いしうらまさゆき の 愛すべき音楽よ。

音楽雑文家・SSWのブログ

いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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markfolky@yahoo.co.jp

2024年5月31日発売、V.A.『シティポップ・トライアングル・フロム・ レディース ー翼の向こう側にー』の選曲・監修・解説を担当しました。
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[NEW!!]2024年3月29日発売、モビー・グレープ『ワウ』、ジェントル・ソウル『ザ・ジェントル・ソウル』の解説を寄稿しました。

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2024年2月23日発売、セイリブ・ピープル『タニエット』の解説を寄稿しました。
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2023年12月22日発売、ロニー・マック『ワム・オブ・ザット・メンフィス・マン!』、ゴリウォッグス『プレ・CCR ハヴ・ユー・エヴァー...?』、グリーンウッド・カウンティ・シンガーズ『ハヴ・ユー・ハード+ティア・ダウン・ザ・ウォールズ』の解説を寄稿しました。
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2023年12月22日(金)に大岡山のライブハウス、GOODSTOCK TOKYO グッドストック トーキョーで行われる、夜のアナログレコード鑑賞会 野口淳コレクションに、元CBSソニーでポール・サイモンの『ひとりごと』を担当されたディレクター磯田秀人さんとともにゲスト出演します。
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「アナログ鑑賞会〜サイモンとガーファンクル特集〜」 日時:12月22日(金) 19時開演、21時終了予定 入場料:予約2,000円 当日2000円(ドリンク代別) ゲスト:石浦昌之 磯田秀人 場所:大岡山 グッドストック東京 (東急目黒線大岡山駅から徒歩6分) 内容:①トム&ジェリー時代のレコード    ②S&G前のポールとアートのソロ·レコード    ③サイモンとガーファンクル時代のレコード(USプロモ盤を中心に)    ④S&G解散後、70年代のソロ·レコード ※それ以外にもレアな音源を用意しております。
2023年11月25日(土)に『ディスカヴァー・はっぴいえんど』の発売を記念して、芽瑠璃堂music connection at KAWAGOE vol.5 『日本語ロックが生まれた場所、シティポップ前夜の記憶』を語る。 と題したイベントをやります。
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2023年9月19日、9月26日にTHE ALFEE坂崎幸之助さんの『「坂崎さんの番組」という番組』「坂崎音楽堂」で、『ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクル』を2週にわたって特集して頂きました。
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2週目 ココをクリック
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坂崎さんから
「聞きなれたS&Gがカバーしていた曲の本家、オリジナルの音源特集でしたが、なかなか興味深い回でしたね。やはりビートルズ同様に彼らもカバー曲が多かったと思うと、人の曲を演奏したり歌ったりすることも大事なのだと再確認です。」
2023年10月27日発売、『ディスカヴァー・はっぴいえんど: 日本語ロックが生まれた場所、シティポップ前夜の記憶』の監修・解説、ノエル・ハリスン『ノエル・ハリスン + コラージュ』の解説を寄稿しました。
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2023年9月29日発売、『風に吹かれて:ルーツ・オブ・ジャパニーズ・フォーク』の監修・解説、ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニー『ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニー』の解説を寄稿しました。
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2023年7月28日発売、リッチー・ヘヴンス『ミックスド・バッグ』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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2023年8月26日(土)に『ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクル』の発売を記念して、西荻窪の素敵なお店「MJG」でイベントをやります。
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2023年6月30日発売、ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクルの監修・解説、ジャッキー・デシャノン『ブレイキン・イット・アップ・ザ・ビートルズ・ツアー!』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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2023年3月31日発売、スコッティ・ムーア『ザ・ギター・ザット・チェンジド・ザ・ワールド』、オールデイズ音庫『あの音にこの職人1:スコッティ・ムーア編』、ザ・キャッツ『キャッツ・アズ・キャッツ・キャン』の3枚の解説を寄稿しました。
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2023年2月24日発売、ビッグ・ボッパー『シャンティリー・レース』、フィル・フィリップス『シー・オブ・ラブ:ベスト・オブ・アーリー・イヤーズ』、チャド・アンド・ジェレミー『遠くの海岸 + キャベツと王様』の3枚の解説を寄稿しました。
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2022年12月23日発売、バディ・ホリー・アンド・ザ・クリケッツ 『ザ・バディ・ホリー・ストーリー』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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OFF COURSE / オフコース・アンソロジー

