いしうらまさゆき の 愛すべき音楽よ。

音楽雑文家・SSWのブログ

いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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いしうらまさゆき へのお便り、ライブ・原稿のご依頼等はこちらへ↓
markfolky@yahoo.co.jp

2024年5月31日発売、V.A.『シティポップ・トライアングル・フロム・ レディース ー翼の向こう側にー』の選曲・監修・解説を担当しました。
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[NEW!!]2024年3月29日発売、モビー・グレープ『ワウ』、ジェントル・ソウル『ザ・ジェントル・ソウル』の解説を寄稿しました。

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2024年2月23日発売、セイリブ・ピープル『タニエット』の解説を寄稿しました。
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2023年12月22日発売、ロニー・マック『ワム・オブ・ザット・メンフィス・マン!』、ゴリウォッグス『プレ・CCR ハヴ・ユー・エヴァー...?』、グリーンウッド・カウンティ・シンガーズ『ハヴ・ユー・ハード+ティア・ダウン・ザ・ウォールズ』の解説を寄稿しました。
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2023年12月22日(金)に大岡山のライブハウス、GOODSTOCK TOKYO グッドストック トーキョーで行われる、夜のアナログレコード鑑賞会 野口淳コレクションに、元CBSソニーでポール・サイモンの『ひとりごと』を担当されたディレクター磯田秀人さんとともにゲスト出演します。
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「アナログ鑑賞会〜サイモンとガーファンクル特集〜」 日時:12月22日(金) 19時開演、21時終了予定 入場料:予約2,000円 当日2000円(ドリンク代別) ゲスト:石浦昌之 磯田秀人 場所:大岡山 グッドストック東京 (東急目黒線大岡山駅から徒歩6分) 内容:①トム&ジェリー時代のレコード    ②S&G前のポールとアートのソロ·レコード    ③サイモンとガーファンクル時代のレコード(USプロモ盤を中心に)    ④S&G解散後、70年代のソロ·レコード ※それ以外にもレアな音源を用意しております。
2023年11月25日(土)に『ディスカヴァー・はっぴいえんど』の発売を記念して、芽瑠璃堂music connection at KAWAGOE vol.5 『日本語ロックが生まれた場所、シティポップ前夜の記憶』を語る。 と題したイベントをやります。
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2023年9月19日、9月26日にTHE ALFEE坂崎幸之助さんの『「坂崎さんの番組」という番組』「坂崎音楽堂」で、『ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクル』を2週にわたって特集して頂きました。
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坂崎さんから
「聞きなれたS&Gがカバーしていた曲の本家、オリジナルの音源特集でしたが、なかなか興味深い回でしたね。やはりビートルズ同様に彼らもカバー曲が多かったと思うと、人の曲を演奏したり歌ったりすることも大事なのだと再確認です。」
2023年10月27日発売、『ディスカヴァー・はっぴいえんど: 日本語ロックが生まれた場所、シティポップ前夜の記憶』の監修・解説、ノエル・ハリスン『ノエル・ハリスン + コラージュ』の解説を寄稿しました。
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2023年9月29日発売、『風に吹かれて:ルーツ・オブ・ジャパニーズ・フォーク』の監修・解説、ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニー『ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニー』の解説を寄稿しました。
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2023年7月28日発売、リッチー・ヘヴンス『ミックスド・バッグ』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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2023年8月26日(土)に『ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクル』の発売を記念して、西荻窪の素敵なお店「MJG」でイベントをやります。
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2023年6月30日発売、ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクルの監修・解説、ジャッキー・デシャノン『ブレイキン・イット・アップ・ザ・ビートルズ・ツアー!』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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2023年3月31日発売、スコッティ・ムーア『ザ・ギター・ザット・チェンジド・ザ・ワールド』、オールデイズ音庫『あの音にこの職人1:スコッティ・ムーア編』、ザ・キャッツ『キャッツ・アズ・キャッツ・キャン』の3枚の解説を寄稿しました。
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2023年2月24日発売、ビッグ・ボッパー『シャンティリー・レース』、フィル・フィリップス『シー・オブ・ラブ:ベスト・オブ・アーリー・イヤーズ』、チャド・アンド・ジェレミー『遠くの海岸 + キャベツと王様』の3枚の解説を寄稿しました。
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2022年12月23日発売、バディ・ホリー・アンド・ザ・クリケッツ 『ザ・バディ・ホリー・ストーリー』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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 ムッシュ・フォーエヴァー

markrock2017-03-03


ムッシュかまやつが亡くなったとの報、ショックが大きい。今日も一日、どよーんとした気分で過ごしてしまった。ムッシュの何から何まで好き、っていう人いますよね。きっと同じような気持ちの人がいるはずだと思う。あのテンションコードだらけの弾き語り、唯一無二だった…もう一度聴きたかった。

