*[ジャズ] Don Glaser / Don Glaser ( Horn Records / 1980 )
ラウンジっぽい小唄系ジャズ・ボーカルの中でも突出して出来の良い一枚。冒頭の”Strawberry Jam”から軽やかなエレピに導かれ、ボブ・ドロウやデイヴ・フリッシュバーグをさらに若々しくグルーヴィーにしたような夢のようなレコード。高速ジャズ・サンバの”San Diego”では一気に彼の世界に持っていかれてしまう。ドン・グレイサーはシングルを1968年、1978年に別レーベルから1枚ずつ出し、アルバムでは本作が唯一作となる。ラウンジ系ミュージシャンでレコーディング作が少ないというのはよくあること。とはいえアルバムがあっても大抵カバー中心。それらと比べてこのドン・グレイサーに驚いてしまうのは、ハマースタイン&カーンの”All The Things You Are”とコルトレーンの”Giant Steps”、を除いて、本人のオリジナルであること。ジャズ・シンガー・ソングライター的側面からも評価できる本作、いまだレコード店でそこそこの値がつくのはそんな理由だろう。
しかもバックはベースにレイ・ブラウン、ドラムスにシェリー・マン、フルート&サックスにビル・パーキンス、パーカッションはポウリーニョ・ダ・コスタ。カリフォルニアのローカル・レーベルになぜこんな大御所たちが?と思うが、そもそもHorn Recordsは名アレンジャーのジミー・ハスケルが立ち上げたレーベル。彼のお眼鏡にかなった才能のある若者たちにレコーディングの機会を与えたのではなかろうか。
Don Glaser Jazz Trio "Live at the Bitter End" - Don Glaser, Peter Traunmuller, Nate Brown - YouTube
ドン・グレイサーの近年の消息を調べてみたら、2017年のビター・エンドでのドン・グレイサー・トリオの演奏があった。2曲目にあの”Strawberry Jam”を演っている!