ゴリウォッグス改めクリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(CCR)と言えばアメリカン・ロックでもずぶずぶスワンピーでロッキンなサウンドがインパクトのあるグループだけれど、レコードをリリースしての活動期間は1968年から1972年までの4年、と意外と短い。その間に”Suzie Q”、”Proud Mary”、”Bad Moon Risiing”、”Down On The Corner”、”Travelin’ Band”、”Bad Moon Rising”、 "Up Around The Bend"、"Sweet Hitch-Hiker"、”Have You Ever Seen The Rain”…といったヒット曲を量産するわけだ。粘っこいR&Bからカントリー・タッチのバラードもあったり、アメリカ人にとっては鉄板の音だな、と思う。でもカリフォルニア出身というのが、ちょっと面白い。そのサザン・テイストは憧れや想像の産物、みたいな部分もあるわけで。
ジョン・フォガティは近年もパワフルなボーカルとネルシャツが健在で(笑)、ソロ・キャリアでも素晴らしいアルバムを残している。野球ソング”Centerfield”とかもアメリカの王道、ど真ん中直球勝負で。ただ、古巣のファンタジーとの契約上の係争で、ソロ活動が停滞したのは不幸だったかもしれない。元々バンドのリード・ボーカルだった兄トムとの確執もあったし。でも、近年のジョンのライブ映像を観ていると、相当我が強いミュージシャンだということが見ていてわかる。バックバンドのギタリストにソロもロクに弾かせないもんね…オレがオレが、という感じで。とはいえ、90〜00年代は活動停滞期の反動かと思うくらい充実作多し。1997年の『Blue Moon Swamp』に始まり、00年代は『Deja Vu (All Over Again)』(コレは出た当時、余りの「変わらなさ」に度肝を抜かれました…)、ライブ盤を挟み『Revival』(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20071114)、『The Blue Ridge Rangers ~Rides Again~』(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20100214)、最後はとうとうゲスト参加のセルフカバー『Wrote A Song For Everyone』…と、素晴らしい出来。
その一方で、解散後のCCRファンの溜飲を下げたバッタもんバンドを率いたリズム隊のステュ・クックとダグ・(コスモ)・クリフォードの活動も忘れられない。まずはドン・ハリソン・バンドだ。リード・シンガーのドン・ハリソンに、クロウフットのメンバーだったギタリストのラッセル・ダシェルを加えて。ラッセルはノーマン・グリーンバウムのヒット作『Spirit In The Sky』でのプレイや、トム・フォガティとの活動が知られていたから妥当な人選。
1976年のファースト『The Don Harrison Band』は結構悪くない仕上がりだと思う。パンチのあるドン・ハリソンのボーカルはジョン・フォガティを思わせ、サウンドはCCR印。冒頭マール・トラヴィス(テネシー・アーニー・フォード)のカバー、”Sixteen Tons”は、明らかに”Suzie Q”のタッチを意識したカバーものだし、カントリー色の強い楽曲を織り交ぜているのも実に楽しい。中にはメロウなサザン・ロックといった体のラッセル作”Sometimes Loving You”があったり。1977年のセカンド『Red Hot』も悪くはないけれど、時代の音作りの影響もあるのか、曲によってはキーボードが入ったポップ・ロックになっていたり、耳馴染みよく平板になっていて。もっと凶悪なギター・サウンドを聴かせて欲しかったけれど、当時そんなロックは古くなっていた。
そしてサザン・パシフィックを経たステュがダグと手がけた究極のバッタもんがクリーデンス・クリアウォーター・リヴィジテッド。略してCCRっていう。1995年結成、演るのはCCRの曲ばかり、という。ジョンが「コスモス・ファクトリー」というバンド名に変えさせようとした、なんていう一悶着もあったようだけれど。私がちょっと面白いな、と思ったのは、『Millennium Collection-20th Century Masters』っていう有名なベスト盤のシリーズがあったけれど、そのラインナップに入っていたこと。バッタもんだけど地位を確立している、という。2枚組のライブ盤『Recollection』を改めて聴いてみたけれど、忠実にCCRサウンドを伝承している部分もあって。ジョン・トリスタオのボーカルもしゃくり上げるようなジョン・フォガティ節を再現していて。ちなみにジョン・トリスタオは60年代後半にカリフォルニアでゾンビーズの”I Love You”をヒットさせた(日本で言えばカーナビーツみたいな…)バンド、People!のメンバーだった人。ジーザス・ロックの父、ラリー・ノーマンが在籍していたバンド。
コレ10年前だったら、ファンからもただのバッタもん、で切り捨てられて終わりだったかもしれないけれど。今にして聴くと、こうして往時の音を生演奏で残し、再現することの重要性を思い知らされる。人の命も友情も、バンドの結束も、そして取り巻くファンだって諸行無常、移りゆくものであるから。想いのある誰かが、かつて存在したはずの何かを残し、現前に表出させること…自分自身、そんな仕事に興味を持っている。『千と千尋の神隠し』の釜爺の科白に「昔は戻りの電車があったんだが、近頃は行きっぱなしだ」なんてのがあったけれど。しかも今思えば晩年、社会活動に目覚めた故・菅原文太の声だったことも忘れられない。