ツイッターでは深夜にワイン飲んでるとか、ステーキたいらげたとか、それにミッキー・カーチスが突っ込みを入れる、っていうやりとりが。いやはや老いてなお元気だなと感心していたのだった、闘病生活に入る前までは。


飄々とした本当の粋人だったと思う。テイチク時代のカントリー、ロカビリー、GS・スパイダース、ニュー・ロック、フォーク、そして90年代以降のリヴァイヴァルもあったでしょう。戦後日本のポピュラー音楽の歴史そのもののような、しぶといミュージシャンだった。時代感覚ですよね。GS(グループサウンズ)から(ニューロックもあったけれど)、吉田拓郎に飛びつく嗅覚って凄いと思う。産湯のカントリーとフォークの音楽性の近似があったにしても。


とはいえ旧制高校バンカラ風味の「我が良き友よ」のB面にタワー・オブ・パワー参加の「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」ですから、そのバランス感覚は普通ではなかったわけで。ある意味ゲーノー界的な嗅覚なんだけれど、商業主義的というよりはセンスで選んでいる感じ。キャンティ文化にも関係しつつ、西洋文化を一番早く摂取できる立ち位置で、何よりオシャレであり続けた。ユーミンの幻のデビュー・シングル「返事はいらない」のプロデュースもムッシュだったし。

1996年でしたか、高校生の時にNHKの公開録画で観たのが最初。玉置浩二と二人で出演していた。確か急にキャンセルになった沢田研二の代役だったはず。でも自分でいいのかな〜なんて言いながらもお客さんを喜ばせる、息の合った素晴らしいステージを見せてくれて。20代のときにはムッシュが大好きな友人と江古田マーキーでのライブを観に行ったけれど、とても良くって。ちょうどムッシュキンクスのトリビュート盤に参加していた頃だった。その頃ぼくもマーキーで何度かライブを演っていたんだった。で、ムッシュのライブは、アルフィーを解雇された!とか言っていたドラマーのグリコと二人で(アルフィームッシュのバックを演っていた)。キンクスとかストーンズなんかも、肩の力を抜いて演っちゃうんですよね。かるーくジャムる感覚で。終演後はもちろん出待ちしましたよね。

その二年後ぐらいに吉祥寺のボガ(中川イサト『お茶の時間』のジャケットになっている喫茶店の現店舗)で隣にムッシュが座っていた、ということもあった。あまりの衝撃に「ムッシュですよね?」と問いただしてしまったが、見間違えようもなく、ムッシュ以外の何者でもなかっただろう。

近作では2009年のブルーズ・ザ・ブッチャー&ムッシュかまやつ名義の『ロッキン・ウィズ・ムッシュが最高だった。永井ホトケ隆やコテツが参加したバンドとの共演作。

編集盤では2006年にウルトラ・ヴァイヴが作ったゴールデン☆ベストがとにかく良音・センス良すぎる好編集盤だと思う。製作スタッフのクレジット見ていたら、小学校の後輩だった嵐山光三郎の息子さんの名前がありました。

オリジナル・アルバムではかまやつひろし・アルバムNo.2 どうにかなるさ』が全曲カバーしたいくらい大好き。「喫茶店で聞いた会話」、とかね。ムッシュ・フォーエヴァー…



 72歳のジェフ・ベック

markrock2017-02-04


好きで長らく聴き続けていたけれど、ライブを見に行ったのは初めてだった。ジェフ・ベック「ジャパン・ツアー2017」、1月31日の東京国際フォーラム公演。いつまでもあると思うな〜式の話で。72歳ですからね。会場は親父ロックファンの群、群、群…。しかも喫煙所なんか、相当いかつい雰囲気でした。まぁ、一緒に行ったオヤジ・ロックバンドのメンバー連も、駅で立ってるだけでたいてい職務質問されるんですが。でもライブ会場の雰囲気は、なんとなく奥ゆかしいというか穏やかそのもので、ジェフの性格を表している様な感じも。

