*[日本のフォーク・ロック] 平尾昌章 / 平尾とロック(KING / 1958)
日本のロカビリーの草分け的歌手であり、作曲家としても歌謡界の超大御所となった平尾昌章(のち昌晃)。彼のデビュー・アルバムは、1958年の10インチ『平尾とロック』。コレ、長年探していたけれど、遥か62年前、しかも10インチ(SPと同じサイズ)ということもあり数が無く、いずこでもエライ値がついてまして。それが先日たまたま某レコ屋チェーンにて1000円台で発見!とうとうレコ屋も『平尾とロック』の価値すらわからなくなったか…とほくそ笑んで帰宅(検盤はしない主義)。開けてみると、コンディションはDランクのボロ盤、しかもジャケは破損していて裏面の「ダイアナ」の歌詞の所だけ定規を当ててくり抜かれているという(笑)うーん、妥当かな。でも、自分がレコ屋ならコレでも3000円くらいは付けるな、とか思ったり。盤を磨いて、ジャケも汚れをふき取り補修して、いざ聴いてみる。
いいですね、改めて。”五木の子守歌ロック”には日本のポピュラー音楽のルーツが全て詰まっている。外来のビートに民謡的こぶしを交えて成立する歌謡性の絶妙なバランス。日本のフォークの売れ線も、80~90年代のBOØWYやB’zも、現代のback numberやヒゲダンも、形は違えど結局こぶしの歌謡曲(しかもその類しか日本では売れない)ってことを考えると、示唆に富んでいる。流行るドラマに、時代劇風に見得を切る「決めシーン」があるのと一緒かな。ジャケットも「MASAAKI HIRAO」は横書き、「平尾とロック」は縦書き。
初めてロカビリー期の平尾音源をCDで聴いたのは、1997年にP-Vineから出た『マーチャン大いに歌う』。これは素晴らしいコンピレーションだった。五木ひろしの”夜空”が生み出せた理由も理解できた。で、イギリスのリイシューレーベルBigBeatが2013年に画期的なコンピを世界発売するんですよね。Masaaki Hirao『Nippon Rock 'n' Roll: The Birth of Japanese Rokabirii 1958-1960』ってやつ。”Rokabirii” (ロカビリィ)ってのがいいですよね。しかも「MASAAKI HIRAO」が縦書きになっている。英語圏からすると、アルファベットを縦書きにすると日本ぽい、という発想ですね。コレ、23曲入りのCDと共に、10曲入りの10インチ形態もリリースされまして。滑らかな英語~日本語を巧みにチャンポンする彼のボーカリストとしての力量はワールドワイドなリスナーの耳に耐えうるもの。ちなみに『平尾とロック』のジャケ写をそのまま使っているけれど、地面につける足の角度がちょっと違っているという、どうでもいいことにも気が付きました。