*[日本のフォーク・ロック] OFF COURSE / オフコース・アンソロジー東芝EMI / 1977)

小6で“ラブストーリーは突然に”が大ヒットして小田和正を意識して以来、まあ正直隠れ小田マニアみたいな感じで。参加作とか提供曲も全部集めるみたいなことをやってきた。当然鈴木康博ファンでもありつつ。先週、フジテレビNEXTでやっているアルフィー坂崎幸之助のももいろフォーク村に私の永年のアイドルであり、今も心酔し続ける元・古井戸の加奈崎芳太郎師匠が出演!ももクロメンバー4人と代わる代わる古井戸ナンバー("何とかなれ"、"ポスターカラー"、”インスタントラーメン”、"ちどり足"そして"さなえちゃん")で共演という信じられない出来事があったわけですが(すごく新鮮だった!)、来月のゲストは鈴木康博なのだそう。

 

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 昨年初めてファンの方のお導きで小田ライブに初参戦。基本放っておいても大ヒットメドレーになるわけだけれど、「オフコースの小さな部屋」の雰囲気そのもののインティメイトなピアノ弾き語りで初期曲を演ったり、ファン離さないサービス精神に圧倒されてしまった。バンドも素晴らしい音を奏でていたし、何より70歳を超えているとは思えないハイトーンに圧倒された。f:id:markrock:20190222223951j:plain

 で、本日100円盤をいつも通り爆買いしていたところ、1977年のブレイク前夜のプロモーション盤オフコース・アンソロジーを発見。恥ずかしながら存在を知らなかった。ジャケットがコンビーフ缶というのも懐かしい感じが(笑)。『SONG IS LOVE』(デヴィッド・クロスビーの”Music is love”が念頭にあったタイトル?)と副題がついているけれど、『ジャンクション』のリリース直後で「PROMOTE DISK」と謳われている。再デビュー曲”僕の贈りもの”や鈴木康博の大名曲”もう花はいらない”、”ロンド”や、スマッシュ・ヒットした"秋の気配”もある。”別れの情景(Ⅰ)”は改めて聴くと完全にフィリー・ソウルですね。しかもリフは後の”Yes-No”に転用されていると思う。”Yes-No”の「君を抱いていいの」なんていう切ないリフレインもつまりは”You Are Everthing”だったのかも。

 

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何より衝撃的だったのは、アルバム未収録のCMメドレーというやつ。カルピス・ソーダヤマハ・スキー、明治ブルガリアヨーグルト…などなど12のCMソングが収録されている(この時点で47曲のCMソングを担当していた、ブックレットにリストあり)。完璧な洋楽的ハーモニーで結構趣味趣味的作り。大滝詠一のCM集とテイストは全く一緒だから面白い。CM音楽のアーカイブっていうのも、出ていたりもするけれど、埋もれている音源も多いのではなかろうか。

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Fat City / Reincarnation

*[フォーク] Fat City / Reincarnation(Probe / 1969)

 

芽瑠璃堂の実店舗が復活するというニュース。いいですね~。今実家が吉祥寺なのだけれど、私が認識した時点では既に芽瑠璃堂もぐゎらん堂も存在しなかった。いせやはもちろんあったし、「のろ」や喫茶店のBogaも健在だったけれど。そんなわけで芽瑠璃堂という名前には今も伝説の輸入盤店というイメージが残っている。ネット時代に実店舗というアナログなムードが出てきたのはいいことだと思う。アナログでダウン・トゥ・アースな70年代―90年代ときて、2010年代がまた回帰の時代になるはずだったんだけれど、平均寿命が延びたせいか、人口のアンバランスなのか、バブリーで近代的な昭和元禄的価値観が延命してしまった感じ。でも、最近のムードだと2020のオリンピックでとうとう無思想で男性に媚びる忖度アイドル時代なんかも打ち止めになるのでは。わからんけど。

 

 