昨年出た新作『Loud Hailer』の流れのツアーということで、新曲中心の割合貴重な選曲だった。二人の20代女性ミュージシャンとの共演。クイーンのロジャー・テイラーのバースデイ・パーティで出会ったというギタリストのカーメン・ヴァンデンバーグと、シンガーのロージー・オディ(カーメンとバンド、ボーンズを組んでいる)を交えて(リズム隊はロンダ・スミス[B]とジョナサン・ジョセフ[Ds])。

少々単調な気もしたけれど、ロージーアジテーション的な拡声器パフォーマンスは、ロックという音楽が何者だったのかを思い出させてくれる。開演前に客席に拡声器片手に登場したとき、お客さん無反応だったのがちょっと悲しかったけれど。新作聴いとらんのかい、っていう。冒頭のThe Revolution Will Be Televised はギル・スコット・ヘロンの「革命はテレビ中継されない」っていうThe Revolution Will Not Be Televisedを引用したもの。「革命もテレビ中継される、でも誰も関心をもたない」っていう痛烈な現代情報社会への皮肉ですね。Angelのスケールを意識的に取り入れたジミヘン・トリビュートScared For The Childrenも素晴らしかったし、Live In The Darkも一聴して耳に残る曲。『Loud Hailer』はまさにLive In The Dark な2016年という不穏な時代を掴み取る現代性があったと思うし、キャリアを総括するような、ジェフの多様なサウンドの型が詰まっている良作だった。

ジェフのギターは快調。ツアーで日々演奏しているわけだから、東京の初日は腕鳴らし程度で流しているような軽みもあったけれど。とはいえ流石です。ベタベタに耳タコレベルなCause We've Ended As Loversを聴いた瞬間に身体に流れる電流ですよね、グッと来ちゃうんですから。ロニー・マックのLonnie On The Moveもあったし、Beck's BoleroやらSuperstitionやら、代表曲を絶妙に網羅していて。個人的にはボニー・ドブソン〜ティム・ローズという流れでジミヘンにイメージが繋がるMorning Dew(『Truth』収録)やサム・クックA Change Is Gonna Comeを朗々と歌い上げたボーカリストのジミー・ホール(Flashで名を挙げた)もいかにもジェフ好みだなあと思った。イギリス的なブラック・ミュージックの感性というか。ジミー自身はアメリカ出身てかアラバマのサザン・ロック・バンド、ウェット・ウィリーのメンバーだけれども。ジェフやクラプトンもそうだけれど、イギリス的なアメリカ音楽への距離感や感性って面白いですよね。妄想が入っている部分があって。日本も似たようなところがある。

開演前のSEからして、ロックンロール〜R&Bのオンパレードで、レス・ポール・トリビュートなんかもありましたが、ロックに原点回帰しているようにも思えたり。このご時勢、俺がやらなきゃ誰がやる的な。とはいえ、ジェフらしいな、と思ったのは『Wired』『Blow By Blow』期の楽曲でした。最も革新的な音を作っていた時期だった、ということなのだ。でも、今回のプレイヤー的に、再現は厳しいのかな。ヤン・ハマーやマックス・ミドルトン的なキーボーディストも必要だし。

『Wired』ジャケ違いだけれど、音も違っていたことに最近気がついた。プレス時期の差かもしれないけれど。

ちなみにこれは家宝。10年位前だったか、タジ・マハールやジミー・ウェッブなんかと一緒にチャリティに参加していたときのもの。しかし誰もそのチャリティの存在に気付かず、20ドルで終わってしまったという。嬉しいような悲しいような、複雑な気持ちになった。

