ここの所、ベテランの新作が相次いでいる。LPでの並行リリースはなんだか足下を見られているようだけれど、ついついLPの方に手を出してしまう。LPは日本のショップにも入荷しているけれど、値段だけを取ると、アマゾンで予約注文するのが安かったり。
5月にリリースされたシンディ・ローパーの新作『Detour』。「回り道」というタイトルでシンディお気に入りの40・50・60年代のカントリー・スタンダードを歌っている。エミルー・ハリスからジョージ・ストレイト、リーバ・マッキンタイア、ヴィンス・ギルらをプロデュースしてきたトニー・ブラウンが手がけたナッシュビル録音。エグゼクティブ・プロデューサーには今回の企画の発起人たるサイアー・レコードのシーモア・スタインが。ビルボードのカントリー・チャートでも早速4位にランクインしたみたい。
これはLPで買って良かった。1曲目のスイングするロカビリー風味の”Funnel Of Love”が雰囲気十分なレトロ・サウンドになっていて(音が良い!)。チャーリー・マッコイ作でワンダ・ジャクソンが歌った曲。アナログにフィットしている音。ジャケもいいよね。御年62歳というけれど、お互いシンパシーを感じているレディー・ガガ同様、年齢を超越している雰囲気。ゲストはエミルー・ハリス(タイトル曲”Detour”をデュエット。このブログで取り上げたエルトン・ブリットやビル・ヘイリーなんかもレコーディングしている曲。)、ウィリー・ネルソン(なんとウィリーの”Night Life”をウィリーのギター・ソロ入りでデュエット!)、ヴィンス・ギル、アリスン・クラウス…と豪華そのもの。昔、来日公演を観に行ったジュエルとはパッツィ・モンタナの”I Want To Be A Cowboy Sweetheart”をヨーデル・ヴァージョンで歌っていたり。これにも当然感動してしまった。
カントリーと言っても、スキーター・デイヴィスの“The End Of The World”なんぞはオールディーズ・クラシックと言ってもいいかな。元々オールディーズ・リヴァイヴァル・バンドのブルー・エンジェルでデビューしたことなどを思い出す。その他にもドロシー・ムーアの”Misty Blue”やマーティ・ロビンスの”Begging To You”、カントリー・クラシック化している”Heartaches By The Number”、パッツィ・クラインの”I Fall To Pieces”などを。ラストの”Hard Candy Chiristmas”は比較的新しいドリー・パートン1982年のバラード。作曲は女性SSWのキャロル・ホールでした。この人の70年代初頭のエレクトラ盤は凄く良い。
ボーカルの艶も全盛期のままで驚いた。ひっくり返るヒーカップ唱法的な裏声も健在で。一時期メジャー契約が切れて、迷走しているというか、元気のない時期もあったのだけれど、グラミーにノミネートされた『Memphis Blues』あたりで生き返ってきた感じ。レディー・ガガに出会って吹っ切れたみたい。東日本大震災後の来日ステージも感動的だったし。なんと言っても感情過多なボーカル・スタイルに惹かれる。80年代は汗の匂いを消し去ったテクノな時代だったわけだけれども、29歳の遅咲きソロ・デビューを果たしたシンディのボーカル・スタイルにはどこか前時代的な汗の匂いがあったような。そして、不遇な立場に置かれていたり、どんな社会にも属せず生き辛さを抱えている(まさにUnusualな)あらゆる人を包み込む優しさもあった。1983年の『She’s So Unusual』はやっぱり印象的で、”She Bop”だとか、まだ5歳にもなっていなかったのに町の有線で聴く度に口ずさんでいたのを覚えているから不思議だ。マイケル・ジャクソンの『Thriller』と同種のインパクトがあったと思う。ピエール瀧さんの番組に出たときに、好きなアーティストは?の質問に「シンディ・ローパー!」と答えたことなども思い出した(当時から本当に好きだった…)。
ファーストから30周年経った2014年の記念盤。2枚組でデモやリハーサル・テイクを含むもの。日本語訳も出た自伝読みつつ聴くと発見があったり。
もちろん聴いていた当時はカセットだった。ファミコンのソフトもあった『グーニーズ』のサントラなんぞも久々に発掘した。”グーニーズはグッド・イナフ”って凄い邦題だと思う。このサントラにはTOTO加入前のジョセフ・ウィリアムスの貴重なトラックもある。
故アラン・トゥーサンにB.B.キング、ジョニー・ラング、アン・ピーブルス、チャーリー・マッセルホワイトがゲスト参加した2010年の『Memphis Blues』。これはシンディとハーピストのチャーリー・マッセルホワイトのサイン盤。