好きで長らく聴き続けていたけれど、ライブを見に行ったのは初めてだった。ジェフ・ベック「ジャパン・ツアー2017」、1月31日の東京国際フォーラム公演。いつまでもあると思うな〜式の話で。72歳ですからね。会場は親父ロックファンの群、群、群…。しかも喫煙所なんか、相当いかつい雰囲気でした。まぁ、一緒に行ったオヤジ・ロックバンドのメンバー連も、駅で立ってるだけでたいてい職務質問されるんですが。でもライブ会場の雰囲気は、なんとなく奥ゆかしいというか穏やかそのもので、ジェフの性格を表している様な感じも。
昨年出た新作『Loud Hailer』の流れのツアーということで、新曲中心の割合貴重な選曲だった。二人の20代女性ミュージシャンとの共演。クイーンのロジャー・テイラーのバースデイ・パーティで出会ったというギタリストのカーメン・ヴァンデンバーグと、シンガーのロージー・オディ(カーメンとバンド、ボーンズを組んでいる)を交えて(リズム隊はロンダ・スミス[B]とジョナサン・ジョセフ[Ds])。
少々単調な気もしたけれど、ロージーのアジテーション的な拡声器パフォーマンスは、ロックという音楽が何者だったのかを思い出させてくれる。開演前に客席に拡声器片手に登場したとき、お客さん無反応だったのがちょっと悲しかったけれど。新作聴いとらんのかい、っていう。冒頭のThe Revolution Will Be Televised はギル・スコット・ヘロンの「革命はテレビ中継されない」っていうThe Revolution Will Not Be Televisedを引用したもの。「革命もテレビ中継される、でも誰も関心をもたない」っていう痛烈な現代情報社会への皮肉ですね。Angelのスケールを意識的に取り入れたジミヘン・トリビュートScared For The Childrenも素晴らしかったし、Live In The Darkも一聴して耳に残る曲。『Loud Hailer』はまさにLive In The Dark な2016年という不穏な時代を掴み取る現代性があったと思うし、キャリアを総括するような、ジェフの多様なサウンドの型が詰まっている良作だった。
ジェフのギターは快調。ツアーで日々演奏しているわけだから、東京の初日は腕鳴らし程度で流しているような軽みもあったけれど。とはいえ流石です。ベタベタに耳タコレベルなCause We've Ended As Loversを聴いた瞬間に身体に流れる電流ですよね、グッと来ちゃうんですから。ロニー・マックのLonnie On The Moveもあったし、Beck's BoleroやらSuperstitionやら、代表曲を絶妙に網羅していて。個人的にはボニー・ドブソン〜ティム・ローズという流れでジミヘンにイメージが繋がるMorning Dew(『Truth』収録)やサム・クックA Change Is Gonna Comeを朗々と歌い上げたボーカリストのジミー・ホール(『Flash』で名を挙げた)もいかにもジェフ好みだなあと思った。イギリス的なブラック・ミュージックの感性というか。ジミー自身はアメリカ出身てかアラバマのサザン・ロック・バンド、ウェット・ウィリーのメンバーだけれども。ジェフやクラプトンもそうだけれど、イギリス的なアメリカ音楽への距離感や感性って面白いですよね。妄想が入っている部分があって。日本も似たようなところがある。
開演前のSEからして、ロックンロール〜R&Bのオンパレードで、レス・ポール・トリビュートなんかもありましたが、ロックに原点回帰しているようにも思えたり。このご時勢、俺がやらなきゃ誰がやる的な。とはいえ、ジェフらしいな、と思ったのは『Wired』『Blow By Blow』期の楽曲でした。最も革新的な音を作っていた時期だった、ということなのだ。でも、今回のプレイヤー的に、再現は厳しいのかな。ヤン・ハマーやマックス・ミドルトン的なキーボーディストも必要だし。
『Wired』ジャケ違いだけれど、音も違っていたことに最近気がついた。プレス時期の差かもしれないけれど。
ちなみにこれは家宝。10年位前だったか、タジ・マハールやジミー・ウェッブなんかと一緒にチャリティに参加していたときのもの。しかし誰もそのチャリティの存在に気付かず、20ドルで終わってしまったという。嬉しいような悲しいような、複雑な気持ちになった。
会場にはベック本の広告も。
1.The Revolution Will Be Televised
2.Freeway Jam
3.Lonnie On The Move
4.Live In The Dark
5.The Ballad Of The Jersey Wives
6.You Know You Know
7.Morning Dew
8.A Change Is Gonna Come
9.Big Block
10.Cause We've Ended As Lovers
11.O.I.L.
12.Thugs Club
13.Scared For The Children
14.Beck's Bolero
15.Blue Wind
16.Little Brown Bird
17.Superstition
18.Right Now
encore#1
19.Goodbye Pork Pie Hat
20.Brush With The Blues
21.A Day In The Life
encore#2
22.Going Down