いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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Walter Hawkins / Selah

*[ソウル] Walter Hawkins / Selah(Fantasy / 1972)

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60年代後半のロック・ミュージックが全盛を誇った時代に、ゴスペルをポップ・フィールドでヒットさせたのはエドウィン・ホーキンス・シンガーズ。誰もが知っている”Oh Happy Day”ですよね。リードを歌っていた女性ボーカリストで言えばドロシー・モリスン。1970年のブッダ盤はニュー・ソウルの時代の空気とも呼応した最高のポップ・ソウルだった。ちなみにビートルズの”Let It Be”やサイモン&ガーファンクルの”Bridge Over Troubled Water”も、ベトナム戦争の疲弊を癒さんとするそんな時代の流行に敏感に反応したものだった。

 

そのエドウィン・ホーキンスの兄、ウォルター・ホーキンスもメンバーの一人。彼が1972年にファンタジーからリリースしたソロ作『Selah』がこれまた素晴らしい盤で。先日たまたまレコ屋のゴスペルの棚で発見。ボーカルにダニエル・ホーキンス、ライネット・ホーキンスという名前を見つけて、ファミリー・ゴスペル・クワイアから発展したエドウィン・ホーキンス・シンガーズ絡みでは?と思ったらやはり、でした。この時代のファンタジーと言えば、CCR(クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル)。そのトム・フォガティ(ジョン・フォガティの兄)がプロデュースしているというのも驚きだった。名前を貸しただけかもしれないけれど。

 

楽曲とボーカル、そしてグルーヴィーなバッキングは素晴らしいの一言。クロスオーバーな時代の空気かゴスペル色は薄められていて、ソウル・ファンをも満足させる作りになっている。しかしロック色の強い”It Pays”に始まり、ニュー・ソウルな作りの”Train”やスムースな16ビートの”How Long”(泣きのギターソロはやヤバすぎる)なんて、80~90年代のトラックのように聴こえなくもない。極めつけは本作唯一のカバーだったジミー・ウェッブ/リチャード・ハリスの”MacArthur Park”。これはセンスが良い。ブラコン的な音作りが1972年にしてすでに完成されていたことに驚かされる。

 

ちなみにウォルターは弟のエドウィンに勝るとも劣らない作品をレリジャス・レーベルから数多くリリースしている。ポップ・フィールドではマイケル・ボルトン(1987年の『The Hunger』)やヴァン・モリスンと、ソウルではジェフリー・オズボーン(1986年の『Emotional』)など多くのアルバムで歌っている。