/ CORNERSTONES 4( Universal / 2007 )
シング・ライク・トーキング。このバンドは高校生だった10年前によく聴いていた。平たく言えば洋楽大好き、って感じの職人的なバンドだったから、言い方は悪いけど地味な部分もあってそんなに大ヒットした、って印象は無いけれど、小田和正のコーラスをはじめ、レコーディングでいい仕事をしてきた玄人好みの人という印象がある。
そんな彼のシリーズ”CORNERSTONES”は徳永よりも先に演ってたカバーシリーズ。1作目はリアルタイムで聴いた記憶があるけれど、それ以降『3』あたりは棚を探したら持っていたけど、そんな熱心に聴いた記憶は無い。2007年の『4』を手にとってみた所、ジャパ・フォークのカバーがあるのが面白くて。こう言うのもルーツだったのね、という。チャゲアス”万里の河”にはじまり、村下孝蔵”初恋”(スティーリー・ダン的解釈を施した佐橋氏のアレンジは見事というほか無い)、伊勢正三(イルカ)の”雨の物語”(コレも和製AORの良い部分を掬えている)、さらにコテコテな所だと小椋佳(中村雅俊)の”俺たちの旅”(正統派カバーですな)、バンバン”「いちご白書」をもう一度”とかね。こういうのがあるとスピッツ”ロビンソン”なんてのは霞んじゃう。
調子に乗ってバラード・ベスト『静夜〜オムニバス・ラブソングス〜』(2008)を聴いてみると、”遠野物語”が入っていて唸ってしまう。コレ、飛行船というグループが歌っていた曲。オフコースとも親交があり、鈴木康博と”一億の夜をこえて”を共作している あんべ光俊が在籍していた。そのあんべをフィーチャーしてのカバーなんだけど、絶妙。ネバっこいしゃくりあげるボーカル・スタイルがソックリだから。そう言えば声似てたな、と一本取られた気分。
“遠野物語”を聞いて考えてみたけれど、日本のフォークでも好まれた旅情ものや望郷もの、さらにこの曲みたいなご当地もの、近年は消滅してしまいましたね。均質化なのか何なのか。地方に行けば判るけれど、都会と田舎という対立項はいまだ存在している。でも格差が広がりすぎちゃって、わざわざ都会まで出てきて田舎を持ち出そうとはしないってことなのかもな。故郷愛の押し売りってのも素敵なもので、悪くないんだけどね。カッコつけずに演ってみて欲しいな、と。