/ ゴールデン☆ベスト〜40th Anniversary Edition〜( Sony /2012 )
年の暮れも押し迫り。今年もレコード買ったなぁ、という一年。時代は悪くなる一方なんだけれど、そう言う年ほどレコードの世界に逃げ出したくなる傾向にあって。ディラン言うところの”shelter from the storm”なのだろう。
昨日は久々に聖地お茶の水を巡礼。”聖地”というのもレコード・楽器・古本という三拍子が揃っているからで。もしお茶の水に住んでいたら大変なことになる、と思った。6時間くらい無心になって放浪したが飽きることはない。ここにいると、本もレコードもこの世から無くなることはないな、と思う。古本屋も若いお客さんがかなり多かったし。ところでご存じの方も多いと思うが、お茶の水ユニオンには音楽本専門コーナーがある。新宿にも今年オープンしたが、セレクトショップの趣きで、探している本がよく見つかり重宝している。古本の街だからか、もともとユニオン神保町店(今はクラシック中心になっている)には音楽に関する古本が揃っていた。「ブックユニオン」はそのコンセプトを発展させたモノだろう。今年は『音楽の本の本』なんていう本が出て、音楽本を10年くらいコツコツ集めている身としてはしてやられたと思ったけれど、自分好みの本は少なかった。つくづくクラシックがダメなんだな、と思う。
ちなみに昨日のアタリは音楽とは関係ないけれど、某書店で昭和40年代のデッドストック(といってもホコリ・カビまみれ)が5冊ほど出ていたSM王、団鬼六のエッセイ『鬼六談義』。300円ながら抜群の内容。高校教師を経てSM作家になったと初めて知る。
さて。ゴールデン☆ベストってのも相当数のカタログが出てますね。昔を懐かしむ人から、新しい音楽に触れる人まで、なかなか好編集のものも多い。最近じゃ、期間限定999円シリーズなんてのも出ていて。中山ラビさんあたりを私は押さえましたが、センチメンタル・シティ・ロマンスなんかも個性的な編集なので是非聴いてみて欲しい。
こちらのゴールデン☆ベストは出たばかりの伊藤銀次デビュー40周年記念の2枚組(流石に999円ではありません…)。数年前の紙ジャケの再発シリーズもボーナストラック入りで最高に良かったけれど、今回は新曲入り、全レーベル網羅ってことでこれまたキャリアを総括する素晴らしい仕上がりだった。山下達郎の4枚組『オーパス』に匹敵する満足感。両者共に音源殆ど持っていても買い、というレベルで。音も良いしね。
この人も本当に音楽の虫、なんですな。大好きなブリティッシュ・ビートやスワンピーな音楽への愛情を素直に表現している。コレはキャリアを通じて共通している。マニアックな音楽愛全開で。70年代のナイアガラ・トライアングル前後は「早すぎた」時代だったけれど、80〜90年代は佐野元春のバックやイカ天審査員、プロデュース・ワークを通じて、時代とも共振した。一言で言ってポップそのもの。作詞家としても、シュガーベイブものも含め、コピー・ライター的センスを感じられる。ボーカルもかつては弱さを感じたこともあったけれど、ごまのはえ時代を含めてくっきりリマスターされた音でこうして聴いていると、実に心地良い。ごまのはえ音源も、今までベルウッドの編集盤などで聴いてはいたけれど、余りに良いので改めて春一番のものも含めて自分的に全曲集を作ってみたくなった。
ボーナス・トラックがまた最高で。特に、「笑っていいとも」のテーマ”ウキウキWATCHING”のセルフカバーは思わず5回リピートしてしまった。今年の10月に武蔵小山のアゲインで録音されたアクースティックなセルフカバーなんだけど(2ヶ月でリリースって凄いですね…)、ボーカルも含めて実に良い雰囲気。アクースティックな近年のライブツアー、行かなきゃですね、すみません、という感じで。しかもパーカッション&ミックスは安部徹さん!杉真理や村田和人、チューリップ、そして仲良しのフォーク歌手松田亜世くんの作品でもお馴染みのビートリーなエンジニアさん。個人的にもかつて色々とお世話になりました。
そんな懐かしい出会いもありつつ、楽しめたベスト盤。コレは買いでしょう。ファーストと同じシチュエーションのジャケもGOOD!!
P.S. ”ウキウキWATCHING”を聴いていたら、今は亡きカメラのさくらやのテーマ”ハートでさくらや”( 作詞:伊藤アキラ、作曲:小杉保夫)のサビと酷似していることに気付く。調べると、”ハートでさくらや”を意識した、とか書いてる人がいたけれど、逆じゃないかな?”ウキウキWATCHING”が先なのでは?詳しい方がいたら教えて下さい。ただ、カメラのさくらやが「笑っていいとも」のスポンサーだったという話もあり、意図的なメロディ流用なのかもしれないですな。まあパクリ云々の不毛な議論は意味をなさないので、そんな所も含めて、実に「ポップ」な作品だったと思うわけで。