いしうらまさゆき の 愛すべき音楽よ。

音楽雑文家・SSWのブログ

いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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markfolky@yahoo.co.jp

2024年5月31日発売、V.A.『シティポップ・トライアングル・フロム・ レディース ー翼の向こう側にー』の選曲・監修・解説を担当しました。
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[NEW!!]2024年3月29日発売、モビー・グレープ『ワウ』、ジェントル・ソウル『ザ・ジェントル・ソウル』の解説を寄稿しました。

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2024年2月23日発売、セイリブ・ピープル『タニエット』の解説を寄稿しました。
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2023年12月22日発売、ロニー・マック『ワム・オブ・ザット・メンフィス・マン!』、ゴリウォッグス『プレ・CCR ハヴ・ユー・エヴァー...?』、グリーンウッド・カウンティ・シンガーズ『ハヴ・ユー・ハード+ティア・ダウン・ザ・ウォールズ』の解説を寄稿しました。
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2023年12月22日(金)に大岡山のライブハウス、GOODSTOCK TOKYO グッドストック トーキョーで行われる、夜のアナログレコード鑑賞会 野口淳コレクションに、元CBSソニーでポール・サイモンの『ひとりごと』を担当されたディレクター磯田秀人さんとともにゲスト出演します。
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「アナログ鑑賞会〜サイモンとガーファンクル特集〜」 日時:12月22日(金) 19時開演、21時終了予定 入場料:予約2,000円 当日2000円(ドリンク代別) ゲスト:石浦昌之 磯田秀人 場所:大岡山 グッドストック東京 (東急目黒線大岡山駅から徒歩6分) 内容:①トム&ジェリー時代のレコード    ②S&G前のポールとアートのソロ·レコード    ③サイモンとガーファンクル時代のレコード(USプロモ盤を中心に)    ④S&G解散後、70年代のソロ·レコード ※それ以外にもレアな音源を用意しております。
2023年11月25日(土)に『ディスカヴァー・はっぴいえんど』の発売を記念して、芽瑠璃堂music connection at KAWAGOE vol.5 『日本語ロックが生まれた場所、シティポップ前夜の記憶』を語る。 と題したイベントをやります。
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2023年9月19日、9月26日にTHE ALFEE坂崎幸之助さんの『「坂崎さんの番組」という番組』「坂崎音楽堂」で、『ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクル』を2週にわたって特集して頂きました。
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2週目 ココをクリック
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坂崎さんから
「聞きなれたS&Gがカバーしていた曲の本家、オリジナルの音源特集でしたが、なかなか興味深い回でしたね。やはりビートルズ同様に彼らもカバー曲が多かったと思うと、人の曲を演奏したり歌ったりすることも大事なのだと再確認です。」
2023年10月27日発売、『ディスカヴァー・はっぴいえんど: 日本語ロックが生まれた場所、シティポップ前夜の記憶』の監修・解説、ノエル・ハリスン『ノエル・ハリスン + コラージュ』の解説を寄稿しました。
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2023年9月29日発売、『風に吹かれて:ルーツ・オブ・ジャパニーズ・フォーク』の監修・解説、ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニー『ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニー』の解説を寄稿しました。
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2023年7月28日発売、リッチー・ヘヴンス『ミックスド・バッグ』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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2023年8月26日(土)に『ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクル』の発売を記念して、西荻窪の素敵なお店「MJG」でイベントをやります。
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2023年6月30日発売、ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクルの監修・解説、ジャッキー・デシャノン『ブレイキン・イット・アップ・ザ・ビートルズ・ツアー!』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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2023年3月31日発売、スコッティ・ムーア『ザ・ギター・ザット・チェンジド・ザ・ワールド』、オールデイズ音庫『あの音にこの職人1:スコッティ・ムーア編』、ザ・キャッツ『キャッツ・アズ・キャッツ・キャン』の3枚の解説を寄稿しました。
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2023年2月24日発売、ビッグ・ボッパー『シャンティリー・レース』、フィル・フィリップス『シー・オブ・ラブ:ベスト・オブ・アーリー・イヤーズ』、チャド・アンド・ジェレミー『遠くの海岸 + キャベツと王様』の3枚の解説を寄稿しました。
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2022年12月23日発売、バディ・ホリー・アンド・ザ・クリケッツ 『ザ・バディ・ホリー・ストーリー』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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Wynonna / Revelations

