今年の3月リリースでしたか。買おう買おうと思いつつ、気付けば6月も終わりになって。2000年代に入ってからの作品はWhistling Dog MusicとCheskyからリリースされているけれど、今回はジャズのCheskyから。1993年の『Good Friends』や1997年の『Ink』もCheskyからのリリースで、どちらもカバー中心のライブ感ある作りだったけれど、今回もその路線。ジャケが割と低予算風で粗い感じってのも共通している(笑)。あれ、と思ったのは2015年の録音だったこと。リヴのアコギ、シェリー・バーグのピアノ、デイヴ・フリンクのベース、そしてパーカッションにあのバシリ・ジョンソンが入っているんですね。そして今作は一押しの女性シンガー・ソングライターのチェルシー・ベリーのお披露目盤的な意味合いがあるみたい。ホームページ(http://www.chelseaberry.com/)を覗くとクリス・スミザーもその才能を賞賛している。優しい歌声でリヴの個性とぶつかり合うことはない。音楽生活50周年記念盤にあってリヴの音を若返らせくれた。
1991年の『Our Turn To Dance』に入っていた”I Must Be Doing Something Right”のセルフカバーが冒頭に配置されていて、その他チェルシーにヴォーカルを委ねた”Louie Is Blowing the World Away”(ルイ・アームストロングに捧げた曲)や”Answer My Prayer”(キャロル・ベイヤー・セイガーとの共作で2009年の『Last Alaska Moon』収録曲)、”Shouldn’t Have Fallen for You”を除く10曲がお得意のカバーで。ほっこりするのはやはりチェルシー・ベリーとデュエットする”Penny Lane”。ケニー・ランキンのヴァージョンなども想像しつつ聴いたけれど、しっかりリヴ色を出している。オズの魔法使いのメドレー”Merry Old Land of OZ/Over The Rainbow”では後半、リヴ3枚目のアルバムのタイトル曲だった”Over The Rainbow”をチェルシーに任せていて。改めて思うけれど、ミュージカルもののドリーミーなタッチが兄ジェイムスとはまた違ったリヴの個性なのかなと。中でも『ピーター・パン』の”Never Never Land”は凄く良かった。『アニーよ銃をとれ』の”Anything You Can Do”のリヴ&チェルシーの掛け合いも○。そしてラストの”Bye Bye Love”と”Try To Remember”はフォーキーなリヴが大好きなファンの期待を裏切らない。エヴァリーズの”Bye Bye Love”はデイヴィ・グレアムの”Anji”のサビのギターフレーズをアレンジしたイントロがくっ付いているなど、ブルージーに展開していて。”Try To Remember”はフォーク世代にとってはブラフォーということになるけれど、リヴはスロウなピアノでしっとりと。
しかしさすがのリヴもお爺ちゃんになったなあと思ったり。まだ66歳ではあるんですが(1950年生まれ、ちょうど私の父と同い年なんですね…)、この『Safe Home』のジャケットを見ていると、「じゃあ行って来るね」「気をつけて帰って来てね(Safe Home)」…という何気ないやり取りの中に「あと何回プレイできるのかなぁ…」という寂しさみたいなものが感じられなくもないような…
今までのリヴ・テイラーのレビューはこちらを(http://d.hatena.ne.jp/markrock/searchdiary?word=livingston%20taylor)。