会場にはベック本の広告も。

1.The Revolution Will Be Televised
2.Freeway Jam
3.Lonnie On The Move
4.Live In The Dark
5.The Ballad Of The Jersey Wives
6.You Know You Know
7.Morning Dew
8.A Change Is Gonna Come
9.Big Block
10.Cause We've Ended As Lovers
11.O.I.L.
12.Thugs Club
13.Scared For The Children
14.Beck's Bolero
15.Blue Wind
16.Little Brown Bird
17.Superstition
18.Right Now
encore#1
19.Goodbye Pork Pie Hat
20.Brush With The Blues
21.A Day In The Life
encore#2
22.Going Down

ピーター・アンダース幻のプロデュース作

markrock2017-01-27


アンダース&ポンシアのピーター・アンダースが昨年亡くなった。余り話題にならず、寂しい死だったような気もする。晩年にリリースしたCD『So Far』(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20110306)のプロモーションのために作られたホームページ(http://peteranders.net/)はなかなか愛があった。CDにはエルヴィスに提供した曲の印税の小切手なんかがアートワークに含まれていて。年をとるまでそれを誇りにしていたんだなあ、と思ったり。ちなみに左のCDは64曲入りの謎の2枚組コンピ。

さて、ピーター・アンダースが1970年にプロデュースを手がけたレコードがあることは余り知られていない。たぶん日本にはリアルタイムで入ってこなかったはず。同じイタロ系のシンガー、ディック・ドマーニのアルバム『Dick Domane』でMap Cityからのリリース。Map Cityはイタロ・マフィアが絡んでいて、アルバム再発は難しいなんていう話も。Map Cityでディック・ドマーニはブルージェイズというグループを組んでいて、1枚のアルバムやシングル(アンダースのプロデュース)を出している。Map Cityはボビー・ブルームのシングルも出していたり。あとはマルディ・グラズやイエスタデイズ・チルドレンのアルバムとか。

で、このディック・ドマーニ盤はサイケデリック色があるので、アメリカではサイケやガレージの括りで評価されているみたいだけれど、普通にアンダース的なイタロ・ポップとして聴ける作品。ブライアン・ギャリのシングルとか、ドン・シコーニとか、その辺が好きであれば好物な音。アメリカのイタロ系でちょいロックに行った音は、歌のいなたいバタ臭さとサウンドのバランスがなかなかクセになる。シュガーローフのジェリー・コルベッタもそう。収録曲のうちHang Onはブルージェイズのシングルそのものだから、アルバム用に曲が足りなくてねじ込んだのだろう。

ディック・ドマーニは1973年にRCAからホワイト・ウォーターというバンドで唯一作『Out Of The Darknessをリリースしている。こちらはヴィニ・ポンシアのプロデュース、ということで、アンダース&ポンシアにプロデュースしてもらった幸運な人、ということになる。こちらは結構ファンキーでソウルフルな仕上がり。その後も音楽活動を続けて、自主盤をリリースしたりもしていたみたいだけれど、公式HPも閉じちゃってるみたいだし、現在ご存命なのかもわからない。

そんなこんなでアンダース&ポンシア関係を色々と出して聴いている。ピーターの1972年、ファミリー・プロダクションから出たソロ『Peter Anders』(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20070126)。売れる前のビリー・ジョエルがピアノで参加している。ビリーのファースト『Cold Spring Harbor』はファミリー・プロダクションからでているけれど、回転数が間違っていたり、散々なデビューでしたが、オリ盤の音は良かった(→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20130508)。プロデューサーのアーティー・リップは発見したビリーに粘着して、その後相当搾取するわけです。ソロデビューの恩人とはいえ、ビリーは嫌だったろうなぁ。

『Peter Anders』は1976年にタイガーリリーから収録曲を微妙に変えて再発されている。(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20110108)。

そもそも始まりは『アンダース&ポンシア ポップ・ワークス』。プロデュースした長門芳郎さんのパイドについては→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20150818を。

アンダース&ポンシアのデビューはドゥ・ワップのヴァイデルズ。Mr.Lonelyはとても良い曲。


イノセンスとトレードウィンズ、甘酸っぱい過ぎるポップ・サウンド

こちらのちょいスワンピーなアンダース&ポンシア盤もなかなか。リチャード・ペリーのプロデュースで、バックはレッキング・クルー。

ヴィニ・ポンシアはキッスやリンゴ・スターなどを手がけて、大プロデューサーになっていくわけです。アンダース&ポンシア気分のポップ・マインドを感じられるのはザ・ムーヴィーズ1976年の『The Movies』かな。ヴィニのプロデュース。



関連でトニー・ブルーノのレビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20161127を!