実は最近、自分が20代だった20年近く前のことを思い出しつつ、音楽をもう1回やり直している感じもある。あの頃自分は好きな音楽のどこに惹かれていたのか?とか、あの時の音楽の感動を取り戻すにはどうすればいいのか?とか。希少性と感動の結びつきもあるし、ビッグデータによる必然より偶然性にあったような気もする。あとは手触りみたいなヒューマニティ。70年代のスピーカーを買って当時の音を再現してみる…という最近のマイブームもそれと関連している。音楽の幸せとか、そんなことも思いつつ。

 

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 で、自分の重要なコレクションを形成するきっかけになったお店を再び訪ねてみたり。例えば今はネット・ショップのみとなっているけれど、DISC FILE(https://www.disc-file.com/)。山下達郎のラジオにも音源提供している、60~70年代フォーク、シンガーソングライターの名店。今ならユニオンとかにも沢山あるアメ盤を扱っている店は20年前はそんなに多くなかったような。カレン・ダルトンバンジョー実物も持っておられる。元々は猿楽町にあったみたいだけれど、高円寺、高田馬場、そして高井戸のご自宅の店舗までお邪魔したことがあったように記憶している。店長さんから、CD化されたとかどうでもいい、みたいな話とか、ご自身のコレクションも売っているけれど、探せばまたアメリカのどこかで見つかるから惜しくない、みたいな話を聞いたけれど、今ならその気持ちがよーくわかる。バリー・マンよりいい、と力説されていたデイブ・ロギンスの”Pieces Of April”なんて、未だに月1で聴いているし。

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そのDISC FILEでファット・シティの1969年のファースト『Reincarnation』を入手。これは素晴らしかった!ビル・ダノフとタフィ・ナイヴァートの夫婦デュオ(後、離婚!)で、ジョン・デンヴァーの代表曲”Take Me Home, Country Roads”他の作者として知られている。タイトル曲の”Reincarnation”は「輪廻」の意。東洋思想かぶれのヒッピー風ないかにも、のタイトルだ。1972年パラマウントからの『Welcome To Fat City』やBill & Taffyの『Pass It on』『Aces』はジョン・デンヴァー寄りのカントリー・フォーク作だったし、スターランド・ボーカル・バンドになるとAORテイストでさえある。

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それに対して、ファーストはママス&パパス的なフォーク・ロックの色がある。プロデュースはママ・パパのジョン・フィリップスが組んでいたモダンフォーク・トリオ、ジャーニーメンのメンバー、ディック・ワイズマン。何しろバックのセッションメンがバーナード・パーディ、ヒューバート・ロウズ、バッキー・ピザレリ、ボブ・ジェイムスといったソウル、ジャズのスーパー・スター達。アレンジはボブ・ジェイムス御大が担当。ボブ・ジェイムスはこの時代、ウォーレン・マーレイ(https://oldays.merurido.jp/magazine.php?magid=00023&msgid=00023-1371801904)やフラモックス(Frummox)の『Here To There』(これもProbeのリリース)といったSSWのセッションに参加していた模様。もちろん中には”Sally Anne”や"We Don't Live Here No More"みたいなジョン・デンヴァー・スタイルのフォークもある。というか、ジョンは彼らの力を借りてカントリー・フォークな独特のスタイルを作ったのだった。

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Jonah / Same

*[ソフトロック] Jonah / Same(20th Century / 1974)

 

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先日ブログに書いたビクターの70年代初頭のスピーカーだけれど、それ以後も手入れにそれなりの時間を要しまして。まだ接点不良があるようだったので、再びバラして出来る限りの接点復活を試みたり、あるいは積もるホコリを除去するのもなかなか大変で(笑)。その量たるや結構凄かった。コーン紙やエッジを傷つけないよう無心の作業。それでも聴く音楽によって、まれに音が途切れることがあって、その理由はまだ探り途中。しかし45年前のものだから仕方ないし、手がかかるところがまた楽しかったり。修理に出したりすると高くつくし、安い娯楽だから面白いというのもある。今のところバーンとちゃんと音を出しているけれど、デカイ音で鳴らすと、今まで聴こえなかった音が聴こえてくるのが感動。ジミー・ウェッブの『Land’s End』を米盤LPで聴いたら、こんなプログレッシブだったっけ?という。いやー狂ってます。音楽やレコードは奥が深すぎる。

f:id:markrock:20190218172647j:plain さて、今日は500円くらいで入手したJonah(ジョナ)の盤。ジョナはニューヨーク出身、3人組のイタロ・アメリカンのトリオで1974年に20th Centuryレコードから1枚Jonahをリリースしている。あとはスパイダーマンのサントラのうち1975年の『Spider-Man: Rock Reflections Of A Superhero』に1曲提供している。

