いしうらまさゆき の 愛すべき音楽よ。

音楽雑文家・SSWのブログ

いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

f:id:markrock:20190212213710j:image
いしうらまさゆき へのお便り、ライブ・原稿のご依頼等はこちらへ↓
markfolky@yahoo.co.jp

2024年5月31日発売、V.A.『シティポップ・トライアングル・フロム・ レディース ー翼の向こう側にー』の選曲・監修・解説を担当しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20240420111943j:image
[NEW!!]2024年3月29日発売、モビー・グレープ『ワウ』、ジェントル・ソウル『ザ・ジェントル・ソウル』の解説を寄稿しました。

購入はココをクリック
f:id:markrock:20240420112225j:image
購入はココをクリック

f:id:markrock:20240420112255j:image
2024年2月23日発売、セイリブ・ピープル『タニエット』の解説を寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20240420112151j:image
2023年12月22日発売、ロニー・マック『ワム・オブ・ザット・メンフィス・マン!』、ゴリウォッグス『プレ・CCR ハヴ・ユー・エヴァー...?』、グリーンウッド・カウンティ・シンガーズ『ハヴ・ユー・ハード+ティア・ダウン・ザ・ウォールズ』の解説を寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20240420112019j:image
購入はココをクリック
f:id:markrock:20240420112121j:image
購入はココをクリック
f:id:markrock:20240420112046j:image
2023年12月22日(金)に大岡山のライブハウス、GOODSTOCK TOKYO グッドストック トーキョーで行われる、夜のアナログレコード鑑賞会 野口淳コレクションに、元CBSソニーでポール・サイモンの『ひとりごと』を担当されたディレクター磯田秀人さんとともにゲスト出演します。
ココをクリック
「アナログ鑑賞会〜サイモンとガーファンクル特集〜」 日時:12月22日(金) 19時開演、21時終了予定 入場料:予約2,000円 当日2000円(ドリンク代別) ゲスト:石浦昌之 磯田秀人 場所:大岡山 グッドストック東京 (東急目黒線大岡山駅から徒歩6分) 内容:①トム&ジェリー時代のレコード    ②S&G前のポールとアートのソロ·レコード    ③サイモンとガーファンクル時代のレコード(USプロモ盤を中心に)    ④S&G解散後、70年代のソロ·レコード ※それ以外にもレアな音源を用意しております。
2023年11月25日(土)に『ディスカヴァー・はっぴいえんど』の発売を記念して、芽瑠璃堂music connection at KAWAGOE vol.5 『日本語ロックが生まれた場所、シティポップ前夜の記憶』を語る。 と題したイベントをやります。
f:id:markrock:20231119123246j:image
2023年9月19日、9月26日にTHE ALFEE坂崎幸之助さんの『「坂崎さんの番組」という番組』「坂崎音楽堂」で、『ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクル』を2週にわたって特集して頂きました。
1週目 ココをクリック
2週目 ココをクリック
f:id:markrock:20230904182855j:image
坂崎さんから
「聞きなれたS&Gがカバーしていた曲の本家、オリジナルの音源特集でしたが、なかなか興味深い回でしたね。やはりビートルズ同様に彼らもカバー曲が多かったと思うと、人の曲を演奏したり歌ったりすることも大事なのだと再確認です。」
2023年10月27日発売、『ディスカヴァー・はっぴいえんど: 日本語ロックが生まれた場所、シティポップ前夜の記憶』の監修・解説、ノエル・ハリスン『ノエル・ハリスン + コラージュ』の解説を寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20230926181532j:image
購入はココをクリック
f:id:markrock:20231022131852j:image
2023年9月29日発売、『風に吹かれて:ルーツ・オブ・ジャパニーズ・フォーク』の監修・解説、ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニー『ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニー』の解説を寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20231022130416j:image

