/ Energy (Monument PZ-34182 /1976)
アイドル的な人気を誇ったポップ歌手Tommy Roeの70年代の目立たないレコード。Tommy Roeは60年代にはビートルズに先駆けて、バディ・ホリーばりの大変ポップなロックチューンを生み出していた。優れたソングライターでもある彼の3コードの楽曲は1961年にレコーディングされたあの”Sheila”―バディの歌唱法をなぞっている―にしても、”Sweet Pea”、”Dizzy”にしてもワンパターンでありながら、楽曲の優れたポップさが時代を超えた普遍性を持っており、そのためか70年代初頭まで生き残った。70年代初頭にはSteve Barriのプロデュースの下、”Heather Honey”、などの名曲、またMOR好盤”We Can Make Music”を残している。一方、Curt Boettcherが凝り過ぎてしまったアルバム”It’s Now Winter’s Day”は、ミレニウム再評価の恩恵を受けて90年代になって再び脚光を浴びることにもなった。
本作A面は全部他人の作。70年代半ばのディスコエラを反映してか、冒頭”Drop a Little Rock”は軽く踊れる雰囲気だがいい曲。これは元Eternity’s ChildrenのBruce Blackmanが結成したStarbuckのカバー。A-2はDennis Linde曲だがこれもまたサビの女性コーラスと混ざり合うリフレインがすぐ耳になじむ、Tommy Roe的、な仕上がり。A-3はMentor Williams-Troy Sealsの”Slow Dancing”。 J.Tempchinの名曲とは同名異曲だが、メロウAORとしても聴けるいい出来。A-4はBob Morrisonのカントリータッチの楽曲でA-3との落差は無視できないが、ポップな仕上がりで聴けば聴くほどTommy Roe。B-1のタイトル曲もBob Morrisonのもので、ファニーなシンセサイザーが絡んでバブルガムポップ健在を印象付ける。他はTommy Roeの自作だが、これがMOR、カントリーポップ、ロック風と実に玉石混交。平凡といってしまえばそれまでで、前半までは70点だったのがここで50点に。少々残念だが、レコーディングキャリア最晩年と考えれば致し方ない。ちなみにプロデュースはデビュー時と同じFelton Jarvis。