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今手元にある1972年の『The Amazing Spider-Man: From Beyond The Grave - A Rockomic』には絡んでいなかった。

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しかし、そこで歌っている(アーチーズの)ロン・ダンテがジョナの唯一作をプロデュースしている。ジョナのメンバーはマイケル・グレゴリオ、ロバート・ゲンゴー、ヴィンセント・ラファータ。マイケルは、それこそジミー・ウェッブの”Worst That Could Happen”を大ヒットさせたジョニー・マエストロ&ザ・ブルックリン・ブリッジのメンバーでバックコーラスを担当していた人。聴いてみてわかったけれど、その作品の一部(例えば”The Fool”)はCS&N風の作品。そう、”ライオンは寝ている”で有名なトーケンズのメンバーが作ったクロス・カントリーともちょっと似ているような。とはいえ全体的にはニューヨーク・ポップの名セッションマンを使った、ドが付くほどのポップ路線。ブロダクションはジム・クロウチなどで飛ぶ鳥を落とす勢いのキャッシュマン&ウェスト。そしてNYの名ギタリスト、ボブ・マンがホーン&ストリングスのアレンジを務め(全編ギターも)、他にもジェイムス・テイラーのバックとしてお馴染みのドン・グロルニックが参加。そしてドラムスはアラン・シュワルツバーグ。この面子で大体音は想像できるはず。マイケル・ブレッカーの参加もアリ。イタロ・コネクションではラスカルズのエディ・ブリガッティがパーカッションで参加する”Waitin’ For The Change”もある。先ほどCS&Nと言ったけれど、普通にポップ・ロック、ブルーアイド・ソウルもありつつ、ソフトロックな感性のコマーシャルなつくりが最高で!

Josh White Jr. / Same(Vanguad / 1978)

*[フォーク] Josh White Jr. / Same(Vanguad / 1978)

 

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ジョシュ・ホワイトといえば、アメリカン・フォーク界の黒人ソングスターみたいな人。1914年に生まれ、1969年に55歳の若さで亡くなっている。ディランからPP&M、そして彼らより年長のピート・シーガーまで、60年代のフォーク・リヴァイヴァルの人達で影響を受けていない人はいないんじゃないかな、と思う。黒人差別にプロテストする運動家としての側面もあった人だし。

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しかしそのジョシュの息子、ジョシュ・ホワイト・ジュニア(https://www.joshwhitejr.com/)のレコードは聴いたことがなかった。ジャケットを見る限り、親父の遺伝子を受け継ぐフォーク・ソウル的作品だとは思わなかった。だいいち、レコ屋のソウルのコーナーに入っていたし。1978年にヴァンガードからリリースされている、というのが遅れてきたフォークのようでいい(とはいえ60年代に3枚の単独作をリリースし、今作は10年ぶりのアルバムだった模様)。スティーブ・カーンがギターで参加している。ラリー・キーンが1975年のアルバムに入れている”Marco Polo”(マルコ・ポーロ!)という曲が、プリAORの色でとても良い!ビル・ダノフが自身のビル&タフィのアルバム『Pass It On』で歌い、ジョン・デンバーにもカバーされた”She Won’t Let Me Fly Away”はファンキーな仕上がり。そしてそのビル&タフィ作品のタイトル曲”Pass It On”も選曲。自身でも”Think”を書いているけれど、基本的には他人の作品を自分のものにしてカバーするフォーク・シンガーのスタイルみたい。フォーク・シンガー、エド・ヴェイダスの”You Turn Me”は結構ポップ・ロックな仕上がりで。珍しいところではデヴィッド・ポメランツのAORなバラード”It’s In Everyone Of Us”をゴスペルなタッチでカバーしていたり。女性フォーク・シンガー、ローン・マッキンノンの”My Sister Delores”もあった。裏ジャケには誰かに宛てたサインもある。今はもう78歳。親父より30年以上長生きして、フォークの伝統を歌い継いでいるみたい。

