いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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ジョン・ブッチーノ(John Bucchino)のシングル

*[SSW] ジョン・ブッチーノ(John Bucchino)のシングル

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昨日ジミー・ハスケルのレーベルHorn Recordsからドン・グレイサーのアルバムを取り上げた。エルヴィス・プレスリー、リック・ネルソンからサイモン&ガーファンクルなど並みいる大物を手掛けたジミー・ハスケルネーム・バリューからすると、Horn Recordsは彼の自主レーベルといった地味な趣き。設立の1979年から1981年までに20枚余りのシングルやアルバムがリリースされているが、個人的に注目したいのはジョン・ブッチーノ(John Bucchino)のキャリア初期のシングルが3枚含まれていること。

Art Garfunkel - Grateful (Across America) - YouTube

ジョン・ブッチーノはアート・ガーファンクルが1996年にリリースしたベスト・ライブ集『The Very Best Of Art Garfunkel (Across America)』に新曲として収録されていた”Grateful”の作者として知られている。同ライブ盤はコロンビア/ソニーのリリースではなかったため、アートのキャリアを総括する2枚組ベスト『The Singer』に収録されなかったのは残念だったけれど、BMGから2000年にリリースされたジョン・ブッチーノ楽曲集『Grateful—The Song Of John Bucchino』のタイトルにもなった。

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この楽曲集は名歌手およびソングライターがブッチーノ楽曲を歌うという面白い企画盤で、アート・ガーファンクル、ジュディ・コリンズ、マイケル・ファインスタイン、ライザ・ミネリ、アマンダ・マクブルーム(ベット・ミドラーで知られる”The Rose”の作者)、ジミー・ウェッブら錚々たる面々が参加し、発売当時、良質の楽曲に飢えていたポップス・ファンが飛びついていた記憶がある。往年のミュージカルとビリー・ジョエルエルトン・ジョン直系のピアノマンの系譜をひく、彼の優美で抒情的な詞とメロディのマッチングは非常に格調高いものだ。

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いま手元にあるのはHorn Recordsからリリースされた3枚のシングルのうちの2枚、1980年のファースト・シングル” Love Doesn't Always Stick Around”と1981年のセカンド・シングル” Something As Simple”だ(サード・シングルの” You Say You Want To/T.V.”は未聴)。2枚どちらもA・B面とも同じ楽曲で、しかもプロモーション・コピーであることからすると、ほぼ市場には出回っていない可能性がある。しかしどちらもジミー・ハスケルのアレンジ&プロデュース。ジョン自身のマイルドな歌も聴くことができる。どちらのレコードも比較的綺麗な状態のレコードだったが、なぜかノイズがひどく、プレスミスの可能性も。2枚ともいわゆるAORの文脈で聴くことができる楽曲で、”Love Doesn't Always Stick Around”はソウルフルさもあるメロウなカントリー・ポップ。イングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリーの色もある。そしてほとばしる才能を感じさせるメランコリックなバラード” Something As Simple”には落涙を禁じ得なかった。後年アート・ガーファンクルが彼の楽曲を評価したことを思うと、『Scissors Cut』期のアートがカバーしていたら、ジョンのキャリアも違ったものとなっていたかもしれない。後半のストリングス・パートも素晴らしく、アートのファースト『Angel Clare』でジミー・ハスケルが大仰ともいえる感動的なストリングスを付けていたこととシンクロするのが不思議だ。ジョンは1985年にやっと初のアルバム『On The Arrow』をカセットでリリース。業界で名が通るのは、1987年に作曲家のスティーブン・シュワルツ(名ミュージカル『Godspell』、ディズニーのポカホンタスなど数多の作品を手掛けた)に見出されてからということになる。以後のソロキャリアにはまた次回触れてみたい。