久々に韓国ビッグピンク手に取ってみました。これは惹かれたな。アメリカーナなソングライター、ジョン・ハイアット在籍のアメリカンロック・バンド、ホワイト・ダックのCD。ファーストも同時にCD化されているけれど、このセカンドからジョン・ハイアットが参加している。日本では人気がないけれど、アメリカでは絶大な人気を誇るジミー・バフェット(老後はフロリダで、みたいな万人の理想を投影しているのかな)の初期のバックを務めていたとか。ちょうどハイアットの新作『Terms of My Surrender』が出ているタイミングで。リマスターされた音も結構良かった。
ジョン・ハイアットと言えば、スリー・ドッグ・ナイトへの楽曲提供で契約が決まったエピックからのファースト・ソロ『Hangin' Around the Observatory』(1974)だとかセカンド『Overcoats』(1975)辺りまでは注目度が薄かった人。ソングライター目指してナッシュビルに行った人ですから、80年代前半カントリー畑のライターとしても芽が出てきて。そしてそいて、満を持してA&Mから出た1987年の『Bring The Family』がやっぱりキョーレツだったわけで。バックはライ・クーダー(『Borderline』からの付き合い)、ニック・ロウ、ジム・ケルトナーですよ。リトル・ヴィレッジというバンドもありました。カントリー、ソウル、ロック、フォーク、ブルーズと括るのも馬鹿げていると思わせられたアメリカーナは2000年代(頃ですかね)に命名されたある種の包括的なアメリカ民族音楽みたいな所があったけれど、そういう線の先駆けだったのかもしれない。パブ・ロックな人脈と結ばれたってのも今思えばよく判る音楽性。
個人的には、高校から大学生にかけての頃ですか、クリス・ヒルマン辺りを追いかけていて、デザート・ローズ・バンドの”She Don’t Love Nobody”の作者として注目し、大好きだったデヴィッド・クロスビーの”Through Your Hands”って曲(純粋なボーカル・アルバムだからかクロスビー・ファンには評判が悪いけど、リアルタイムで聴きまくった『Thousand Roads』(1993)に収録)の作者もジョン・ハイアットだぞってことになって『Stolen Moments』(1990)や『Perfectly Good Guitar』(1993)を買って。しっかりスワンピーでありながらポップなメロディに驚きました。そして遅ればせながら『Brong The Family』を買って心底打ちのめされたという。2000年の『Crossing Muddy Waters』も本当に良く聴いたな。
ミュージシャンズ・ミュージシャンという感じもある。エリック・クラプトンもB.B.キング(最近ステージで倒れたらしいけれど大丈夫かな)との共演盤のタイトル曲に気の利いたハイアットの『Riding With The King』を選んでいたし。
さて、ホワイト・ダック、習作かなとそこまで実は期待していませんでしたが、良過ぎでした。ハイアットの2曲以外もドン・クローツェやマリオ・フリーデルの曲が素晴らしい。コーラスもキレイで、アコギの音も良く、ウェスト・コースト・ロックのように聴ける楽曲もある。プロデュースはあのバズ・ケイソン。オリジナルのリリースは伝説のレーベルUNI。でもUNIって初期のニール・ダイアモンドもいましたね。
さて、ハイアットの曲”You Caught Me Laughin’”と”Sail Away”ですが、前者は90年代の音と言われても区別が付かないような完成されたハイアット節。気持ちの良いコーラスがサビにくっついてくるのが新鮮でもあり。声もあのまんまで。ランディ・ニューマンを想起してしまうタイトルの後者はあの時代ならだれでも演ったはずの”Helpless”と”The Weight”を足して二で割ったような曲。でもあの2曲には、後のアメリカン・ロックの方向性を指し示す何かがあった。
実は最近、1970年前後のアメリカン・ロックで全世界に数多のフォロワーを生んだ楽曲に着目していて。”The Weight”しかり、”You Ain’t Goin’ Nowhere”しかり。”Helpless”もそう。なにせディランに”Knockin’ On Heaven’s Door”を作らせたわけだから。あとは”Suite:Judy Blue Eyes”に”Take It Easy”だとか。アメリカン・ロックが真に芳醇だったのは1973年頃までかな、なんて思っている。それ以後はフォロワーやフォロワーのフォロワーになっていって。そんなことで言えばジョン・ハイアットだってフォロワーなんですが。1952年生まれですから、楽曲のポップな展開にロック世代の匂いを感じる部分も。そんなフォロワーでも地道に活動を続けていると、個性が滲み出てくるんですね。そしてロックのオリジネイターであるディランやクラプトン、ジョー・コッカーが逆にその楽曲を取り上げて…