omnivorerecordings.com/artist/jd-souther/)。イーグルスの楽曲を支えて来た優秀なソングライターとしてのJD、再開したライブ活動も充実し、改めて注目が集まっているタイミングでの拡大版リリースだった。それにしてもファースト『John David Souther』の再発リリースの直後、グレン・フライが亡くなったことは残念で悲しい出来事だった。そもそもグレンの死でJDを思い出し、再発リリースを知ったのだった。
さて、今回のレコードジャングルでは…まずはボブ・ディラン『Oh Mercy』のアナログを。プロデュースをダニエル・ラノアに委ねた、現在のディランにも繋がる美学のある作品。リリースは1989年ですか。驚くほど時代の流れに耐え得る音作りになっている。あのしゃがれ声も、トム・ペティとの共演の頃からすると急激に声量が落ちた頃で。でも今聴くと、現在の声に近づいているのがわかる。Ring Them Bellsとか、Shooting Star、それにMost Of The Timeとか、大好きな曲が入っている。アナログの音もなかなか迫力があった。そういえば、ロビー・ロバートソンの復帰作もこの辺の時代だった。最近、日本盤LPと聴き比べるためにアメリカのオリジナルLPを買ってみたけれど、こちらは余り音に差が無かった。
さて、あとはセッション・ギタリストとして著名な今剛のソロ『スタジオ・キャット』。井上陽水のバックなどでもお馴染みです。マイク・ダン、ロバート・ブリル、マーク・ジョーダン、マイケル・ボディカー、林立夫との共演。鋭いギターの音も素晴らしい。2曲H2O詞曲の歌モノがあって、Think About The Good Timesのグルーヴ感がなかなかカッコ良かった。
全曲試聴はココをクリック 収録曲「東京」PVはココをクリック 【Tower Records特典】(新宿店・吉祥寺店少量限定)
5曲入CD-R(MASH RECORDS MASH-005 Year : 2015)
アルバム未収録の洋楽カバーを収めた全5曲の特典盤!!
1. God Only Knows(The Beach Boys)
2. I'd Really Love To See You Tonight(England Dan & John Ford Coley)
3. Laughter In The Rain(Neil Sedaka)
4. Danny's Song(Loggins and Messina)
5. Universal Soldier(Buffy Saint-Marie)
収録曲「I'd Really Love To See You Tonight」PVはココをクリック
■ミュージックマガジン2014年10月号行川和彦の“りある”インディ盤紹介 Do It Yourself!にいしうらまさゆき3rdアルバム『語りえぬものについては咆哮しなければならない』レビューが掲載されました
■CDジャーナル2014年9月号に いしうらまさゆき3rdアルバム『語りえぬものについては咆哮しなければならない』レビューが掲載されました ココをクリック
■レコードコレクターズ2014年9月号ニュー・アルバム・ピックアップに いしうらまさゆき3rdアルバム『語りえぬものについては咆哮しなければならない』レビューが掲載されました 「つくづく生まれてきた時代を間違えてんじゃないかと思う。今回のアルバムも、70年代的なイディオムがたっぷりとつめ込まれている。あらためて思うがフォークは風刺であった。真正直に言ったらシャレになんないよ、といった事柄を自虐と諧謔を込めて歌にする。この伝統的な遺伝子が、いしうらまさゆきには備わっている。相変わらずどこか稚拙でヘナチョコなところがあるけれど、でも圧倒的に彼を支持したくなるのはその部分だ。ニューオーリンズのR&Bを匂わせる曲があったり、ラッパーのEARVIN(ウリフターズ)と組んだフォーク・ラップがあったりもするのだけれど、そういった新しさが奇妙なほど斬新に響く。カラ元気のように吉田拓郎や岡林信康の名前が登場してくる「愛すべき音楽よ」や「路上から On The Road」などを聞いているとすべての苦悩や杞憂や絶望を、自身の細腕で何とかしようと頑張ってる一途な姿が浮かんでくる。たぶん君は時代を変えられないかもしれないけど、でも僕は君のことずっと好きでいるよ。」(小川真一)
■いしうらまさゆき
3rdアルバム『語りえぬものについては咆哮しなければならない』
MASH RECORDS MASH-002
Distributed by VIVID SOUND
2014年7月20日発売
定価2160円(tax-incl.)
