8年ほど前に「楽器道」というタイトルで、拙ブログで楽器について語っていたのを思い出した。当時は通りすがりの方からのコメントや質問があったり、ギター好きの人からの反響が大きかったことを思い出す。それも今は昔。楽器屋が潰れたり(わが町三鷹にあった三鷹楽器――往時は吉祥寺パルコにも出店していた――もとうの昔に倒産…)、そしてまさかのギブソンが経営破綻しちゃったりするという異常事態!そもそもギターソロなんか弾かない音楽表現になってきているし(そもそも現実生活にブルーズがないから、感情が平板になってきているのか?)、ギターをメインに据えたロック・ミュージックじたいが団塊世代と共にフェイドアウトしかけている。だとしても、ギターや楽器は、いつまでも人間と共にあり、フェイドアウトしようがないと思っている。実売店舗は確かに虫の息になっているのかもしれないけれど、かつての自分と同じように、ギターを背負った10代20代が街には溢れている。
さて久々の今回は、一目惚れ状態で最近手に入れた古いミニ・ガット・ギター、Luna MG-60。MGはミニガットの略、60はおそらく当時の定価6000円ということだと思う。細身でマーティンの4分の3サイズのパーラー「5」みたいな雰囲気。ヤマハのギタレレよりはちょっと大きいという、絶妙に求めていたサイズだった。そして何より見た目。レキント・ギターのような白のピックガードが後付けにしては雰囲気が良い。鶴岡雅義的なムード歌謡を弾きたくなる感じ。ただ、チューニングはギタレレなどと違い、レギュラー。性能のいいミニ・ギターが溢れている今日この頃だけれど、30秒で即決。半ばジャンク品で1万円也。元の持ち主が入れ替えたのか、なぜかコルドバ・ミニのソフトケースが付いていた。
Lunaは1950年代のハワイアン・ブームの際にウクレレで一世を風靡したメーカー。鎌野楽器が岡山県のルナ楽器に製造させていたものらしい。現在はFamousブランドで有名なキワヤ商会がLunaというブランド名を一応残している。ウクレレのブランドが復活したとき、デザインが最高で欲しかったけれど、それは買えずじまいだった。
で、これはLunaながらギターだから、ハワイアンブームが終わった後、ギターを作ったものではないだろうか。MFという型番のミニ・フォーク・ギターも存在する模様。今手元にあるのはガット。MG-80というひとつ上位のミニ・ガットモデルは割と出回っていて、サウンドホールの装飾が少しだけ豪華な感じ。ボディ内に貼られたメーカーのラベルの色褪せから判断すると、1960年代のものではないかと思うけれど、どうだろう。ご存知の方がおられましたら、情報求ム。今でこそミニ・ギター花盛りだけれど、当時は結構珍しかったはず。
トップはスプルース、サイド・バックはマホガニー、いずれも合板。元の持ち主が相当磨いたと思われるけれど、指板とフレットはピカピカ。楽器愛ですね。何といっても飴色のスプルースは合板ながらオールドの味わい。古い国産アコギ特有の色合いだと思う。ただ当時の安価なギターの宿命か、ネックは少々順ゾリ、ブリッジには再接着跡があり、1箇所2mmほどの微妙なスキマのようなものが見えなくもない。まあそれは50年以上前のギターだから仕方ないとして、チューニングが狂いやすいのが致命的だった。たぶん元の持ち主もそれが理由で売ったんじゃないかな。さすがに閉口、万事休す。部屋のオブジェ決定か…とあきらめかけたのだけれど、ペグが原因だと気付く。
そこでアリアの1000円くらいのペグAT-95Cを購入し(ミニ・ガットのサイズ的にこれしか嵌らなかった)、ドリルでグリグリ付け替えてみると、やっと狂わなくなった。しかも毎日弾いているうちにネックのソリのコンディションも良くなってきたのが不思議だ。しばらく弾かないとギターがスネるとよく言うが、それは嘘ではない。コンサート・ウクレレ感覚で凄まじく軽いのがいい。音の方はさすがに弾き込まれていて、合板ながら鳴る。8〜10フレットはハイポジションのCコードを弾き過ぎたのか、指板がえぐれている。これもまた50年の時を感じさせる。