*[カントリー] Wynonna / Revelations (Curb / 1996)

 

ここ数年は新譜を除き、1:20ぐらいでレコードになっていたけれど。何だかここのところ、レコのみならず、CDの愛おしさに改めて目覚めている。90~00年代にどれだけのCDを買ったことだろう。それが数年前の引っ越しの時にCDとブックレットだけ残して、プラスチックの家が建つぐらいの(笑)CDプラケースを捨てたことで一旦踏ん切りがついたのだった。それがまたCDを愛おしいと思うのは、90年代から00年代初頭あたりまでの新譜が、サウンドもプロダクションもゴージャスだったなぁと思い直しているから。普通に売れた盤を今聴いても、余り古くなっていないし、むしろレコーディングの質が高いから、音が良い。ある意味、戦後ポピュラー音楽の到達点だったのかもしれないな、と。あとは60~70年代のミュージシャンが、死ぬ前にもういっちょ売れるぞってな気概で元気に頑張っていたのも大きい。今思えば、自分と同じ40代なんだけれど。自分に照らしてみると、今からもういっちょっていう気力はない。ってか、まだ売れてないし(笑)ロストジェネレーションとはよく言ったもので、我々世代はゴールテープを切ることのない、宮台真司言うところの「終わりなき日常」を生きる宿命を負わされてきたのだとつくづく思う。

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そんなボヤキはいいとして、1996年リリース、The Judds(ワイノナ&ナオミ・ジャッド)を経てソロになった女性カントリー歌手ワイノナ・ジャッドの『Revelations』エリック・クラプトンが翌年カバーしてヒットした”Change The World”のオリジナルが収録されている盤として、忘れがたい(クラプトン版の方が当然売れる作りになっている)。

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CCM(コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック)のライターであるゴードン・ケネディ(White Heartのメンバー)、ウェイン・カークパトリック、トミー・シムズのコンビが手掛けた”Change The World”。リリースされた時代、ディキシー・チックス、ガース・ブルックス、フェイス・ヒルなどアメリカの若手によるカントリーのシーンが賑わいつつあった。常にアメリカのシーンに目配せしてきたクラプトンらしいカバーだったと思う。この流れからテイラー・スウィフトが登場することになる。ソングライターでいうと、80年代初頭にソロを出し、1989年に再デビューしていたベス・ニールセン・チャップマンが引っ張りだこだった。当時はアコースティックを基調とした新作カントリー・ロックとして、普通に聴いていたけれど、今思えば、アメリカーナというある種ナショナリスティックな文脈の音楽ジャンルが形成される萌芽だったのかも。グローバリゼーションいけいけドンドン時代の反動の産物。ちなみにディキシー・チックスは近年南部の保守性を想起させるディキシーを取っ払って”チックス”と名乗るほどのリベラルなのだけれど(テイラー・スウィフト同様)、こちらのワイノナ・ジャッドはタイトル『Revelations』からもわかる通り、割とキリスト教保守派寄りの典型的なカントリーということになる。レーナード・スキナードの”Free Bird”のカバーまでありますので。ただし、楽曲は最高。ゲイリー・バー、デイヴ・ロギンス、ゲイリー・ニコルソン&デルバート・マクリントン、トニオKなどの腕利きが楽曲を提供。アソシエイト・プロデューサーのドン・ポッター(シンガー・ソングライターもののファンにはマグラス&ポッターやダン・ヒルのバッキングでも知られる)が手掛ける王道のカントリー・ロック・サウンド。現イーグルスのサポート・メンバーであるスチュワート・スミスや名手ダン・ハフ、ウィリー・ウィークス、マット・ローリングス、ジム・ホーンなども参加している。久々にThe Judds1984年の『Why Not Me』も聴いてみたけれど、こちらもドン・ポッターがバンドの仕切りで、ビル・ラバウンティの"Drops of Water"のカバーやケニー・オデル、デニス・リンドの曲も入っていた。

