いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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 遠藤賢司

markrock2013-10-05

/ 実況録音大全 1968-1976 第一巻完売記念濃縮盤( diskunion / 2013 )

日本を代表する純音楽家エンケンこと遠藤賢司20世紀少年の主人公も遠藤ケンヂでしたね(映画にはエンケンさんご本人も出てました)。あまちゃんの、としか言いようがなくなった宮藤官九郎監督の映画中学生円山(今年5月公開)にも出演してます。とりわけ表現者の方々はみんなエンケンさんのこと、大好きなんじゃなかろうか。エンケンさんを見ていると、表現というものはこんな素直なものだったはずなのに、てな当たり前のことに気付かされるのかもしれない。


未発表ライブ集です。このライブ集、もともとは10枚組(ニール・ヤング・アーカイヴスみたいな。ただそっちは8枚だから、エンケンが勝ってる!)だかっていう、お金持ちしか買えない(イヤ、ファンなら安いとも言えるか…)価格設定でありましたけれども、今回は完売記念濃縮盤。しかも『第一巻』未収録の3曲入り、という。もちろん私はココで手を打ったのであります。内容は1968年5月の初代エンケンバンド(ご本人によると「バンド」という意識はあまりなかったようですが…)から1976年5月の日比谷野音「ロックエリア・コンサート」まで。オープンリールのテープやら観客隠し撮りのテープから起こした貴重音源ながら、しっかりとリマスタリングされ、ダイナミックに迫り来る音に。楽曲としても代表曲を網羅してくれており、裏ベスト盤のようにも聴ける。


音源的には、後年まで親交が続くはっぴいえんど細野晴臣鈴木茂との”待ちすぎた僕はとても疲れてしまった”(1970年)とか、エンケンバンドに繋がる頭脳警察(当時は解散中)・石塚俊明との共演”プンプンプン”(1973年)、さらに洪栄龍のスラッピー・ジョーと共演した”気をつけろよベイビー”(1975年)なんてのも目を惹いた。


一昨日のインストアのフリーライブにも行ってきたけれど、とにかく狂ったようなステージで。66歳?本当ですか…私はほぼ半分くらいの年齢ですが、正直降参しました。ヤマハFG-180を持ち替えつつ、”猫が眠っている”、”踊ろよベイビー”をこれでもか!とぶちかます。息もつかせぬ歌声&ハーモニカ、マイクのハウリング、激しい生ギターの振動が渾然一体となって、迫りくる。エンケンさんが右手でギターを弾きながら左手でタッピングをして、さらに交互にボディを太鼓のように鳴らし出す頃にゃあ、狭い店内に小宇宙が出現してました。嘘じゃないですよ。嘘だと思うならライブに行ってみればわかります…(それにしても「あの空気感そのもの」を収めたライブ盤はまだないような気がする)。


遠藤賢司ブログ館より。転載不可の場合はお知らせ下さい。)

さらにトークが興味深くて。音楽を始めた頃、AmとGしかギターのコードを知らなかったけれど、その響きを「きれい」だと思って曲が出来た、とか。近所の神社でたまたま聴いた越天楽の調べに羽衣を着た天女が空を登る姿が見えて、そんな映像を歌にした、とか。だから自分の音楽を聴いて、作ったときのその映像がリスナーと共有できたら嬉しい、とか…すごく共感できた。音楽にしても小説にしても、表現というのは言葉にするのが難しい日常の中にきらめく何かしらを、誰にもできないやり方で切り取っていく作業なんだと私は思っている。その切り取った映像とリスナーの脳内が共振した時に、はじめて何かが生まれるのだろう。


それにしても近年のエンケンさんの音楽に滲み出ている土着の日本性にも注目しなくてはならない。ボブ・ディランを出発点としたエンケンさんがボブ・ディランとはまた違った航海を続けているのだから面白い。今回生演奏を久々に聴いてみたら、ロック民謡とでも言えるような旋律を孕んでいた。これが純音楽なのか、とナットクもして。意図せざることかもしれないけれど、日本人が気恥ずかしいと思うような(しかし捨て去れない)前近代性みたいなものを目の前に突き出してくれるのが彼の音楽だ。初めて聴く人は一瞬の抵抗を通り過ぎれば…その心地よさに気が付くはずなのだ。つまり、変にカッコつけてないで“踊ろよベイビー”っていうこと!!


最後に勇気を出して、神様エンケンに2枚のアルバムを手渡したところ、5秒くらい睨み付けるように凝視し…「時間を掛けて作ったキチョウなものを、アリガトウ!」ひゃー!へなへなと崩れそうになりました。ということでこれがこの日2度目の降参だったのです。


DISC 1
01.ほんとだよ(初代エンケンバンド)
02.猫が眠ってる
03.夜汽車のブルース
04.僕の歌を聞いてくれるあなたに
05.君のこと好きだよ
06.カレーライス
07.外は雨だよ
08.終わりの来る前に
09.満足できるかな
10.待ちすぎた僕はとても疲れてしまった(共演:細野晴臣鈴木茂)
11.今日はとってもいい日みたい
12.歯のないうさぎの口
13.雪見酒
14.猫と僕と君

DISC 2
01.歓喜の歌
02.寝図美よこれが太平洋だ
03.ねえちょいとそこ行くお嬢さん
04.ミルク・ティー
05.君にも見えるかい
06.早く帰ろう
07.プンプンプン(共演:石塚俊明)
08.けんちゃんの宇宙旅行
09.ふりそそぐ星
10.遠い汽笛
11.またいつか会いましょう
12.気をつけろよベイビー(共演:スラッピー・ジョー)
13.ゴー・ゴー・ケンジ
14.踊ろよベイビー

  • ボーナス・トラック-

15.待ちすぎた僕はとても疲れてしまった※
16.歓喜の歌※
17.ミルク・ティー
※1972年 長野県 篠ノ井市民会館での実況録音