/ Fancy Dancer ( Elektra 75060 / 1973 )
やっとゴールデン・ウィークに入りました。やっと腰を落ち着けてレコードが聴けるなと。さて、朝からDelaney & Bonnie & Friends『On Tour With Eric Clapton』なんていう熱い代物を大音響で聴いていたもので、次に取り出したのはこちら。Pete Carrプロデュースのマッスル・ショールズ録音でDavid Hood、Jimmy Johnson、Roger Howkins、Barry Beckettというお馴染みのリズム隊が参加しているが、まったく黒っぽさやスワンピーな要素はない。それがクレジット買いのリスナーから軽んじられる結果に繋がっているのだろうけれど、SSWのファンにはそれなりに知られた作。タイトル曲など、同じくマッスルショールズ録音のArt Garfunkelの大名盤『Watermark』(1977)のクールで消え入りそうな雰囲気に似ていると思うのは私だけだろうか。
冒頭のしっとりとしたピアノ曲A-1”Make It Good & Make It Last”から、ソフトな歌声が染み渡る。ストリングスも実に良い感じ。Gulliver時代のDaryl Hallと両看板を張っていたTim Mooreのソロなんかと同じ感触だ。A-2”You’re Not There”はビートリーな感触もある、軽快なカントリー・ロック。
個人的に堪らなく好きなのがA-3”Homecoming”というわけで。ストリングスとピアノのバランスがSSWもののツボを突いてくる。アクースティックなA-4”You Don’t Grow Old”は幻想的ですらある。
裏を返すとシングルが切られたポップなB-1”It’s All Over”に始まり。分厚いストリングスに彩られたバラードB-2”Sad Thing”やSailcat時代の雰囲気も感じさせるブギB-3”Oh, Little Darlin’”、ジャジーで小粋なバラードB-4”Alabama Smile”、これまた幻想的でふんわりとしたバラードB-5”Spftly Saying”を含んでいる。
さて、本作の主人公Courtland Pickettだけれど、Duane & Gregg Allman兄弟に小さいときから目を付けられていて、Pete Carrに紹介されたことから音楽への道が開けたようだ。1972年にはJohn D. Wykerと組んだサザン・ロック・デュオSailcatとして”Motorcycle Mama”のヒットを生み、アルバムもリリース。人気番組アメリカン・バンドスタンドにも出演するという栄誉に恵まれている。