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Alan Arkin / Folk Songs (and 2 1/2 that aren’t) - Once Over Lightly

*[フォーク] Alan Arkin / Folk Songs (and 2 1/2 that aren’t) - Once Over Lightly ( Elektra-21 / 1955 )

 

昨年11月28日に行われた鈴木慶一さんのミュージシャン生活50周年記念ライブat Billboard Live TOKYO。コレ、配信で観たけれど、素晴らしかった。糸井重里がデザインしたゲーム「MOTHER」のサントラを完全再現してみせるというもの。ムジカ・ピッコリーノで鈴木と共演していた斎藤アリーナ坂本美雨、スカート澤部渡らとともにダニエル・クオンもゲスト参加していて。絶妙な人選に思えたダニエルの”FLYING MAN”はコンサートの中でも白眉だったと思う。

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そのダニエル君から1~2年前に探してほしいと頼まれたのが1955年にリリースされたアラン・アーキンの10インチ『Folk Songs (and 2 1/2 that aren’t) - Once Over Lightly』。レコード番号から、ジャック・ホルツマンが1950年に作った名レーベル、エレクトラの21枚目の作品だったことがわかる。アラン・アーキンはエリック・ダーリング、ボブ・キャリーと共にフォーク・グループ、タリアーズのメンバーだった人。ただ、現在は超大御所アカデミー俳優としてのイメージの方が強いかもしれない。とはいえおよそ65年前のソロ・レコード、しかも10インチ、フォーク関係は結構集めてきたつもりだったけれど、日本ではお目にかかったことがない…ということで、結構探した挙句アメリカから取り寄せた。そんなことで先に聴かせてもらったけれど、ガットギターの弾き語りでアランが美声を響かせる、文字通りモダンなフォーク・レコードだった。その後ダニエル君に渡しがてら聴いたけれど、やっぱり素晴らしく、ダニエル君も唸っていた。

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そんなわけで、やっぱり自分も欲しくなってしまって、また結構探しまして(笑)いま手元にあるというわけ。大好きなカウボーイ・ソング”Colorado Trail”の一番良いヴァージョンも入っている。10インチのライナーにも書いてあったけれど、カール・サンドバーグが採取して1927年に出版したアメリカン・ソングバッグ(The American Songbag)に収録されて世に知られた曲。1960年のキングストン・トリオ版より5年早く、アラン・アーキンが取り上げていたことになる。”Kisses Sweeter Than Wine”も素晴らしいテイクだし、アルバム・タイトルの”フォーク・ソングス(2と2分の1は違う)”にもユーモアを感じる。

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87歳でご存命、まだ歌っている!

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永遠のロンバケと、ブランディンと

*[コラム] 永遠のロンバケと、ブランディンと

 

緊急事態宣言またですかっていう。笑うしかないくらいの状況。偉そうなことを言えるほどの者ではありませんが、どっから連れて来たんだろ、みたいな、身近な社会じゃ見かけないレベルで呂律の回っていない方とかアナウンサーとかに国や自治体のかじ取りをさせてしまっている私たちの責任は重い。それでも彼らの方がマシとか言っている人もいるガラパゴスなこの国が津々浦々変わるまでに、あと20年はかかるだろう。考え方は色々あるんでしょうけれど、真面目にやってる人が馬鹿を見るような社会であってはいけないとつくづく思う。

 

さて新年度前後、職場が変わったりバタバタしていたけれど、レコ欲はいぜん衰えず。そういえば先日、ご近所で家族ぐるみのお付き合いをしているお友達に湘南・茅ヶ崎に連れて行ってもらいまして。烏帽子岩を眺めつつ、もの凄い自然のエネルギーを受け取れる土地だなと思った。そしてあのブランディンにも連れて行って頂けました。サザンオールスターズの名付け親でもあり、レコードいっぱいの宮治淳一さんのお店。室内の景色がほとんど我が家と一緒(笑)ということで、妙に落ち着いたし、コーヒーも大変美味しかった。たまたま前の職場で後ろに座ってた方が奥様の宮治ひろみさんと郷里で同級生でいらっしゃったという偶然もあったので、そんな話も。

