/ Same ( RCA 10001 / 1974 )
まろやかなカントリーロックサウンド、ディグビー・リチャーズのアメリカにおけるおそらくファーストLPだ。ラリー・マレイのプロデュース作はやはりハズレなし。この盤に関して、飛びぬけた曲は正直無いがとにかく安心して聴ける内容。この頃ラリーはジャクソン・ブラウンの弟、セヴェリン・ブラウンを手がけていた。M-1”New York City (Send My Baby Home)”はのどかなハーモニカと女性コーラスが心地よい。ジム・クロウチまでとは言わないが、深くしっかりとした歌声に好感。トロピカルなA-2”Be My Day”はラリー・マレイの作。心に沁みるA-3 ”You Can Lay My Mind At Rest”辺りで本領発揮。ラリーらしい感傷的な音。ちなみにこの盤、ギターはリチャード・ベネットにジョン・ベランド、ベースはジョー・オズボーン、ドラムスにはジム・ゴードン、ジム・ケルトナーら。ベン・キースやスニーキー・ピートもペダルスティールで好サポート。ストリングスアレンジには、ソフトなピアノSSWとしてソロ作を3枚残しているポール・パリッシュが。彼はラリー・マレイのソロ作にも参加していた。ビートルズやチャック・ベリー、さらに花のサンフランシスコなんかが歌詞に登場する”Rock’n Roll (I Gave You The Best Years Of My Life)”はオーストラリアのソングライター、ケヴィン・ジョンソン作だがディグビーの自伝的内容になっており、なかなかの曲。ビートルズ解散後、この頃ロックの歴史を振り返る余裕が生まれていた。B面は全てディグビーの自作。B-1カントリーポップ”If I Could Write A Love Song”も悪くないが、内省的なB-2”Be My Guitar”の方が好感触。オーストラリアでシングルヒットしたバラードB-3”A Little Piece Of Peace”はコーラスも良く、心に残る。この曲、本作の前にリリースされていた豪州盤LPのタイトル曲だったもの。再録音と思われる。ロックンロールのB-5”Do The Spunky Monkey”なんて曲もあった。ちなみにディグビーはオーストラリアのロックシーンのパイオニアとして1950年代から活動を続けていた人物(ディグ・リチャーズ)。お手の物だ。ラストに相応しいB-6"The Dancer"もいい。
ディグビーは1983年に癌で若くして世を去っている。