/ イナカ者のカラ元気 ( MODERN MUSIC / 2009 )
最近惹かれて仕方ないのが友川かずき。以前から気になっていた人なのだけれど、高田渡が亡くなった今、この人こそ神様なのではないかとさえ思えている。26日に今年の行き納めのワンマンに行く予定でいて。なんでもヴィンセント・ムーン監督が友川を撮った映画『花々の過失』がコペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭で音楽ドキュメンタリー部門 SOUND AND VISION AWARD を受賞したというではないか。
今年出た新作は『花々の過失』に次ぐ弾き語り盤。知らぬ間にエレアコの音にはなっている。割と地味な作品かもしれないが、スタジオ盤としては途轍もない大傑作と確信した。
スタジオ盤としては、と言ったのは、ライブにより衝撃を受けたから。奇跡のパンク・フォーク”生きてるって言ってみろ”はもちろんとして、名競輪選手滝澤正光様を賛美した”夢のラップもういっちょ”の怪演といい、スタジオ盤より歌いこまれた鬼気迫るライブが光っている人。だから、スタジオ盤を聴くと、トーンダウンする場合が多かったから。たぶん、キッカリしたリズムより、詩情の高まりによるリズムの強弱がある弾き語りに、よりフィットした音楽性だからなのだろう。
でも本作は違う。涙したのが激烈なM-2”三種川”、秋田弁のM-3”イナカ者のカラ元気”、激しく美しいM-4”夢の総量”の連なり。胸が一杯になってしまった。なんなんだろう。人間の弱さや汚さや理性に押しつぶされた怨念を解放した音楽。過激だと敬遠する人もいるけれど、私にはとても自然で正直な音楽だと思えて、救われた気になる。私の奥さんが友川と同じ秋田出身ということもあるのか、秋田の風土を知れば知るほど魅力が増す。秋田の故郷の味は「ハタハタ」。M-9”ハタハタのうた”は室生犀星の詩だ。室生犀星は私の両親をはじめとしたルーツの地である石川県金沢市の出身。こんな唄でアルバムを閉じている所に、実に個人的な運命を感じてしまった自分が居る。