 

宮治さんによれば、アトランティックに比べてワーナーの方が権利関係にしっかりしている分、権利者へのコンタクトが複雑で再発できないシングル・オンリー盤が多いんだとか。コレは非常に納得した。『ワーナー・ポップ・ロック・ナゲッツシリーズはそういう意味でも労作だったのではないだろうか。レコードに狂って行きつくとこまで行くと、最後はやっぱりシングルに行きますよね。ワーナー70年代のあの深緑のアメ盤45回転シングルを見つけると、それだけで色めき立ってしまう。で、2ドルで送られてくる客寄せサンプラーだったあのロス・リーダース(以前ブログに書きました→https://merurido.jp/magazine.php?magid=00023&msgid=00023-1428131789)の話にもなった。もしかしたらアラン・ゴードンの『The Extragordonary Band』がお店にあるかな…と思い尋ねてみたら、探してもらったけれど、残念ながら無かった。タイガー・リリーからリリースされた盤で、カットされたシングルは2枚手に入ったけれど、アルバムは難攻不落でいまだ。今度来る時までに…とおっしゃっていたので、また再訪したいと思う。

 

で、お店にディスプレイされていたのが、ちょうど40周年盤がリリースされる大滝詠一『ロング・バケイション』。昨日のNHK-BSプレミアムの特番でもブランディンが一瞬映っていたような。ただ、あの特番は食い足りなかったですね(笑)ロンバケのレコーディング隊を可能な限り集めた演奏は圧巻だったけれど。細野さんと大滝さんの違いは、大滝さんの方が日本の昭和歌謡的文脈の語りに容易に取り込まれちゃう所。洋邦のバランスが少しでも邦のコブシに寄ると途端にあのメロディがダサくなるという…そのバランスをマインド含めて歌い継げているのは鈴木雅之とか山下達郎ぐらいなのかも。ただ、松本隆さんの話にもあったように、山下達郎も売れ、細野もYMOで売れ、今度は自分もっ…てな所で松本さんにコンタクトを取ったわけだから、ある種下世話な日本的文脈に取り込まれる覚悟はあったということになる。

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番組最後に細野さんが寄せた、「新曲を楽しみにしてる」ってなコメント、これが一番グッと来た。ちなみにレココレ4月号ロンバケ特集では、その細野さんのバックを務める高田漣さんのコメントが一番グッと来た。で、その大本命のロンバケ40周年記念ボックスで一番グッと来たのは…未発表音源以上に大滝さんが話す肉声でした。値段もアレでしたが、それに相応しい圧巻の情報量。4CD + Blu-ray + アナログレコード[2枚組] + カセットテープ + 豪華ブックレット + 復刻イラストブック + ナイアガラ福袋って…私ですら冥途の土産に思えました。お友達に頂いたTシャツとともに、今年の夏を乗り切れれば。

佐藤優さん(作家・元外務省主任分析官)がブックレビューで紹介してくださいました

*[コラム] 佐藤優さん(作家・元外務省主任分析官)がブックレビューで紹介してくださいました。

 

今までまったく気づきませんでしたが、週刊ダイヤモンド 2020年12月5日号にて、あの佐藤優さん(作家・元外務省主任分析官)が『哲学するタネ 高校倫理が教える70章【西洋思想編1】』をブックレビューで紹介してくださってました!佐藤優さんの本は長年色々読んでおりますので、嬉しく有難い限りです。

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【西洋思想編1】は4月に明月堂書店より重版されるとのことです。こちらもありがとうございます。




 

 

Jo Jo and The Real People / One By One

*[ロック] Jo Jo and The Real People / One By One (Polydor / 1987)