f:id:markrock:20231022130609j:image
購入はココをクリック
f:id:markrock:20231022130403j:image
2023年7月28日発売、リッチー・ヘヴンス『ミックスド・バッグ』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20230918110205j:image
2023年8月26日(土)に『ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクル』の発売を記念して、西荻窪の素敵なお店「MJG」でイベントをやります。
f:id:markrock:20230813101635j:image
2023年6月30日発売、ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクルの監修・解説、ジャッキー・デシャノン『ブレイキン・イット・アップ・ザ・ビートルズ・ツアー!』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20230918104848j:image
購入はココをクリック
f:id:markrock:20230918105526j:image
2023年3月31日発売、スコッティ・ムーア『ザ・ギター・ザット・チェンジド・ザ・ワールド』、オールデイズ音庫『あの音にこの職人1:スコッティ・ムーア編』、ザ・キャッツ『キャッツ・アズ・キャッツ・キャン』の3枚の解説を寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20230408155636j:image
f:id:markrock:20230403220702j:image
f:id:markrock:20230403220638j:image
2023年2月24日発売、ビッグ・ボッパー『シャンティリー・レース』、フィル・フィリップス『シー・オブ・ラブ:ベスト・オブ・アーリー・イヤーズ』、チャド・アンド・ジェレミー『遠くの海岸 + キャベツと王様』の3枚の解説を寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20230129183945j:image
2022年12月23日発売、バディ・ホリー・アンド・ザ・クリケッツ 『ザ・バディ・ホリー・ストーリー』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20230403220543j:image

Ramsey Lewis / “Live” In Tokyo

*[ジャズ] Ramsey Lewis / “Live” In Tokyo( GLOBE / 1968 )

釣りはクセになる。ほとんど最近は(レコードと)釣りのことばかり考えている。気づけばもう7月一週が終わる!

f:id:markrock:20200705084854j:plain

今日はラムゼイ・ルイスの『”LIVE” IN TOKYO』を。1968年サンケイ・ホールにおける来日公演の模様を収めたもの。当時最大のヒット曲だった“The ‘In’ Crowd”を聴いている観客のノリが最高(笑)興奮が濃厚に伝わってくる。ラムゼイ・ルイスはジャズ・ピアニストとはいえ、ソウルからフュージョン、歌ものも含めて幅広い活動で知られている人。ジャケの見た目では折り目正しさがあるんだけれど、聖から俗へ身を投げて観客を躍らせてしまうようなイメージがなんとも良い。”Unchain My Heart”とかベタベタな選曲もいいし、ロック世代の楽曲を軽やかに料理した”What The World Needs Now”や”Ode To Billie Joe”、そしてオリジナル”Soul Ginza(ソウル銀座)”もある。

 

そして何といっても、ラムゼイ・ルイス・トリオのリズム隊ヤング&ホルトが抜けた穴を埋めたドラマーのモーリス・ホワイト(後のアース、ウィンド&ファイアー)の参加が注目に値する。1974年にモーリスがプロデュースした『Sun Goddess』の伏線でもあるし、”Song For My Father”ではドラム・ソロやカリンバの独演もある(喝采を浴びている!)。すでにE,W&Fのアイデアは生まれていたのかも。レコ棚を見たら”Soul Man”のカバーなんかを演っている1967年の『Up Pops』があったが、これもモーリスのドラムだった。

 

そういえば、ナンシー・ウィルソンとの1984年の共演盤『Ramsey & Nancy』が初ラムゼイ体験。もちろん、当時大好きだったTOTOデヴィッド・ペイチリオン・ウェアデヴィッド・フォスターと書いた”Slippin’ Away”のカバー(オリジナルはリオン・ウェア)がお目当てだった。

TOM & JERRY / HEY,SCHOOLGIRL / DANCIN’ WILD

*[45s] TOM & JERRY / HEY,SCHOOLGIRL / DANCIN’ WILD ( BIG RECORDS / 1957 )

f:id:markrock:20200702183648j:plain

S&G(サイモン&ガーファンクル)結成前のトム&ジェリー名義のシングル。これだけS&Gが好きなのに、なぜか手元にないことに気が付いた。そこで、カレン・ダルトンバンジョーを所有されているという通販の名店DISC FILEにて購入。CDではアート・ガーファンクルのデビュー前、アーティ・ガー名義の音源とかポールのソロ時代の諸々を含めたコンピで聴けるし、S&G人気に便乗したPickwickのLPやBig Recordsの怪しげなLPもあった。

