*[日本のフォーク・ロック] 小坂忠とフォージョーハーフ / ロック・ソサエティ・ウラワ1972 RSU夏の陣(ディスクユニオン / 2020)
年末感のない非日常が続いているけれど、非日常に慣れてしまうのもよろしくない。これが新しい日常ですなどと上から押し付けられるのはもっとよろしくないんですが。そういえば先日新たに手に入れたターンテーブル、オークション行きと相成り…決して悪くはなかったのだけれど、良くもなかったという。個々の部品がすごく軽くなってしまっていて、音もその分軽くて。ただブルートゥースもついていたし、現代的ニーズは満たしていた製品だったので、すぐに旅立っていきました。で、その代金を握りしめ、結局Technicsのド定番SL1200MK3を近所のリサイクルショップで購入。ヘッドシェルがついていたから、財政的にはカナリ助かった。大体どこでも中古だと2万円台半ばで売っている模様(後続機種はもうちょっと高い)。1989年製だけれど、かつての日本・松下電器製は素晴らしい。ダイレクトドライブの堅牢な作りで30年選手ながらビクともせず、音も半端なく良かった。お店のDJブースやレコ屋の視聴機が全部コレである理由が恥ずかしながら今更わかりました…ちょっと調べてみると、2010年にDJブームの終焉に伴いTechnicsブランドは生産終了になったものの、2015年に復活。ただ、現行のSL1200は市場価格15万くらいするみたいで…誰が買えるんだろう(笑)高利薄売ってことでしょうね。国産ではもはや、コスト的にこの手の作りのものがこの値段でしか出せない現状には落涙するほかない。ちなみにカートリッジはオーディオテクニカのAT-VM95Cが安い割に良い音で、国産優良メーカー流石!と思えました。
そんなこんなで、まだ入手していなかった小坂忠とフォージョーハーフの1972年8月26日・埼玉会館大ホールでの蔵出し音源を聴いている。ロック・ソサエティ・ウラワという未発表ライブ・アーカイブ、エンケン、ブレバタ、高田渡、湯川トーベンのいた神無月とか、気になる蔵出しが多くてずっと気になっていた。オープンリールが奇跡的に残っていたようだけれど、かつて浦和のみならず各地方にロックを愛し、地元にミュージシャンを呼ぼうとした若者達がいたことに胸が熱くなる。
コレ、LPで買う必要はないのかな、とも思ったけれど、なぜかLPを選んでしまった。でも音を聴いたら生々しいアナログの良さが出ていて驚いた。小坂忠とフォージョーハーフ、約1年間の活動の中で、ライブ音源として世に出た『もっともっと』とは違い、レコードにするための録音ではなかった分、熱をもったアンプから焦げた埃の匂いが漂ってくるかのような臨場感がある。小坂忠、駒沢裕城、林立夫、後藤次利、松任谷正隆という今思えばレジェンド級の布陣。駒沢のスティール・ギターがリード楽器の役割を果たしているのがとてもユニークだ。四畳半をもじったバンド名が、四畳半フォーク全盛時代へのささやかなアンチテーゼになっている。今聴くと、ポコとか、70年代前半のカントリー・ロックのレコードと共通する肌触りになっているのが面白い。商業性に足を突っ込む前のロックの純朴な感性に圧倒される。70年代の小坂忠に今なおジェイムス・テイラーのイメージが重ねられるのは、細野さんの”ありがとう”のイメージが強すぎるからだろう。『もっともっと』は1972年3月30日郵便貯金ホールの録音。本盤はその5か月後の演奏で、レパートリーは『もっともっと』収録曲マイナス2の8曲。林立夫さんの自伝『東京バックビート族』も最近読み、2018年のフォージョーハーフ再結成の映像も観たところだったので、重ねてじっくり味わえた。