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トニー(アンソニー)&クリス・グリフィス兄弟を中心とするリヴァプール出身のバンド、ジョジョ・アンド・ザ・リアル・ピープルが1987年にリリースした、2枚目となる45回転の12インチシングル『One By One』(B面は”Hurricane”、”All Dried Up”の2曲)。個人的にこのバンドに注目したのは、まずシェールが1996年に、マーク・コーンの”Walking In Memphis”のカバーに次ぐシングルとしてリリースし、小ヒットを記録したこと。死ぬほど良い曲だと思った。

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考えてみれば、シェールが取り上げる9年前にリリースされた曲だったということになる。ちなみにこの頃のジョジョ・アンド・ザ・リアル・ピープルは打ち込み的なエイティーズのビートの範疇にあり、ソウル感覚さえも持ち合わせていた。

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2枚のシングルをリリースした後、1991年にリアル・ピープル(The Real People)と名を改めて、コロンビアから同名盤『The Real People』にて、いわゆるUKロックの文脈で再デビューすることになる。ここで触れておかなくてはならないのが、ノエル&リアムのギャラガー兄弟が結成したオアシス。ビートルズをルーツとするUKロックバンドの一つとして90年代に一世を風靡したわけだけれど、果たしてノエル・ギャラガーは何を手掛かりに自身のソングライティング・スタイルを築き上げたのか…当時さほど語られていたように思えないが、そのモデルとなったのが、同じ兄弟がメンバーとして在籍したこのバンド、リアル・ピープルなのだった。どうもギャラガー兄弟は、同じ兄弟バンドで先にデビューを掴んでいたトニー(アンソニー)の手ほどきで、デモの作り方やソングライティング、売り込みのイロハを学んだらしい。1993年にリヴァプールでレコーディングされたそのデモでオアシスは契約を勝ち取った。

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オアシスのデビュー・アルバム『Definitely Maybe』に収録された”Supersonic”にトニー(アンソニー)がコーラスで参加していたのは、デビューへと繋いでくれた先輩への一種の敬意だろう。クリスも”Roll With It”のカップリングだった”Rockin' Chair”(アルバムでは『The Masterplan』収録)でノエルと共作している。しかし時代の寵児となったなったオアシスとは対照的に、リアル・ピープルは不遇だったと言わざるを得ない。レコーディング済みだった2作目(なんとローリング・ストーンズで知られるジミー・ミラーのプロデュース)がSonyCBSを買収するタイミングで契約解除と相成り、自主レーベルeggでのシングル・リリースを余儀なくされた。1996年に日本のSonyが、その辺りのシングルをまとめて『Whats On The Outside』としてリリースしてくれたのは、せめてもの救いだった。

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アイスランドの女性4人組のナイロン(Nylon)が2006年にヒットさせた” Closer”。これはリアル・ピープルの未発表曲のカバーだったけれど、その貴重なリアル・ピープル版をYouTubeで聴くことができる。

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オアシスのソングライティングに何をもたらしたのか、それは一聴すればわかる。彼らは2016年に今のところの最新作『Monday Morning Breakdown』をリリースしている。こんなしぶといバンドが大好きだ。

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I guess / I guess You know

*[日本のフォーク・ロック] I guess / I guess You know(BYTZ RECORDS / 2021)

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今年1月に発売されたばかりのI guessのセカンド・アルバム『I guess You know』。60分を超える珠玉の11曲、大充実の力作をリピートしているところ。

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I guess(http://bytzweb.com/iguess.html)はギタリスト・シンガー・作詞作曲家・アレンジャー、そしてBYTZ(http://bytzweb.com/record_top.html)を主宰するレーベルオーナー・グラフィックデザイナーと多彩な才能を誇る橋本はじめと、DRI: MOONの超絶ドラマー清水智子からなるユニット。2016年にはファースト・アルバム『GARANCE』をリリースしている。

 

橋本はじめは東京藝術大学出身のメンバーからなるバンドBILLIKEN(http://bytz-aditl.jugem.jp/?eid=77) を1982年に結成し、EASTWEST決勝でシニア部門優秀賞を受賞。1989年には久保田真琴夕焼け楽団~サンディー&ザ・サンセッツ)プロデュース、ニューヨーク・レコーディングの唯一作『BILLIKEN』MIDI RECORD)を残した(サンディーや1月に惜しくも亡くなった日倉士歳朗がゲスト参加している)。

