*[45s] Brooks Arthur / Mary’s Laugh Makes Me Cry / The Doll With The Broken Heart ( Kapp / 1963 )
「45s」なんていうタグをつけて、手に取った45回転シングル盤を聴いていこうかと。
これはブルックス・アーサーが1960~63年に3枚出しているシングルのうちの3枚目で、1963年にKAPPからリリースされた「Mary’s Laugh Makes Me Cry / The Doll With The Broken Heart」。アメリカのポピュラー音楽シーンの大物裏方エンジニアとして知られる彼だけれど、例にもれず当初は歌手志望だった模様。本名はアーノルド・ブロスキーだから、名前からすると東方ユダヤ系。音楽業界は偏見抜きでユダヤ系ばかりなんですが、アメリカではこういう分かり易い芸名をつけるのが定番。ボブ・ディランだってそうだった。ファーストシングルはバリー・マンやジャック・ケラーが手掛けたブリル・ビルディング物だったけれど、今作はブルックス自身の手も入り自作自演の色がある。もちろん音は甘いアメリカン・ポップス系でどちらも和むバラード。ブルックスというと、個人的には60~70年代レコのエンジニア・クレジットでよく見る人というイメージ。自身の名を冠したブルックス・アーサー・アンサンブルの盤もソフトロックの文脈で聴いていた。1967年に彼が作ったセンチュリー・サウンド・スタジオはグレイトフル・デッド、ヴァン・モリスン、ビリー・ヴェラ&ジュディ・クレイ、ドーン、メリサ・マンチェスター…とヒットを連発。で、1970年にフィル・ラモーンのA&Rレコーディングスのサテライト・スタジオにブルックスの命名した914サウンド・スタジオが選ばれると、そこからはブルース・スプリングスティーン、ラウドン・ウェインライトⅢ世、ジャニス・イアン、メラニー、ラモーンズ、トム・ラップなどなど、名作が世に送り出されることになる。ちなみにポール・サイモンやビリー・ジョエルの仕事で知られるフィル・ラモーンの弟子筋に当たるのが、いまだ現役大活躍中のボブ・ラドウィッグ。