マーク・コーン(Marc Cohn)のレコード

markrock2017-01-22




ここの所、物書きに没頭していて、音楽には辿り着きつつも、なかなかブログに辿り着けなかった。積まれた本と格闘という感じ。そして、何より、レコード&書庫部屋に暖房がないというのが一番大きいかな。とにかく冷えます。隣の部屋の暖気をもらってなんとか。冷たい部屋でふと正気にかえる時もある。

さて、今日はマーク・コーンを聴いている。大統領就任式の日の彼のツイッターを見ていたら素直に、悲しい!と書いてあった。去年『Careful What You Dream: Lost Songs and Rarities』http://marccohn.net/)というレア・トラック集を出したんだけれど、アメリカ国内のみCD販売があり、国外販売もいずれ、とHPにある。でも、待てど暮らせど国外からの購入環境が整わない。ダウンロードなら買えるんだけれど。Walking In Memphisでグラミーを獲って一世を風靡した彼でも、国外ファン層は限られているし、現状はシビアなのかもしれない。

ウェスト・コースト・ロック界のリベラリスト達が90年代に一押ししていたのがシンガー・ソングライターのマーク・コーンだ。1991年のファーストにはジェイムス・テイラーが参加した。1992年のバルセロナ・オリンピックの公式CDに収録されていたOld Soldierは、デヴィッド・クロスビー1993年のソロ『Thousand Roads』でナッシュ、マークのハーモニー付きで歌われたし(先日紹介したデヴィッドの新作にもマークとの共作があった)、ジャクソン・ブラウンのアルバム『Naked Ride Home』にコーラスで参加していたこともあった。そう、アート・ガーファンクル1997年のチルドレン・ソング集『Songs From A Parent To A Child』にはマークのThe Things We've Handed Downが取り上げられている。

ぼくはすごく小さい頃アメリカに住んでいて、現地の学校でマーク、と呼ばれていた。自分のことを「まーくん」と言っていたから、マークになったんだと思う(笑)。そんなわけでマークという名前の人には妙に親近感がある。そして、1959年生まれ、32歳という遅咲きのデビュー。ぼくも初めてCDを出せたのが32歳だったから、勝手に妙な親近感を持っているというわけ。そう、大学生のとき、今はなき高田馬場のDISC FUNにて(最近当時のレコード袋を発掘した)、店外の野ざらしのCDの中に、マークのサイン入CDがあった、なんてことも。業界関係者がやたらサンプル盤を流出させていた店だったから、マークはプロモーションで来日していたのかも。


最近ネットで調べていたら、1991年のファーストまではLPがヨーロッパではリリースされていたようだ。1992〜4年頃が、LP・CD・MD・カセットとメディア百花繚乱だったギリギリの時代かな。それ以降のLPはDJユースになる。そんなこんなで最後の時代のLPを入手してみたところ…おお!!感無量と言うか、とにかくいつになく新鮮に響いた。ジャケットのポートレイトはCDジャケより大写しになっていた。


結構アナログに響く音で、ピアノの響きがとりわけすごく良い。今聴くと、ブルース・ホーンズビイのピアノ・ロックを参照しているようにも聴こえる。

一方、1993年のセカンド『Rainy Season』はCDのみのリリース。シングルカットされた曲のみ、レコードでリリースされていて。このアルバムは丸ごとアナログで聴いてみたかったから、ちょっと残念。手元にあるシングル盤はアルバム中一番好きなWalk Through This Worldという曲。2012年にジョー・コッカーもカバーした。シングル盤の音自体はというと、この辺の時代からアナログ向けの音と言うより、そもそもデジタルなCDリリースを前提とした音って感じがします。バンドサウンド自体は王道アメリカン・ピアノ・ロックなんですが。これはCDと変わりはないですね。いやー、それにしても、この曲を下敷きにして作った曲もあるんですが、時効ということにして下さい…。

