/ パリ II ( Vertigo / 1971)
加橋かつみ。沢田“ジュリー”研二と並び、“トッポ”としてタイガースの二枚看板を背負ってきた人。解散後は、沢田と比して完全にオールディーズ・サーキットの人になってしまっているのが惜しい。朗々とした澄んだテナーは今も健在なわけだし。
さて、60年代後半から70年代初頭にかけてのヨーロピアンテイスト一杯の3部作は必聴。"花の首飾り"の世界観を推し進めたような感触。加橋がロックの最前線にいた時期の貴重な3枚だ。今回はそのうち、3枚目の『パリⅡ』を採りあげようかと。手元にあるのは2006年に紙ジャケ再発された時のものだが、時折取り出して聴いている。と言うのも、この盤、裏ガロ盤なのだ。日本版ヘアーで共演したこともあってか、デビュー前のガロの堀内麻九(マークこと護)と日高富明(トミー)が12曲中5曲をサポート。まずはその5曲に着目しよう。
クレジットはないけれど、日高作A-1”夕陽の空”のイントロを聴くと、あの聞き覚えのあるD-45の音色が飛び出してくる。オーケストレーションも入って、淡い感傷を残す実に素晴らしい楽曲。さらに、A-3”水色の世界”はもちろんガロ版で知られている名曲。マークの繊細なボーカルとは又違い、加橋が歌うと演劇的な要素が入ってきて、スタンダードの風情。さらに、A-5”この広い世界”は加橋の詞に堀内が曲を付けたものだが、Aメロは後に発表されるガロの名曲”涙はいらない”のAメロであることに気付く。所謂習作ということになるのだが、これはこれで良い曲。A-6”ある夏の終りに”はムーディな佳曲。加橋詞、トミー曲だが、トミーはソロでも大橋一枝の詞で”夏の終り”という曲をリリースしている。B-3”貴方がいなくなった”は加橋の詞、堀内の曲。喪失感を感じさせるミディアムだが、サビがGS風。ガロはアクースティックGSだったんだと思う。そしてアルフィーはデビュー当時同じ事務所の跡継ぎだったわけで。
他には、森本太郎作曲のM-10”ひとり”が歌謡曲風の楽曲ながら、ガロのメンバーの演奏と思われる達者なアコギを聴かせているのがなかなか。さらに、ガロがバックバンドを務めていたムッシュ作のB-3”僕の心の底深く”もアコギとエレキのバランスが悪くない。ガロのメンバーがギターを演奏していると思われる。もちろん加橋自身の作ったA-4”Make It Go Away”の絶望的なタッチも嫌いではない。ロックファンは聴かず嫌いにならないで欲しい作。美意識を追求した陶酔感も、同世代の作家の楽曲を中心に、絶妙なバランスでロック足り得ている。