日本アカデミー賞主演男優賞、第1回受賞だったのは俳優の林隆三。彼のレコードというのは意識していなかったけれど、極上のジャジーAORだった。これがファーストで自身単独名義では唯一作。俳優として数々の映画や舞台、大河ドラマなどでもお馴染みだったけれど、高校時代からシャンソンを好み、ピアノの腕前も一級だったのだという。アルバムには「昔愛したお前に、最初のつらい恋を。つぶやくように林隆三が弾く。」なんてキザなコピーがあるけれど、クレジットを見る限り、レコーディングでは弾いていない模様。でもこのアルバム、サウンド・プロデュースを務め、2曲除いて楽曲を書き下ろしているのがルパン三世のテーマ音楽を手がけたことで知られるジャズ・ピアニスト大野雄二。作詩は矢沢永吉「時間よ止まれ」などで知られる山川啓介の書き下ろし。この人の詩は美学があって良い。2014年にお亡くなりになったのは、まさにライブハウスでの演奏直後。その最期までもがピアノ・マンだったことになる。