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スピーカーの至福

*[コラム] スピーカーの至福

 

最近焦ったことを幾つか…まずは芽瑠璃堂マガジンでリンクして頂いている、2005年からやっている拙ブログ、はてなダイアリーに開設していたのだけれど、2019年1月末でサービス終了なのだという。2月に気付いたけれど。こういう時の運営会社の容赦なさと言ったらまったく!111万アクセスを超え、キリ番はどのタイミングで…などと思っていたらキリ番直前でサービスがストップするという(笑)。致し方なく、はてなブログに移行してみたが、なんだかどうにも慣れない(https://markrock.hatenablog.com/)。

 

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 そしてもう一つは数年おきにやって来るレコード針問題。2014年に倒産したvestaxのプレイヤーなので、純正針は存在せず。プレイヤーごと変える手もあるけれど、手動のピッチコントローラーが付いていて、半永久的に使えると踏んでいるから変えないつもり。ちなみにベルトドライブ式のレコードプレイヤーの場合、ゴム製のドライブベルトは劣化パーツなので10年もすればもちろん交換が必要になる。それに、そもそもモーターがへたってくるため、回転数が変わってくる点は注意が必要。33回転、45回転とセレクターでスイッチしたとしても、古いプレイヤーはズレている場合がほとんど。CDなどのマスター音源や楽器を使って、ピッチとスピードを手動で調整する必要がある。で、針の話。vestafanという元ベスタクスの方が立ち上げた会社が、小ロットで時々作っているけれど、最近は製造されていない模様。そこで、ケンウッド/トリオのとある針とも型が同じなので、それを買っていたけれど、A’pisでもとうとう取り扱い中止に…するとアマゾンで買えるJico針は足下を見たのか突然値上げして5000円近くという厚利少売になっているし、万事休すかと思った。でも、電器屋さんに以前聞いた、「結局針自体を作っているのはほぼナガオカさんです…」を頼りにナガオカの在庫を見ると、当たり前のようにあるじゃないですか!しかもヨドバシだと値引きで3000円くらいになっていた。いやはや音楽を聴く最重要インフラなので、焦りました。ナガオカはすごい。

 

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そして最後はスピーカー。最近リサイクルショップで安スピーカーを買う、という行為にハマってしまいまして、正直場所も取るので大変だった(買う度にその都度売るのも実は大変で)。目標はといいますと、オーディオファンはそんなに好きじゃないみたいですが、20年くらい愛用していたONKYOをサブにして、メインをVictorにするという改革。狙いは1973~74年のVictor SX-3。某変態ミュージシャンで音楽オタクの友人の家で聴かせて貰って開眼。解像度は決して高くないのだけれど、現代の音楽聴取環境に一番欠けている低音が実に素晴らしかった(巷のBluetoothスピーカーぐらいで満足していたら、拘った音作りをしているミュージシャンは報われないと思う)。ジャズ、ロック、クラシックはもちろん、私の一番思い入れのある70年代のシンガー・ソングライターを間違いなく一番良い音で、ロック喫茶のように聴けるスピーカーだと感心した次第。アンプの力量は必要に思えるけれど、音量を上げても耳に痛くない、優しい音。比べると今までのONKYOの方がシャリシャリしていて耳に痛い音だった。 

