いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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Steve Addiss・Bill Crofut / Such Interesting People(Verve / 1963)

markrock2017-07-03


一時期サイモン&ガーファンクル(S&G)ブレイク後に雨後の筍のように登場した男性デュオばかりを集めていた。段ボール何箱分かくらい「何とか&何とか」っていうレコードがあるんですが、アディス&クロウフット(Addiss And Crofut)ってのもその一つ。1968年にコロンビアからリリースされたジョン・ハモンド・プロデュースの『Eastern Ferris Wheel』っていう盤(コロンビアからは前年にもう1枚出ている)が素晴らしい出来で。未だかつて語っていた人は誰もいないけれど(笑)。メンバーのスティーヴ(ン)・アディスは70年代には音楽活動をリタイアし、日本画俳画・禅画)研究家として大学教授になった。現在アメリカで専門書を多数出版しているみたい(http://www.stephenaddiss.com/)。自分でも日本画を描いているみたいだけれど、アメリカではホンモノだと思われているんでしょうけれど、ちょっと稚拙に見えるような気も。

さて、この『Eastern Ferris Wheel』もジャケからして60年代ヒッピーの東洋趣味全開。アコギ、バンジョーに加えてタブラや琴も入って無国籍フォークと化しているんだけれど、”Flowers Fall Away(Sakura,Sakura)”のタイトルで「さくらさくら」をフォーク風にアレンジしているのが「赤い鳥」的アプローチで、良い。他にも日本の子守唄(「坊や良い子だねんねしな」と日本語で歌う)や中国、インドネシアの民謡をアレンジして歌っている。最後ブラジルまで行ってしまうと、もう「非西洋」という括りでしかなくなってしまうのはオリエンタリズムの産物ではあるのだけれど。しかしオーケストレーションを交えた”He is There”なんてのは目くるめくオモチャ箱ソフト・ロックだったり、当時レーベル・メイトということになるデイブ・ブルーベック・カルテットと共演した”Forty Days”もフォークの枠を超えたプログレッシブな仕上がりで。バンジョーやフレンチホルンを演奏するクロウフットは1990年代にデイブ・ブルーベックの息子クリス・ブルーベックと作品をリリースしている。

このアディス&クロウフット、実は芸歴は古くて、日の目が当たったのはS&Gよりも先だった。スティーブ(ン)・アディス&ビル・クロウフットという名前で1962年のフォークウェイズ盤でデビューしている。1935年にニューヨークで生まれたアディスはS&Gよりもさらに上の世代。ジョン・ケージとは同じ学び舎で作曲を学んだ友人だったんだとか。そう、そもそもこの人達のことを思い出したのは、先日1963年のVerve盤『Such Interesting People』を中古レコ屋で入手したから。結構良質のモダン・フォークだった。後にCTICreed Taylor Issue)で知られることになるクリード・テイラーのプロデュース。しかも今まで噂には聞いていたけれど、コレクターだったという故「長門裕之」所蔵盤だった(裏ジャケにスタンプがありました)。桑田佳佑がデビュー時に瓜二つだと騒がれた石原慎太郎原作太陽の季節はじめ、お馴染みのあのお方ですね。

桑田とは湘南コネクション。弟・津川雅彦拉致問題云々で石原と同類になったのも文化史的に興味深いんですが。まあそれはいいとして、1ドル360円時代にリアルタイムでこんなマニアックなフォークのレコードを手に入れていた、ということにも驚きを感じつつ。