CDからアナログへ。いまじわじわブームだとかいうミクロな観点よりも、情報の価値がほぼゼロになったことが大きいと思われる。YouTubeで音源自体はいくらでもタダで聴ける。リッピングすれば済むプラスチックのカタマリには握手券でも付けない限り売れない時代になったということだ。そんなこんなで、アナログの魅力はブツの魅力ということになる。欧米ではダウンロードに対して近年では「フィジカル」と表記されているけれど。この物神崇拝には抗えない。さらに、ターンテーブルの前で腰を据えて聴くという行為にも、音楽の神聖性を高める何かがある。
ディスクユニオンみたいな大手中古レコードチェーンでも、一昔前はCDのレア盤買い取りに精を上げていたけれど、最近はもっぱらレコードという印象。特に英米のオリジナル盤、初期マトリクスが追求されている。単純に音が良い場合が多いからその不変の人気は当然だと思う。
てなわけで、私もCDからレコードへと推移している昨今。場所を取るCDのプラケースは買ったらまず捨てて、省スペース化を図っている。数えたことはないけれど5〜6千枚はあるだろうCDケースを思い切って潰したのだが、コレ、結構大変でした(2年かかりました)。どうでもいいやつは100均のビニールケース+CD用ビニールカバー(いわゆる外袋)を利用して。色々試行錯誤して辿りついたこの方法だと、1枚のCDケースの厚みで5枚くらいは収納できた。2枚組や3枚組もどんどん潰す。大切なCDは定評あるフラッシュディスクランチのCDソフトケースに入れて(http://cdsoftcase.com/contents/products/)。フラッシュのものは10年くらい前から使っているが、全く痛むことがない良品で、この分野では最高峰だ。
100均の両面にCDが入るビニールケース。ブックレットの端がはみ出さないタイプのものが良い。
ディスク、表・裏ジャケを投入。
ビニールカバー(外袋)にラベルを貼って、完成。無理すれば4〜6枚は入る。
そんなわけで…信じられないくらいぽっかりと空いたスペースをその後占拠したのがLPや45回転の類というわけ。CDで持っているものもLPでずいぶん買い換えました。ルールはなるべく日本盤を買わないこと(歌詞やブックレットのぶん厚みがあり、音もあまり良くないものが多い。60年代だと盤起こしとかもあるし。)、音の太いアメリカ盤・オリジナルを中心に買うこと。そして盤質には一切こだわらないこと。どうせ一生で三度も聴かないレコードも沢山あるわけだし…一期一会で。
そんな風なルールで今年は日本でも海外からも色々買った。休日の昼飯はお米と納豆だけにしてですね…盤質が悪ければレア盤でも2ドルとか、それくらいですから。円安はかなり痛かったけれど。
ということで、このクレイジー・キャディラックスも今年入手した嬉しいオリジナル盤。盤は悪いけど、音は良かった!アップテンポから必殺”Gloria”のようなバラードまで…個人的にはドゥ・ワップの理想型かな。山下達郎と鈴木雅之がレコードセールで奪い合った盤、ていうエピソードが好きです。
ちなみにワーナーのマスターズ・ポップ・ベスト・コレクション1000のシリーズでも最近CD化されたけれど、そのライナーを読んでびっくり。このLPには他のグループの曲も混じっているんだとか。どれがそれかは詳細不明らしいけれど。シングル盤中心の時代にはありがちなインチキなエピソードだけど、ロックンロールなんぞベビーブーマー相手の音楽バブルだったわけですから、カネのためなら何でもありだったのでしょう。そして黒人アーティストですから、本作も、多くの曲がマネージャーのエッシャー・ナヴァロのクレジットになっていたり…搾取構造があったということか。しかしそんなことも本作の素晴らしさを減じさせることはない。ちなみにデジタルリマスタリングされた音も良かった!こんなCDだとやっぱり手が伸びてしまう。ちなみにその他には『The Paragons Meet The Jesters』や『The Dubs Meet The Shells』、あとは名コンピの『Rumble』を選んでみた。内容は最高。どれもかつての垂涎のレア盤、指をくわえて見ていた盤だから、嬉しかった。