/ Smokey & Friends ( Verve / 2014 )
スモーキー・ロビンソン久々のオリジナル・アルバムが!出ることすら奇跡、というような年齢(74歳!)、しかも豪華ゲスト陣と歌い継ぐヒット曲の再演だなんて。誰も文句を言う人はいないでしょう。マイケル亡き後ですが、マイケルとフレディ・マーキュリーの未発表デュエットが出るだとか、ダイアナ・ロスが来るだとか、モータウン関係に再び光が当たる中で今回のリリース。もはやCDには目もくれない若い世代にアピールできているわけではないかもしれないが、例のモータウン1000円再発盤も、アルバム単位で集めると大変な盤が手軽に入手でき、ファンのさらなるディグには最適かな。
冒頭”The Tracks Of My Tears”(個人的にはスモーキーで一番好きな曲かも)はエルトン・ジョンがまず歌い出す。アタマからここだけ聴くとエルトンのアルバムだと思っちゃうかもしれないけれど、ゲストに全面的に委ねるそんな姿勢がそもそも本盤のスタイルかな。というか、元々マイケルを思わせるくらい中性的でか細い声の人だし、この年齢だから、ソロモン・バークやサム・ムーアの復帰作、みたいな迫力を期待する方が間違っているわけで。今回のバランスは良いのではないかな。ゲストも伝説のスモーキーと共演できるって事で力んでいるはずだし。
アレンジも変な現代性はそんなに無くて、それが逆に良かった。極めてキレイ目の音作りだけれど、生音重視で実にスムース。プロデュースはランディ・ジャクソン。ずっと流しておくだけで気持ち良いアルバムになりそう。エアロのスティーヴン・タイラーはジョン・レノンも大好きだった”You Really Got A Hold On Me”を、かつてモータウンものでは”How Sweet It Is(To Be Loved By You)”を大ヒットさせているジェイムス・テイラーは”Ain’t That Peculiar”(ジェイムス自身のギターやジム・ケルトナーのドラムスも入って、ちょっと毛色が違うトラックで面白い)、意外なシェリル・クロウとは”The Tears Of A Clown”を。メアリー・J・ブライジはAOR界隈でも人気の”Being With You”を演っていたり。そうそう、本作であのジョン・レジェンドと歌っている”Quiet Storm”だけれど、かくいうワタクシ、かつて深夜のFMの定番ジャンルの名前だと長らく思っていた。元々スモーキーの曲名だと知ったときは驚いた。ヒップホップに駆逐される前の90年代R&Bにまで繋がるムーディー&スロウなミディアム・バラードの世界を切り開いたのもスモーキーだった、と言えなくもないのだな。いやー、そう思うと、60年代オリエンテッドな筋金入りのソウル・ファンから、クワイエット・ストーム世代まで、幅広く受け入れられるんじゃないかな。
ジェシー・Jがスモーキー愛を露わにしたコメントで始まる”Cruisin’”だとか、ゲイリー・バーロウとの”Get Ready”とか、必殺”My Girl”(ジョン・メイヤーがソロを弾いている)もあるし、今のビルボードのポップチャートに、またこんなヒューマンなソウルが戻ってこないかな?なんて夢想してみたり。四つ打ちのパーティ・ソングは流石に飽きたなぁ。