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以後、友部正人加奈崎芳太郎のサポートを経て、ひづめつかさ、飯田あきらとQ/Cを結成、2001年には閉館間際の渋谷ジァンジァンにて加奈崎芳太郎の相棒を務めた『古井戸2000』がFFAより音盤化されている。私自身、そのライブの熱気を目の当たりにし、生ギター二本とうねる様なボーカルをぶつけ合う生成りのステージ、そして橋本作の新曲”幸せな街”にとことん魅了され、サイケデリックなギターサウンドと歌心が絶妙に調和したQ/Cのライブに足を運ぶようになった(名曲「それは僕だ」をぜひみんなに聴かせたい)。その後、バンド「件(KUDAN)」を経て、清水智子をパートナーに結成されたのがこのI guessということになる。

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『I guess You know』を手に取りまず驚かされたのは、そのパッケージ。橋本自らがデザインした、イラスト・英訳詞を併記した48頁に及ぶA5版ブックレット。

 

「風を切ってぶっ飛んでく フィル・マンザネラのファイアーバード」

(”I guess you know”)

 

「いつまでも終わらない歌は あなたから聴いたあの歌 煙突が川面に揺れる 手を繋ぎ歩いた道」(”いつまでも終わらない歌”)

 

「僕らの立てた計画が 物干し竿で揺れている」(”ブラン”)

 

詞を目でじっくり眺め、音楽を聴く相乗効果により喚起されるイマジネーションがある。極めつけは映画のサウンドトラックのようなインストゥルメンタル”9号室(掌のある部屋)”。不可思議な読後感を残す短編小説を味わい聴くその音楽は実に新鮮に思えた。コスパにかまけてケーハクになり果てたサブスク時代の音楽聴取に新たな可能性を付け加える試みかもしれない。

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松田健とDRI: MOONをゲストに迎えたフォーキーなタバコ賛歌「スパ・スパ」を除き、ギター・バンジョーマンドリンと様々な弦楽器をメインに演奏する橋本と、シンセ・エレピ・オルガン・クラヴィネットとこれまた様々な鍵盤楽器、そしてパーカッションを巧みに操る清水の二人で、コーラスを含めて濃密な多重録音サウンドを構築。ハードなエレクトリック・ギターのリフに導かれる”幻の人”や”ゴーギャンのジャングル”はぜひライブでも聴いてみたい。心にぽっかりと空いたまんまの穴ぼこ、そしてぐにゃぐにゃしたイビツな感情のサムシング…それらを歌に昇華させた橋本のソングライティングは今作でも冴え渡っている。

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懐かしのレコファン

*[コラム] 懐かしのレコファン

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新しい中古レコ屋、というのはなんだかんだ今どき珍しいけれど、昨年11月に武蔵小金井レコファンができると聞いた時は驚いた。日本最大のフロア面積を誇る旗艦店だった渋谷店の閉店直後。渋谷店は広さや賃料を思うと、コロナ禍で海外からのお客さんも含めて減ったことも大きいのだろう。その閉店セール後の売れ残り在庫の一部が丸ごと武蔵小金井ドンキホーテのフロアの一部に入った。どうせ郊外から渋谷に買いに行ってる人がほとんどだったわけだから、それがベストな収まり方のような。私が高校から大学にかけて、レコファンは輸入盤CDの販売で全盛期だったから思い入れも深い。アマゾン以前の輸入盤新譜CDはほぼ高田馬場、池袋、新宿、吉祥寺、あとは下北沢のレコファンで買っていた。その店舗はいま全部潰れてしまった。パタパタ倒せる独特の棚に収められた中古CDが当時メインだったけれど、レコードもそこそこあって、1950円以上の高額盤は盤もキレイ、アメ盤は450円くらいだったけれど今見るとオリジナルも結構あったりして。アメリカン・ロックの売れ線の基本盤は結構そこで揃えた。あと、100円盤に掘り出し物がカナリあった。買ったあと、レコードにじかに貼られた値段のシールを剥がすテクニックも身につけたし(笑)店にいると時間を忘れるぐらい楽しかった。