プロデュースはベン・ウィッシュ。翌年にマーティン・ジョセフというシンガー・ソングライター『Being There』というアルバムをプロデュースしていて、これがまた大名盤。アレッシー兄弟も何気なくコーラス参加している。このアルバムやマークのファーストでギターなどを弾いて大活躍しているのがジョン・リヴェンサール。奥さんはジョニー・キャッシュの娘ロザンヌ・キャッシュ。この人の音作りは90年代を象徴する、洗練されたシンガー・ソングライターの音だったと思う。ショーン・コルヴィンとか、ロドニー・クロウェルとか。マークが参加したものもあったし、とにかくよく聴いた。


マークはファーストを出す前に、出身のオハイオ州クリーヴランド賛歌のシングルを1986年に地元でリリースし、1987年にはアンドリュー・ロイド・ウェーバーの『Starlight Express』(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20050509)のサントラでボーカルを取っている曲がある(リッチー・ヘブンスが歌う曲もある)。

ニルソンのトリビュート・アルバムでTunn On Your Radioを歌ったりというのもありました。これはカセットをロンドンで買った記憶がある。



三作目の1998年『Burning the Daze』でアトランティックと契約が切れて(2006年にベスト盤が出た)、その後は2005年にライブ盤『Marc Cohn Live 04/05』が、2008年にはデッカと契約してアルバム『Join the Parade』(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20071111)をリリース。これがまた素晴らしくて。ザ・バンドを聴いたときのイノセントな感動が伝わってくるListening To Levonが最高だった。カーラジオから流れてきたリヴォン・ヘルムの歌声に心を奪われ、ガールフレンドの話は耳に入らなくなっちゃった、なんて曲。

そして2010年には影響された70年代のシンガーソングライターの名曲カバー集『Listening Booth: 1970』(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20100913)をリリース。その曲目を見て、この人を嫌いになるわけがない、と思いました。あと、2013年のジミー・ウェッブの『Still Within The Sound Of My Voice』(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20130921)ではアート・ガーファンクルのAnother Lullabyで共演していたりも。

それにしても、20年近く日本盤が出ていないせいか、日本で余り語られていないのは寂しい。2005年にはスザンヌ・ヴェガとのツアー中、コロラド州デンバーでカージャックに遭い、弾丸が目の近くに命中し、九死に一生を得るという惨事もあった。トラウマで心を病んだりということもあったようで、一時期リリースが少なくなったのはそれが理由だったのかもしれないな、と思っていた。いつか生で見れたら…という夢だけは叶わずとも、持ち続けていたい。



謎のライブ盤(海賊盤?)も一時期よく見かけた。インタビューCDはプロモーション用のもの。Walk Through This Worldの2枚組マキシシングルにはOld Soldierや未発表曲も含まれている。

 JD Souther『Natural History』のアナログ

markrock2017-01-11



お正月は、ぼくのアルバムジャケットをデザインしてもらっているミュージシャンの友人とレコードをひたすら聴く会をやった。うーん、とにかく結論として、LPの音はCDと違う、ということだった。わざわざアナログのカセットMTRで録音した音をプロツールスに落とし込むっていう、拘りのレコーディングでCDを作っている彼自身、LP愛好家であるわけなんだけど、改めて、という。特にアコースティック・ギターの中低域の音色と、ベースは比べ物にならないな、と。カート・ベッチャーやポール・マッカートニー関連を聴き比べたり、ベアフット・ジェリーの音作りや匂いまくるアシッド感に改めて驚嘆したり。麻薬が入っている音楽と入っていない音楽ってのは一発でわかりますよね。ASKAは今思うと、SAY YES辺りからフワ〜ッとした浮遊感のあるアシッド・サウンドだった。ぼくは彼の音楽、大好きなんですが。そういえば、あの事件の1週間位前に、唐突にASKAの1988年のファースト・ソロ『SCENE』のアナログってのが聴きたくなって、中古盤屋で探して取り寄せたってことがありました。何の虫の知らせだったんだろう。