f:id:markrock:20200702184124j:plain

f:id:markrock:20200702183829j:plain

しかし”HEY,SCHOOLGIRL”は全米52位というそれなりの小ヒットでもあったわけで、それなりに出回っている盤だと思う。やはり45回転の迫力に勝るものはない。エヴァリー・ブラザーズをモデルに個性を模索していた二人の青々しさは、まぶしいほどだ。来日公演でも一節演ってくれたのを思い出す。クレジットは両面ともトミー・グラフ&ジェリー・ランディス名義(トミーがアート、ジェリーがポール)だけれど、これはセカンド・プレスで、ファースト・プレスはA.ガーファンクル&P.サイモンになっているみたい。こちらはセカンド・プレスということになる。

f:id:markrock:20200702184210j:plain

このコロナ自粛期間中、ツアーは引退し79歳になったポールが、S&Gの”The Boxer”や”Homeward Bound”や、妻のSSWエディ・ブリケルとThe Bobbettesの”Mr.Lee”を演奏する姿をYouTubeで観た。”Mr.Lee”は”HEY,SCHOOLGIRL”がリリースされた1957年の楽曲。時代は巡り巡って、また始まりの時へ。変わらぬイノセンスに改めてアメリカの至宝だと感じ入った所。
https://www.youtube.com/watch?v=-z3Gf9Ni7ts

x-bijin(ohno tomokiとダニエル・クオン)

*[日本のフォーク・ロック] x-bijin / Same ( nitejar[ディスクユニオン] / 2020)

f:id:markrock:20200621131703j:plain

芽瑠璃堂トピックにも取り上げられていましたが(https://merurido.jp/topic.php?srcbnr=41101)、ohno tomokiとダニエル・クオンによるデュオ「x-bijin」初のアルバム『x-bijin』が6月26日にリリース! リリースインフォにコメントを書かせてもらいました。今月のミュージックマガジンにもレビューが出たとのこと。流通元のディスクユニオンでは特典CD-Rも付く模様。(https://diskunion.net/jp/ct/news/article/2/89163

 

エクスペリメンタルなコラージュ怪作『Rくん』P-Vineからリリースされた『ノーツ』で知られるダニエル・クオンは米フィラデルフィア出身・韓国系アメリカ人のシンガーソングライターで、近年鈴木慶一などからも一目置かれる個性派ミュージシャン。そして「ぱだらいす」を主宰するミュージシャンohno tomokiは、初のリリースとなる今作でソングライターとしてダニエルに はっぴいえんど、とりわけ細野晴臣を思わせるメロディアスな日本語ポップスを唄わせている。yumboの芦田直人のペダルスティールの客演が光る演奏には、その他、ダニエルとは深い縁のある「森は生きている」の増村和彦や牛山健、ツチヤニボンドの渡部牧人(PADOK)が参加。個人的には、中古レコードの名店・国分寺・立川で展開する珍屋から広がった「森は生きている」(岡田拓郎2枚目のソロ『Morning Sun』も今月10日にリリース)に象徴される、多摩産シティ・ポップの連なりに位置付けたい良作だ。西荻窪の飲み屋で語り合ったアイデアがここに音盤として結実したことを、幸福に思う。

 

以下リリースインフォです↓

 

「halfway to a hosono house?」

 

ohno tomokiとダニエル・クオンによるデュオ「x-bijin」、ほぼ宅録による初のアルバムは、
甘美なペダルスティールにのせてダニエルが滑らかなボーカルで歌いこなす桃源郷ポップス。
遠藤賢司に捧げた「グレープフルーツ」からして初期松本隆を思わせる日本語の美しさが際立つのはなぜだろう?
はっぴいえんどとポール(・マッカートニー)が産み落としたタネは、ジム(・オルーク)と出会ったペンシルヴァニアで果実となり、
多摩産シティ・ポップのフレッシュジュースに姿を変えて、甘酸っぱい喉ごしと共に僕たちの前にある。(いしうらまさゆき)

 

ohno tomoki[ぱだらいす](ピアノ、ギター)
daniel kwon(ダニエル・クオン)(ボーカル、ミックス、プロデュース)
牛山健[ダニエル・クオン、マイク眞木](ドラム)
芦田勇人[yumbo](ペダルスティール&トランペット)
増村和彦[ex.森は生きている](スレイベル)
渡部牧人(PADOK)[ツチヤニボンド](trks 2-6 ベーシック・トラック録音、マスタリング)

