/ A Time To Remember (ABC/Dunhill Records DS 50092 /1970)
今年2013年の3月に惜しくも亡くなったヒュー・マックラケンの初期ワークの一つ。全曲のアレンジをアーティ・コーンフェルドと共に手がけている。楽曲自体はカントリー・テイストのものが多い中、ジャズ・ロック的なダイナミズムを持ったサウンドに作り上げているところが彼の功績と考えるべきか。細かいクレジットはないのだが、エレキ、アコギ、共に弾いていると考えられる。
ヒューと言えば、スティーリー・ダンからポール・サイモン、アート・ガーファンクル、ビリー・ジョエル、ジェイムス・テイラー、ボブ・ディラン、ホール&オーツ、ロバータ・フラック、ヴァン・モリソン、ローラ・ニーロ…などといった大物ミュージシャンと仕事をしてきた人だけれど、ビートルズの二人、ポール・マッカートニー&ジョン・レノンとの仕事はとりわけ印象的だ。そんな未来を占うかのように、”A Day In The Life”みたいなイントロからスタートしたりするこのアルバム。殆どアーティの自作の中に”Mccracken’s Cut”なんていう、ヒュー自作のごく短い楽曲も含まれているけれど、それはホワイト・アルバムやヒューが関わったポールのラムみたいな世界観の小曲だった。
個人的には、70年代のポップ・サウンドの王道を展開していくダンヒルものは外さず聴いているので、そう言った感覚で聴いてしまったが、聴き進めていく内に、雑多なヒッピー風味のフラワー・ロックながら、ポップな味付けが耳を惹いた。ニール・ヤングの”Helpless”のポップ・スワンピーなカバーもあったりと。そして、B面ラスト一つ前の”Des Moines Iowa Variety Show”がなんとも、ジョン・レノンの” Whatever Gets You Thru The Night”なんかを思わせる(コレにはヒューは参加していないけれど)ゴキゲンなロックンロールで、さり気ないバッキングのギターも冴えていた。ラストの”Rock’n Roll Is Here To Stay”のゴスペル風カバーは、女声コーラス隊にメインを任せた、フィル・スペクターが最後に演りそうなやっつけ的セッション。
そうそう、主役のアーティ・コーンフェルドだけれど、若くしてキャピトルのプロデューサーとなり、後にウッドストックのプロモーターの一人となった人物。大学時代にママス&ザ・パパスのキャス・エリオットと出会っている。ジャン&ディーンの”Deadman’s Curve”の共作者(ブライアン・ウィルソン、ロジャー・クリスチャン、ジャン・ベリーと共に)、(牛も知ってる)カウシルズのプロデューサー、ダスティ・スプリングフィールドへの楽曲提供などでも知られている。後年はウッドストックの語り部として活躍しているようだ。