購入方法はココをクリック
"無(ゼロ)の季節"、"しょうがない (feat.EARVIN)" 、"日本(ニッポン)の繁栄"、"愛すべき音楽よ"、"路上~On The Road 1995.3.20"、"永遠のリズム"…他 全14曲!!
全曲試聴はココをクリック
■ミュージック・マガジン2013年2月号行川和彦の“りある”インディ盤紹介 Do It Yourself!にいしうらまさゆき2ndアルバム『愛すべき音楽よ』レビューが掲載されました
■『TRASH-UP!! vol.14』
2013年1月発売 MUSIC REVIEWにいしうらまさゆき『愛すべき音楽よ』レビューが掲載されました。
■いしうらまさゆき
2ndアルバム『愛すべき音楽よ』
MASH-001
2012年11月1日発売
定価1000円(tax-incl.)
(MASH RECORDS)
購入方法はココをクリック
"青春DJ"、"ねがい"、"僕は君と…"、"愛すべき音楽よ"他 全17曲!!
吉祥寺オリエンテッドな中央線フォークを歌い継いできた、いしうらまさゆき2枚目となるフル・アルバムが堂々のリリース!プロデューサー馬下義伸とがっぷり四つに組んだ今作は、「音楽愛」をテーマにビートルズ、ビーチ・ボーイズ、ボブ・ディラン、CSN&Y、S&G、はっぴいえんど といった音楽的ルーツを下敷きに、ロックの感性で弾きつくし、歌い尽くした快作!!全編ポップなメロディに飄々とした批評精神が横溢。毎日欠かさずレコード屋に通い続ける音楽バカだからこそ歌える、音楽を愛しすぎた故の嘆きでもあり希望!…愛すべき音楽よ、一体どこへ行こうとしてる??(イラスト&デザイン Daniel Kwon)
<この商品はCD-Rです。自身による詳細な解説を加えた特製ブックレット付属!!>
■ミュージック・マガジン2012年1月号行川和彦の“りある”インディ盤紹介 Do It Yourself!にいしうらまさゆき『蒼い蜜柑』レビューが掲載されました
「79年に東京で生まれたシンガー・ソングライター、いしうらまさゆきのデビュー作『蒼い蜜柑』(カゼ KAZE015)は、元ピピ&コットの金谷あつしがプロデュースした約26分6曲入り。社会性も帯びた歌詞や朗々とした歌唱も含めて70年代初頭の日本のフォークへのオマージュも感じられるが、ノスタルジーに終始することにより発するカビ臭さはなく、くるりや山本精一との接点も感じる現在進行形の日本のフォーク・ロックとして楽しめる。いわゆるシスコ・サウンド風の艶やかなエレクトリック・ギターとほのぼのしたバンジョーも挿入し、井の頭公園とその入り口をアートワークに使っている、東京・吉祥寺の都会的な土臭さが染み出たCD。」
(行川和彦)
■いしうらまさゆき
1stアルバム『蒼い蜜柑』
KAZE-015
2011年9月15日発売
定価1500円(tax-incl.)
(KAZEレーベル)
購入方法はココをクリック
一方、1999年には大学時代の友人とコミックフォーク・デュオ「うず」を結成し、ソニーミュージックエンタテインメントのコミックソング・オーディションに合格。とりわけバブルガム・ブラザーズのBro.Tom氏に気に入られ、『Live on TV 原石』(テレビ東京)、『ピンク・パパラッチ』(日本テレビ)などに出演。以後もブルースターレコードにお世話になりながら、ソロで江古田マーキー、四谷コタン、中目黒楽屋、吉祥寺Be・Point、お台場Yesterday Once Moreなどのライブハウスに出演。