/ Hobo’s Concerts<ロック編>
1974年開催の音楽イベント「ホーボーズ・コンサート」よりいわゆるティンパン・アレー系のミュージシャンの演奏を抜いたもの。こうしたコンピでは、大抵どうでもいい(と言っては失礼だが)演奏も収められていたりするものだが、本盤はどれも貴重な音源ばかり!
「こんばんは」の一言と共に綺麗なピアノ弾き語りを聴かせる南佳孝はデビュー間もない頃。John Lennonの”Mother”を下敷きにしたM-1”ほら見てごらん”と北海道に行った経験を歌にしたというM-3”はばたく鳥のように”は『摩天楼のヒロイン』(松本隆プロデュース、1973年)未収録。演奏間のトークも初々しいが、この個性に時代はまだついていけていなかった。布谷文夫&ココナツバンクス名義のM-4”冷たい女”はなかなかスワンピー。しかもM-5”深南部牛追い唄〜大阪へやって来た”は、後半には友部正人の名曲の新解釈が織り込まれていてむしろそっちが面白い。小坂忠は葡萄畑をバックにつけてM-6”ルイジアナ・ママ”とM-7”機関車”を歌っているわけだが、ボーカルの安定感はさすが。まあ名盤『もっともっと』で聴けるティンパンのサポートには及ばず。ちなみにいつか紹介しようと思っているが、小坂忠2004年の『き・み・は・す・ば・ら・し・い』は、ゴスペル作だからか敬遠されている節があるが、全編通してアコギ好きならとろけてしまう程。最高傑作といっても良い出来。70年代作より音質もいいし。そして、センチメンタル・シティ・ロマンスはデビュー前ということになるだろうか。M-8”小童”、M-9”かげろう”の内、前者は細野晴臣が後見人となったファーストより、後者は後に20周年記念ライブ盤に収められた。2曲ともアクースティックに聴かせる。後者のCS&Nを思わせるコーラスが特に素晴らしい。最後に一番の聴き物は、細野晴臣のおそらくギブスンJ-45での弾き語り3曲!!名盤『HOSONO HOUSE』収録曲よりM-10”冬越え”、M-11”住所不定無職低収入”、M-12”ありがとう”。いやはや、畳み掛ける名演!ギタープレイ、コードはソロ演奏用にアレンジされている(実にベーシストらしいギターフレーズがいい)。歌声にも深みがあり、この時弾き語りSSWとして高い次元に達していたのだと気づかされる。ただし、マイク録り故かノイズが入るのが惜しい。