/ Taking Care Of Business ( Capitol / 1970 )
ジェイムス・コットンと言うと、ファンキー・ブルーズな大名盤『100% Cotton』(綿花畑発のブルーズを思うと最高のタイトル!)にトドメをさすブルーズメン。マディ・ウォーターズのバックでブルーズ・ハープを弾いて名をあげた。そのCDが既に廃盤になっているせいか、LPも割と易くない印象がある。まあ聴くならLPのぶっとい音でしょう。ギタリストは映画『ブルース・ブラザーズ』でもお馴染みのマット・マーフィーと一緒、ってな印象。現在は喉頭ガンで歌うことは難しいようだけれど、当時の音盤はもちろんソウルフルな喉も堪能できる。
さてこちらの『Taking Care Of Business』は正直全く今までスルーしてきた盤。なぜかと考えると、黒いブルーズと白いロックのクロスオーバー盤だったがゆえ、どちらのファンにも敬遠されたためじゃないかな?しかし、トッド・ラングレンとマーク”ムーギー”クリングマンのプロデュース盤で、ジョー・ママ(ダニー・クーチ)作の”The Sky Is Falling”でスタートするこの盤、今の時代なら、なんら抵抗も無く聴ける素晴らしい作品!トッドとマーク”ムーギー”・クリングマンはユートピアの創設メンバー。ブルーズと関わりがなさそうに思えるけれど、ムーギーなんかはキャリア初期を見ると、ジミヘンと同じバンドにいたりとブルーズ・ロックにどっぷりだった人。ジョニー・ウィンター1973年の大名盤『Still Alive And Well』にもトッドと共に参加していた。そう、そのジョニー・ウィンターも本作の2曲でギターを弾いている(マディの”She Moves Me”では渋いアクースティックを)。
トッド・ラングレンはほとんどの曲でギターをプレイ。ドラムスを叩いた”Can’t Live Without Love”もあるし、コーラスにも加わったりと八面六臂。”Kiddy Boy”はトッドの曲。マーク”ムーギー”クリングマンはピアノ、オルガンをプレイ。”I’m A Free Man”と”Tonight I Wanna Love me A Stranger”の2曲は彼の楽曲提供。後者はトッドとの共作で、マーク1972年のセカンドアルバムにも収録されている。多くの曲で鋭いギターを聴かせてくれるのはマット・マーフィー!ホワイト・ブルーズの雄、マイク・ブルームフィールドも一聴して彼のものとわかるギターを3曲で披露。そうそう、リトル・フィートのリッチー・ヘイワードが3曲でドラムを叩いていたり。いずれも(当時の)若い白人ミュージシャンが一生懸命40間近のジェイムスを支えている。ここからは一つの音楽スタイルとして成熟したロックのルーツとして尊敬を一身に受けていた、当時のブルーズの立ち位置が良くわかる。あと、トッド人脈で言うと、トッドがプロデュースしたグレイト・スペックルド・バード(イアン&シルヴィア)のドラマー、N.D.スマートが叩いていたり、トッドのアルバムにも参加しているベーシスト、ステュ・ウッズが弾いていたり。
あと、ムーギーがキャリアの初期に大きい影響を受けたのはエレクトリック化したボブ・ディラン!そのディラン曲”Long Distance Operator”も取り上げている。ディランと言えば、後にムーギーがプロデュースしたベット・ミドラーのアルバム『Songs For The New Depression』(1976)でベットとディランのデュエット(”Buckets Of Rain”)を実現させている。ベットとムーギーと言えば”Friends”がやっぱり良いね!
ちなみにジェイムスの代名詞とも言える『100% Cotton』のリリースは本番に次ぐ1974年のこと(Buddhaより)。確かにホンモノ『100% Cotton』には叶わないけれど、若者がリアルなブルーズに触れられた熱気が伝わってくる盤かな。
↓コレは凄いムーギーのディスコグラフィー
http://users.skynet.be/rockofages/Moogyklingman/