ジャクソン・ファイブ〜ジャクソンズの三男ジャーメイン、1972年初のソロ・アルバム。スムースなボーカルやグループを脱退しての積極的なソロ活動を含めて、弟マイケル・ジャクソンのモデルとなったのではなかろうか。なかなか自己主張が強く、キツい性格なのか、トラブルの噂を色々聞く人でもある。モータウンのベリー・ゴーディの娘と結婚していた時期もあった。個人的には1976年の3枚目『My Name Is Jermaine』が結構好きで良く聴いていた。売れたであろう80年代の諸作よりも。
この初ソロ、アメ盤LPのむちゃくちゃ分厚いボール紙がまたたまんないですね。分厚いのにゲイトフォールドっていう。たいていこういう材質の盤は取り出し口と背が擦れまくっている。で、中身はというと、選曲が何よりも良過ぎる。まず冒頭ジョニー・ブリストル作の”That’s How Love Goes”が良く出来ている。ソウル界のアイドルたるジャクソン・ファイブの色が濃い、激ポップなベース・リフが最高で!それでいてレッドボーンの”Come And Get Your Love”のような胸をかきむしられるような切ない美メロ。70年代後半になると、色んな白人バンドがAORな文脈でブルー・アイド・ソウルをこんな感じでやるんだけど、モノホンのソウルを聴いて思うのは、そんなのとっくに70年代初頭にやってたよ!っていう話。そしてホランド・ドジャー・ホランドの”I’m In A Different World”と”Take Me In Your Arms (Rock Me For A Little While)”。後者はドゥービー・ブラザーズのカバーで有名(オリジナルはエディー・ホランド自身1964年のレコーディングで、翌年にキム・ウェストンがカバー)。そしてサイモン&ガーファンクルの”Homeward Bound”のソウル・カバーなんてのもあるんですよ。そしてそのアート・ガーファンクルが1975年にカバーしたフラミンゴスの”I Only Have Eyes For You”。ジャクソン・ファイブの楽曲を多く手がけたThe Corporations(ベリー・ゴーディ、アルフォンゾ・マイゼル、フレディ・ペレン、デイク・リチャーズ)の”Live It Up”もジャクソン・ファイヴに比べると大人っぽい作りで。リオン・ウェアやパム・ソーヤーがソングライティングに加わった”If You Were My Woman”もある。スモーキー・ロビンソンがプロデュースしたマーヴィン・ゲイの”Ain’t That Peculiar”のカバーも印象的だった。どう考えてもあざといアイドル歌謡のような作りなんだけど、この歌唱力ですから別格!