ASKAチャゲ&飛鳥時代に書いた曲でオンリー・ロンリーって曲があったけれど、その語感はYou’re Only Lonelyかな。ロイ・オービソンのOnly The Lonelyではないだろう。さて、唐突ですが2011年に出たJ.D.サウザーのセルフカバー盤『Natural Historyのアナログ。You’re Only Lonelyも入っています。コレ、彼の公式サイトで一時期売っていた。6年前は今ほど新譜アナログ熱を帯びていなかったためか、最後は彼のサイトでCDと抱き合わせで叩き売りされていたのを思い出す。なぜかその時手を出さなかったのだけれど、今になってCDと聴き比べしてみたいと思うに至って。しかし時すでに遅し!サイトでは販売終了、2015年の新作『Tenderness』(レビュー→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20150625)のアナログが日本のレコ屋にもたくさん入荷した割に、売れ残っていたのと対照的で。やっぱり有名曲のセルフカバー盤の方が売れたんだろうな。てなわけで、見つけるのに意外と難航して、最後はレコーディングが行われたナッシュビルの業者が持っている在庫を取り寄せた。内容に関しては下に2011年に書いたレビュー(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20110611)を参考にして頂きたい。

で、ジャケットは当時66歳(現在は71歳)のJDの大写し。でも、CDサイズの画像の引き伸ばしによって、わずかに画質が粗くなっていたのはいただけないかな(笑)。CDで一つだけ不満だったのは、コンデンサー・マイク臭が強かったこと。怖い位にリアルで、音はシャリシャリしていて低音が弱い感じがしたから。LPだとどうか…と期待したんだけれど、幾分か中低音域が強調され、耳に優しい音になっていた。これはLPならでは、な音の特性が発揮されており嬉しい限り。ただ、近年の新譜アナログに共通しているのは、デジタルでマスタリングされたものをアナログにしているだけだから、基本的にはCDとそう変わらないということ。もちろんLPの再生環境では強調される音域が異なるからか、今回のJD盤みたいにさらに心地よくなる場合もある。でもこの辺りが、そもそもアナログ用に作られていた過去のアナログと新譜アナログの大きな違いかな。新譜アナログに劇的な音の違いはない、ということ。90年代にリアルタイムでリリースされていたレコードまでは、劇的なアナログの音のよさがある、というのは今まで色々聴いてみた実感。まあいまだにアナログだけ別のミックスやマスタリングをしている拘りミュージシャンもいるにはいるけれど。普通はコストもかかるしそこまで出来ないという。

ちなみにJDのソロ『John David Souther』『Black Rose』『Home By Dawn』の3枚がOmnivore recordingsより、デモ音源などのボーナス・トラックやアウトテイクなどを含めて昨2016年の1〜2月に再発された(http://omnivorerecordings.com/artist/jd-souther/)。イーグルスの楽曲を支えて来た優秀なソングライターとしてのJD、再開したライブ活動も充実し、改めて注目が集まっているタイミングでの拡大版リリースだった。それにしてもファースト『John David Souther』の再発リリースの直後、グレン・フライが亡くなったことは残念で悲しい出来事だった。そもそもグレンの死でJDを思い出し、再発リリースを知ったのだった。

 金沢レコード・ジャングルにて

markrock2016-12-30



年末は親戚一同のいる金沢に帰省。北陸新幹線で本当に近くなったのだけれど、ビックリするほど街が変わっていて驚いた。タクシーの運転手さんの人懐っこさは変わっていなかったけれど。昔から思うけれど、余りお金儲けをするつもりがない(笑)。乗ってしばらく世間話をした後にメーターを押して、目的地の大分前にメーターを止めちゃうという。この辺の粋な所は東京には37年住んでいる限り今も昔もないと思います。でも色々話を聞くと、新幹線特需で駅前中心に開発が進んだけれど、ガイドブックやSNSで拡散される周遊コース(バス)以外の交通手段を利用する人は、ほぼいないとのこと。タクシーの利用者はちっとも増えていないらしい。確かに人の波がかなり限定された場所に集まっていて。しかもそこだけ飲食店の物価が高いという(笑)。情報が氾濫したこ世の中にあって、実は巧みに限られた情報だけを掴まされるようになっている。つまり、一部の人だけにお金が落ちる構造になっているということだ。この辺は日本社会の縮図かな。街の細部を見れば、数年前にはあった、時間が止まったような古本屋は三軒ともなくなっていたし、新刊の老舗巨大書店(うつのみや)は潰れていた*。売れないテナントはどんどん変わっていって、町の風景に店舗が一向になじまない。町がよそよそしくなるんですよね。それに、自動車を止められない中心地の繁華街がさびれて、イオンみたいな郊外店舗に人が集まっていたりも。イオンはどこ行っても入ってるテナントは一緒だし。まさに均質化。これまた日本全国同じような状況でしょう。確かに便利ではあるんだけれど。