 

で、先日は2度目のレコファン武蔵小金井店へ。いやほんと在庫墓場のようなスケール感。ちょっと久々に聴きたいなと思っていたCDは全部仕切りまでありまして、揃いました。60~90年代の全ミュージシャンを取り上げたような仕切りがマニアックすぎますね。アマゾンでも在庫切れになってそうな1990年前後の微妙なやつ、シェールのマイケル・ボルトンとかダイアン・ウォーレン、ジョン・リンド、ピーター・アッシャーなんかがプロデュースした1989年の『Heart Of Stone』とか、オアシスのノエル・ギャラガーが多大なる影響を受けた(というか曲作りのヒントを丸々頂戴した)UKロックバンド、リアル・ピープル(オアシスのファーストにコーラス参加している)とか、この辺の時代のCDって、ヘタに売れてる分売っても価値が付かないから、ブックオフとかですら、もはや余り見かけない。その辺をお探しの場合はぜひ(笑)図書館のように揃ってます。

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レコードで感動したのは、100円盤のコーナーにブルーグラス・アライアンス(The Bluegrass Alliance)1975年の『Kentucky Blue』が。コレ、ブルーグラスのローカル盤にしか見えないけれど、クラプトンはじめギタリストも一目置くカントリー・シンガー、ギタリストのヴィンス・ギルが10代で加入し、実質初めて世に出たグループ。

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ヴィンス・ギルはその後リッキー・スキャッグスやジェリー・ダグラスとのブーン・クリークにも参加。そしてピュア・プレイリー・リーグ、ソロでヒットを連発し、グレン・フライ死後のイーグルスにも加入することになった天才だ。他にも伝説的なフォーク・シンガー、ユタ・フィリップスのPhiloから1973年にリリースしたセカンド『Good Though』(コレは唸るほど素晴らしかった!)とか、カナダのシンガー・ソングライター、レイ・マテリック1979年の『Fever In Rioもあった。レイ・マテリックの盤でギターを弾き、エンジニア・ミックスを務めているDan Lanoisは後にボブ・ディラン、ロビー・ロバートソン、U2などを手掛けるダニエル・ラノア。あとはB.J.トーマスの昔よくCDで聴いていた1989年作、『Midnight Minute』。アナログもあったのね、という。スティーブ・ドーフとカーペンターズの作詞家ジョン・ベティスがプロデュースに加わった、シカゴ・バラード的雰囲気の作品。

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あとはカルトなシンガー・ソングライター、ジョン・オトウェイ&ワイルド・ウィリー・バレットの1977年の英国ロックのエッセンスを詰め込んだ同名ファースト(ピート・タウンゼンドがプロデュース参加)、ドン・プレストン&ザ・サウスのA&M1969年の『Hot Air Through A Straw From』は米オリジナル白プロモが。これらが一様に550~750円という良心的な価格。あと、ベンチャーズノーキー・エドワーズのソロ3枚目『King Of Guitars』東芝の日本盤がいい感じだった!”幸せの黄色いリボン”をギターだけで聴くと、ギルバート・オサリバン”Alone Again (Naturally)”のメロディを一部拝借していることがよりよくわかる。そのオサリバンの”Get Down”もあるし、ドゥービー・ブラザーズの”Long Train Runnin’”はイナタいファンキーさが堪らない(結構ビートにノレている)。ディープ・パープルの”Highway Star”を演るヴェンチャーズ、てな風情の驚きのトラックも!

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懐かしかったのは、レコードのシール付きビニール外袋…閉じた上でさらにセロテープで止めてあるんですね。以前はコレをレジの店員さんがペーパーナイフみたいなやつでピーッと剥がして、中の盗難防止タグを取っていたような。レコードが今以上に貴重だった時代の名残のような仕草を久々に思い出した。