タツローさんからの贈り物

*[コラム] タツローさんからの贈り物

 

東京はいつもの賑わいが戻ってきている。しかし人手が戻ってくれば感染者も増える…ということで。これは当たり前かもな、と思う。社会的距離を保つ、ってな生活における人間の耐性の限度をとうに超えてしまったのだろう。リアルに近づける科学技術も、リアルを一生超えられない。オンラインも、個人的には、ですが、結論ダメだなと思った。心配なのは、飲食やライブハウスにちゃんとお客が戻るかということ。私は普通に行こうと思ってますがね。ところで最近のマイブームは釣り。車は私乗りませんので、毎週末、電車やら自転車で近場の川まで行くわけですが、人はほぼ誰もいない。苦手なマスクもせずにすむ。遠く離れたところに釣り人は現れ、消えてゆく。たぶん爆発的な人気になることはないけれど、時代を超えて釣り人はいるんだと思う。レコードもそんな感じで生き延びるのかな。そんなこんなで、いつもレコードと楽器と魚のことばかり考えている。

 

そう、このタイミングで渋谷のレコファンBEAMS店まさかの閉店…あと残るは秋葉原の一店舗のみ。それこそレコードファンのお悔やみがいま、後を絶たないわけですが、引き続き、痛いニュース。30万枚という爆発的な在庫を誇る店で、日本のフォーク・ニューミュージック定番とか、アメリカの無名カントリーとかが450円くらいで常に入手できる最高の店だった。シングル盤もやたらとあったし。最近でもキース・オルセンのいたTHE MUSIC MACHINEの米オリジナルLPが950円で落ちていたりと重宝していた。レコファンといえば吉祥寺レンガ館や池袋のバカでかい店舗にも学生時代の大半滞在したし、西武新宿PEPE店や下北沢店もよく通った。何より高校・大学時代はDISC FUN、ムトウ、タイムと回って、最後はレコファン高田馬場店に「毎日」行っていた。手前にパラパラめくれるCD棚が良くって、時たま黄色札のキズ盤がありまして、当時結構珍しかったビル・チャンプリンのソロ(Airplayレコードからの輸入CD)も格安で買ったなぁ。あと、CS&N関係のLPとかはレコファンの中古アメ盤で大体揃えたし(ジャケに貼られたシールを剥がすのはワザが必要だったが…しかし今見るとマトリクス若いやつとかが無造作に安く売られてた)、輸入盤CDや再発LPの入荷も早かったから、00年代半ば頃までは相当買っていた。国内新譜も割引があったから、まずはレコファンを覗いたもので。しかしそう考えると、値付とか、20年前も最近も、あまり変わらなかったような…ある種のセレクトショップ化したユニオンと比べると切ないが、渋谷レコファン系の博覧強記系のカオス店舗を楽しみたいなら、もはやアメリカにでも行くしかないのか。閉店セールかぁ、辛い気持ちになりそうだけど、きっと行っちゃうな。

 

しかし、こういうことを言うと、サブスクの時代に何を…とか、時代は変われど形は変わっても音楽は死なないよ、とか空虚なことを言う人もいるんですよね…死なないどころか、実質ほぼほぼ殺されてるぐらいに思ってますよ。東京も大阪も、日本もアメリカやイギリスだって相似形なんだけど、弱い者から強い者へお金を流すことで先進国の上位層の富を維持するという新自由主義は改めていかがなものかと思う。弱者救済のための経済活動規制を緩和すれば格差が生じるのは当前だし、就職氷河期世代の私達なんて人口の多い親世代の富の維持のために捨て駒にされたわけで。人生の後半も引き続き、自分の思ったことをやろうと心に決めている今日この頃です。

 