* ただ、その跡地に「ロックの殿堂ミュージアムジャパン」が出来ることになっているみたいだけれど、グランドオープン時期は不明みたい。金沢は金沢工業大学内にPMC(ポピュラー・ミュージック・コレクション)という20万枚にも及ぶレコード・コレクションがあったりもします(http://www.kanazawa-it.ac.jp/kitlc/guide/pmc.html)。そもそもポピュラー・ミュージック研究の第一人者、三井徹さんが金沢大学の先生でした。



こんな新自由主義的な人間疎外状況の中で、人間らしさを辛うじて繋ぎ止められたのは武蔵が辻のレコード・ジャングル(笑)。金沢の中古レコードの老舗名店、町は変われど健在でした。イオンにはこんな場所ないよ、絶対に(笑)。やはり今回も全てのレコードをチェックし切れないまま、閉店時間になってしまった。まさにジャングル。ちなみに私のファーストとセカンドも置いてくれています。思えば、「レコードを聴いている」というだけで、その人を信頼できてしまう世の中だと思う(あくまで個人的には、ですよ…)。レコード聴くのひとつ取っても、その手間は実に面倒くさいですからね。いくら音が良いから、だとか何だとか言っても、そこまの手間をかけて聴きますか、という話で。もっと言うと「CD買って聴いている」と言うだけで、その人を信頼できてしまう世の中だとも思います。CDケースからCDを取り出して、プレイヤーに入れるのって、結構アナログな手間ですからね。奥ゆかしい位の手間。経済合理性に委ねられない部分があるか、ないか。この辺の感覚は、わからない人が今後増えていくと思います。

さて、今回のレコードジャングルでは…まずはボブ・ディラン『Oh Mercy』のアナログを。プロデュースをダニエル・ラノアに委ねた、現在のディランにも繋がる美学のある作品。リリースは1989年ですか。驚くほど時代の流れに耐え得る音作りになっている。あのしゃがれ声も、トム・ペティとの共演の頃からすると急激に声量が落ちた頃で。でも今聴くと、現在の声に近づいているのがわかる。Ring Them Bellsとか、Shooting Star、それにMost Of The Timeとか、大好きな曲が入っている。アナログの音もなかなか迫力があった。そういえば、ロビー・ロバートソンの復帰作もこの辺の時代だった。最近、日本盤LPと聴き比べるためにアメリカのオリジナルLPを買ってみたけれど、こちらは余り音に差が無かった。

さて、あとはセッション・ギタリストとして著名な今剛のソロ『スタジオ・キャット』井上陽水のバックなどでもお馴染みです。マイク・ダン、ロバート・ブリル、マーク・ジョーダン、マイケル・ボディカー、林立夫との共演。鋭いギターの音も素晴らしい。2曲H2O詞曲の歌モノがあって、Think About The Good Timesのグルーヴ感がなかなかカッコ良かった。

あとはオールマンThe Allman Brothers Bandの日本盤。洋楽の日本盤LPは米盤や英盤に音が劣るものが多いのだけれど(そのせいで日本で真価を知られないまま誤解されたミュージシャンもいる気がする)、1970年代前半のワーナー、アトランティックの日本盤LPはしっかりした音作りだと思う。日本人ミュージシャンに影響を与えた盤が多いのは、日本盤が出てたというのもあるけれど、その音の良さにもあったのでは?詳しく検証していないので勝手なことを言ってますが。そんなわけで、見つけるたびに買い直しています。しかしデュエイン・オールマンのギター…こんなのをリアルタイムで大音量で聴いたら、ぶっ飛んじゃいますよね。人生変わっちゃうなって、改めて。

<70年代的なるものと90年代的なるもの>? L⇔R(エルアール)

markrock2016-12-14



明月堂書店、極北ブログで新連載が始まりました。(不定期連載)


<70年代的なるものと90年代的なるもの>? L⇔R(エルアール) いしうらまさゆき【第3回 – 月刊極北
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