なかなか良いコンピ。有名曲の意外なオリジナルヴァージョンを集めたもの。オールディーズファン御用達のエースより。個人的にはマーク・ジェイムス版M-2”Suspicious Minds”が聴きたかった。ライナーによると、セプター・レコードよりチップス・モーマンのプロデュースでリリースされたもので、クレジットの“Francis Zambon”とはジェイムスの本名らしい。エルヴィス版も同じスタジオで同布陣で録られたもので、アレンジは近い。他にも、ジェイムス・ブラウンの「I Feel Good〜」知られる”I Got You”のオリジナル、イヴォンヌ・フェアの”I Found You”とか、マインドベンダーズ”A Groovy Kind of Love”のダイアン&アニータ版、”Go Now”のベッシー・バンクス版、”This Diamond Ring”のサミー・アンブローズ版とか、痒いところに手が届く感じで。
フォーク系では”Ruby, Don’t Take Your Love To Town”のジョニー・ダレル版(ケニー・ロジャーズ&ザ・ファースト・エディション版に比べてアレンジが保守的で、ヒットしなかったのも当然かと)、キンググストン・トリオ版”Let’s Get Together”、イアン&シルビア版”You Were On My Mind”なんかも。リーヴスの”Hey Joe, Where You Gonna Go”も改めて聴くとやっぱりカッコイイ。
そうそう、シナトラ親娘や大滝&まりやも歌った”Something Stupid”のカーソン&ゲイル版を収録しているが、このオリジナルは正直知らなかった。しかもこれを作って歌うC カーソン・パークスはあのヴァン・ダイク・パークスの兄なのだとか。ちょっとこのLP欲しいかも。さらに、ロックンロールのルーツと目されているビル・ヘイリー&ヒス・コメッツの”Rock Around The Clock”。確かに、大衆の支持を得て認知されたロックンロールという点で言えばヘイリー版がオリジナルと言って差し支えないのかもしれないけれど、楽曲としてサニー・デイ&ザ・ナイツ版M-26が先んじていたとは。
他にも、有名なところではM-4”I Fought The Row”のクリケッツ版(ソニー・カーティスの作ですな)、レインドロップスのM-6”Hanky Panky”、ジョン.D.ラウダーミルクのM-10”Tabacco Road”とか。”ルイ・ルイ”だってキングスメン版がオリジナルだと思い込んでいたけれど、1957年にリリースされたリチャード・ベリー&ザ・ファラオスによるR&Bソングだったとは。全くもって驚かされる。色々勉強になると同時に、ヒットしなかったオリジナルヴァージョンの「何故」を考えてみることでヒット哲学にまで思索が及ぶ盤。