で、ライブハウスでのアコースティック・ツアーの一環として高円寺の往年のハコJIROKICHIでライブをやる予定だった山下達郎。TOKYO-FMのサンデーソングブックは高校生の頃から聞き続けているわけですが、5月の緊急事態宣言発令の際の放送時の前説はいつにないムードだった。批判をやめて寛容を保とう、という内容だったわけだけれど、ただでさえライブのキャンセルも相次ぎ、活動が停滞し追い込まれたミュージシャンの窮状や苛立ちを極力抑えつつ、世界中の連帯を説く内容は、聴いていた人なら只ならぬ雰囲気を感じ取り、深く納得できるものだったと思う。それでも一部を切り取って「政府批判をやめろとは何だ」と怒る人や「よくぞ言ってくれた」と持ち上げる人もいて、いずれもラジオさえ、もっと言えば達郎さんのアルバムすらろくに聴いていないのだろうけれど、救いようのないものを感じてしまった。同じ高円寺にある老舗のハコ、ペンギンハウスは閉店になってしまったけれど…JIROKICHI応援Tシャツは達郎さんを、そして音楽文化を応援する気持ちも込めて、買いました。

f:id:markrock:20200614225539j:plain

f:id:markrock:20200614225610j:plain

 

レコ屋のある日常

*[コラム] レコ屋のある日常


緊急事態宣言が全面解除に。それにしてもここまで、なかなかしんどい期間だった。経済と健康…保健大臣が目立った諸外国と比較すると日本は厚労大臣より経産大臣が指揮していたから、あくまでそっち優先だったという話になる。が、やはりこれ以上人々の生活を支え切れないということなのだろう。フライング感があったのは支持率回復と来年のオリンピック実施の判断が10月にあることも関係しているように思われる。しかしコロナ以後を演出するのは拙速で、少なくともワクチン実用化後の話だろうし、日本は打ち勝ったとかいう狭い了見では、既に私たちを取り巻くグローバル経済構造の展延を見誤ることになる。


とはいえこの期間、経済とは人々の生活を互いに支えることだと改めて実感できた。例えば毎日目の前でキラキラ輝いているように見えた自分のレコード棚が、なぜか死んだように見えたんですよね。友人が遊びに来て色んなレコードを聴いたり、レコ屋で久々に好きなアーティストのレコを買って、それを機にもう一度アーティストのレコを全部出してそのキャリアを辿ってみる…とか。つまり棚もストックするだけでなく、フローさせないとやっぱり血液循環が悪くなるんですね。不思議と。

f:id:markrock:20200527010229j:plain

そんなわけで中古レコ屋のネット通販とか、ライブハウス援助とか、やれる限りのことはやったわけだけれど、西荻窪の名店ファンレコードの閉店はまぢで痛かった。まあいつかそのタイミングを狙ってたのかもしれないけれど、こんな最中に37年間の歴史を閉じてしまうとは…音楽仲間がみんな西荻近辺に住んでいたころは、無茶苦茶狭いのにレコードギュウ詰めなあの店行くと必ず誰かに会えたもんな…しかも店のオジサンの一人がむちゃくちゃ怖い(笑)閉店時間近くに行くと「閉めるよ」とか言って追い出されるとか、お金払っても毎回無言で釣りを突っ返されるとか、伝説になっている。思えば20年近く通って会話したのは二回。はっぴいえんど『風街ろまん』オリジがナント税込2000円で売っていて、思わず「オリジナルですか?」と聞いたら「だと思う」って。あとは買いすぎて商品が袋ごと下に落下したときだけ「スマン」って。その2回(笑)でも、安かったなあ。例えばフリートウッド・マックとかCCRとかジェフ・ベックとか、そういったロック・クラシックを一通り全部集めたい時はまず初めに行くと、1枚500円くらいで大体揃うっていう。ああいうオールジャンルの店って通ってくうちに家のレコ棚も似てくるんですよね。とっても残念でした。


だから、わが町三鷹の名店パレードが今日営業再開したのは嬉しかった!やっと日常が戻った感じ。久しぶりに店長さんと長話をしてしまう。今日はこんな感じ!

f:id:markrock:20200527010306j:plain

ちなみにユニオンは先週から始めてましたが、店内のお客さんの背中にはレコ掘れる嬉しさが滲み出てました。

ブックガイドで取り上げて頂けました

*[コラム] ブックガイドで取り上げて頂けました

f:id:markrock:20200521005135j:plain
斎藤哲也さんの新刊『もっと試験に出る哲学――「入試問題」で東洋思想に入門する』NHK出版新書)、先ほど書店で見つけて手に取ったところ、私の『哲学するタネ【東洋思想編】—高校倫理が教える70章』を巻末ブックガイドで紹介してくださってました!ありがとうございます!