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 ただ、発売から45年ほど経っているから、良いコンディションのものはほとんどない。それでもSX-3信者は多いようで、パーツ用のジャンクでもオークションで即売される状況。後続のSX-3ⅡやSX-3Ⅲも人気のようだった。で、とうとう先日、某オークションでジャンク品を発見し、3000円台で入手(プラス送料は140サイズ×2)!。音は出る、としか書いていなかったのだけれど…実際届いてみると、まずそこそこデカイのにビックリ。片方で13キロもある。で、通電してみると…アッティネーターのガリとそれによる音飛び、ツィーターの音の出も悪いようで、ここで我に返って焦りました。やばいもんを買っちまったな…と。再びGo to オークションかと思ったものの、分解・修理を決意。苦しいときの接点復活剤を買ってきて、バラしてみた。中は45年の時を感じさせず、意外なほどキレイ。白布が敷き詰められている。低音の秘密はこれか、と(化繊の吸音材だと、古くなるとこれがポロポロ粉になって出てきたりするので困る)。とりあえず接点復活剤で接点の黒ずみを丁寧に落とし、ホコリを取り除いていって…おそるおそる通電し、再度鳴らしてみると、ドカーンと全部鳴りました!ガリも消滅。いやー、本当に焦ったけれど、結果オーライかな。聴き慣れたレコードも違う音で聴こえてくるから不思議。聴き比べているだけで夜になってしまう。

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Kenny Rogers / What About Me?

*[AOR] Kenny Rogers / What About Me?(RCA / 1984

 

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前回ジェイムス・イングラムを取り上げた後、SNSで彼のファンを公言している人が結構多いことに気が付いた。そんなわけで、カントリー・シンガー、ケニー・ロジャースAOR名盤『What About Me?』を久々に聴いてみた。ケニーとキム・カーンズ、そしてジェイムス・イングラムのトリオが歌うタイトル曲のバラード”What About Me?”はやっぱり素晴らしい。ケニーとプロデューサーのデヴィッド・フォスター、そしてリチャード・マークスが共作した楽曲。それこそ”We Are The World”な時代の産物。男性カントリー・シンガーと女性、そしてアフリカン・アメリカンの組み合わせは、まるでこの時代のリベラル理想系みたい。でもメインは男性っていう。

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Keane(Brothers)のトム・キーンが手がけた”The Night Goes On”も産業ロック風でカントリー歌手らしからぬ感じだし。ローラ・アランの書いた”Dream Dancin’”は切ないカントリー・ポップ。ギャラガー&ライルのグレアム・ライルとトロイ・シールズの共作”Didn’t We?”、デヴィッド・ポメランツとリチャード・マークスの珍しい共作”Somebody Took My Love”、ケニーとリチャード・マークス共作の名バラード”Crazy”もある。ドリー・パートンの”The Stranger”を入れたのは、カントリー・ファンを繋ぎとめるためかな。とにかく良い楽曲を良いシンガーと良いスタッフ(ネイザン・イースト、ジョン・ロビンソンエド・グリーン、ジョー・シャーメイ、デヴィッド・フォスターなど)で演奏するという豪華なプロダクションが功を奏している。

 

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 息を飲む様なレコードに次いで、ジェイムス&ルーサー・イングラム兄弟やパティ・オースティンらが客演したクインシー・ジョーンズ『Dude』を。やはりDune歌唱の”Ai No Corrida(愛のコリーダ)”でしょう。もちろんジェイムス・イングラムの”Just Once”も。ヒートウェイヴのロッド・テンパートン楽曲はマイケル・ジャクソン『Thriller』とも合わせて聴きたい。そしてそして、テナー・サックスのアーニー・ワッツのクインシー・プロダクションの1982年作『Chariots Fire』。こちらもファンキーな”Hold On”(スティーヴ・ルカサーのソロも最高!)や”Gigoro”でジェイムス(&ルーサー・イングラムハワード・ヒューイット)の楽曲・歌唱を堪能できる。

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James Ingram / The Best Of James Ingram The Power of Great Music

*[ソウル] James Ingram / The Best Of James Ingram The Power of Great Music(Warner / 1991)