f:id:markrock:20200521004901j:plain

斎藤さんが監修された『哲学用語図鑑』(プレジデント社)はイラスト入りの大変ユニークな哲学入門書で、ベストセラーとなった前作『試験に出る哲学――「センター試験」で西洋思想に入門する』ともども発売時に買っていました。センター試験(今年度から大学入学共通テスト)の科目になっていることで存続してきた高等学校の必修科目・倫理が、財界の意向も組んだ割と政治的な意図で選択科目となり、消えかけていること…これが『哲学するタネ』を書く強い動機となったのですが、そんな部分ももしかすると、汲んでくださったのかもしれません(勝手にそう思っています…)。ちなみにそのことと、音楽はじめ芸術文化が昨今のコロナ禍における困難な状況の中で、一面では軽視され見殺しにされていることと、実は根っこでつながっていると思うのです。

f:id:markrock:20200521005159j:plain

 

善竹(茂山)富太郎くんのこと

*[コラム] 善竹(茂山)富太郎くんのこと

 

高校そして大学の心理学科の同級生だった大蔵流狂言師の善竹(茂山)富太郎君がコロナで亡くなったと聞き、茫然としています。何と言葉にしてよいかわからないくらい、本当にショックです。一昨夜心理学科の時の友人から教えてもらい、嘘だと思いたい一心で電話をしたら、弟さんが出られて、本当だったとわかりました。4月5日に入院してから闘病していたものの、快癒の願い叶わず…とのことでした。昨夜はヤフーのトップニュースにもなっており、胸がつぶれそうでした。


少々長文失礼します。大学の心理学科は男子が少なく、そこから富太郎君とは特に仲良くなりました。大変畏れ多いことですが、お前皇太子様に似てるな~と思ってた、なんて言われたところから親交が始まったと思います。当時携帯電話を持とうとしなかった私の実家にいつも電話をしてきて、早く携帯持てよとさんざん言われたのも懐かしいです。モノマネも得意で長話好きでした。当時私はギターを本格的に弾き始め、音楽を作り始めていたのですが、富太郎君は狂言だけでなく音楽にも幅を広げたいと思っていたみたいで、ある日いつものカラオケボックスに呼び出されると(彼が好きだったASKAに影響されたと思しき)曲を作ったよ!とくせのある字で沢山の歌詞を書いてきたものを渡され、それ以来お互いの家やカラオケボックスを練習場所に行き来したりして、私のギター伴奏で曲を仕上げていったこともありました。最終的に富太郎君が10曲くらいのオリジナルを作り、私の「ワラベウタ」という曲を富太郎君が歌ったものを含めて4曲の簡単なデモを作りました。「あいつと呼んだあの場所まで」という曲は、彼の人には見せられない弱みをさらけ出したような名曲でした。


じきにトッタ(TOTTA)とイチでロングロングアゴーっていうグループ名にしようと彼が提案し、お前仕事辞めて本気で腰を据えてやろう、責任はこっちで持つからと迫られました。ちょうど確か私も25歳を超えて、まだ就職先を転々としたりしていたと思います。でも私は、音楽を続けていきたいけれど、自分の曲と歌でやりたかったから、最後の最後は断ったのでした。その時の寂しい声はなんとなく忘れられません。


その後も、私の結婚式の時に、場の空気を変えるほど素晴らしい狂言を披露してもらったり、国立能楽堂セルリアンタワーに舞台を観に行くことも沢山ありました。ボーカルレッスンも始めたようで、ジャズを唄うライブに誘われて、観に行ったこともありました。お前との後に自分でこんな歌の世界を作ったよ、と私に見せたかったのかもしれないです。


大柄ながら、高校時代バスケットボールプレイヤーとしても一流だった運動神経で、その狂言の舞台は実にダイナミックでした。巧みな話芸や滲み出るコミカルさは、人間国宝の血を引く天性のものだったと思います。自主公演を行うほか、様々な領域の芸能とのコラボレーションや大学教員として後進の育成、学校狂言など、狂言の裾野を広げる啓蒙活動に精力的に取り組んでいました。今から、という所でこんなことになってしまい、ただただ残念でなりません。お父さん、弟さんとの舞台をもう一度観たかった。謹んでお悔やみを申し上げます。

f:id:markrock:20200502190038j:plain