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ジェイムス・イングラムが亡くなったとのこと。ミシェル・ルグラン・ショックからも立ち直れないままで。ルーサー・イングラムのお兄さん。そのジェイムスがパティ・オースティンとデュエットした”How Do You Keep The Music Playing?”はミシェル・ルグランの曲だった。テンダーな男性ソウル・シンガーということで言えば、ピーボ・ブライソンとジェイムス・イングラムは自分の中では双璧。白と黒を繋いだ重要なライターであるバリー・マンが双方に曲を書いているのもミソ。そもそもジェイムスが歌ったバリー・マン作”Just Once”のデモ(2017年にまさかのCD化Barry Mann & Cynthia Weil Original Demos, Private Recordings and Rarities』)がクインシー・ジョーンズのもとに渡ったことでジェイムスのソロ・デビューに白羽の矢が立ったのだった(件のデモ曲は1981年の『The Dude』に晴れて収録)。ちなみにもう一つのデモ”Never Gonna Let You Go”は傀儡のようにジョー・ピズーロ(ex.HEAT)が歌ったセルジオ・メンデス版が売れた。デモでここまでか…というくらい、とにかく抜群に唄の上手い人だった。だからこそ、USA for AfricaWe Are The World”でトリを務めることになったのだった。トリというとレイ・チャールズ…というイメージがあるけれど、元々そのレイのバックを務めていたジェイムスがレイとボーカルを分け合ったことを思い出してみてほしい。1985年時点でレイ・チャールズの次に歌が上手いと思われていた…と言っても言い過ぎではないと思う。

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いずれにしても、”Just Once”でグラミーをかっさらった後、クインシーのバックアップの下、1983年の『It’s Your Night』で満を持してデビュー。マイケル・マクドナルドとの”Yah Mo B There”(こちらもグラミー獲得)やパティ・オースティンとの”How Do You Keep The Music Playing?”(”Baby Come To Me”も大ヒット!)などが当たり、”フゥー”という高音のファルセットがトレードマークになる。その後もアルバムではクインシー産で1986年の『Never Felt So Good』、そして全米No.1の大ヒット・バラード”I Don’t Have A Heart”を含む『It’s Real』を1989年にリリースしている。”I Don’t Have A Heart”はトム・ベルのプロデュース、アラン・リッチとジャド・フリーマン作の素晴らしい楽曲。アラン・リッチはチャーリー・リッチの息子とは別人、以前はホームページに沢山デモを載せていた記憶がある(https://www.allanrichsongs.com)。

 

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さて、最高のベスト盤は…というと1991年の『The Best Of James Ingram The Power of Great Music』でしょう。企画曲も余すところ無く収録し、今聴いても最高のプロダクション、音には普遍性がある。リンダ・ロンシュタットとの”Somewhere Out There”(バリー・マンと、タイタニックのテーマで知られるジェイムズ・ホーナーの共作)やバリー・マンのシンガーソングライター的気質が出た”There’s No Easy Way”もある。バリー・マンのセプター盤をプロデュースしたスティーヴ・タイレル(90年代以降ジャズ歌手として大当たりする)の曲もあるし、”Just Once”でキーボードを弾いていたデヴィッド・フォスターの”Whatever We Imagine”もある。つまり、バリー・マンクインシー・ジョーンズデヴィッド・フォスターというソウル・ミュージックの白人的洗練を経たアメリカン・ミュージックの王道を具現できたシンガーがジェイムス・イングラムだった、ということ。そう考えると、エボニー&アイボリーな理想の音楽を体現したはずの”We Are The World”でトリをレイ・チャールズと分け合った理由もおのずと理解できるような。

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しかし、その後ジェイムスのようなソウル歌手はアメリカではR&B・ヒップホップの台頭で姿を消す。エボニー&アイボリーな理想の音楽もその実、白人におもねったメロディアスなものではないか…そうみなされたからではないかと思っている。80年代に飛ぶ鳥を落とす勢いだった彼のオリジナル・アルバムが、以後1993年の『Always You』と2008年の『Stand(In The Light)』だけだった…というのは悲しい気がしなくもない。ヒット曲の(原曲に忠実な)ニュー・ヴァージョンも含む1999年のベスト盤『Forever More(Love Songs, Hits & Duets)』にソウル・ミュージックの良い所を受け継いだR&B世代のヒット・メイカー、R.ケリーの”I Believe I Can Fly”がしっかり入っていたことには感心した。他にも、奇しくも昨年末亡くなったナンシー・ウィルソンとのデュエットや、デヴィッド・フォスターが手がけたドリー・パートンとのデュエット”The Day I Fall In Love”も含まれていた。どっしりとした唄を歌えるソウル歌手がとんと見当たらなくなったようにも思える現代、彼を埋もれさせるのは惜しい。残された作品を聴きつつ偲びたい。

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