いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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 Haruomi Hosono (細野晴臣)

markrock2013-05-23

/ Heavenly Music(Victor / 2013 )


町山智浩さんの新刊『本当はこんな歌』を読んでいて。フィル・コリンズの”In The Air Tonight”が寝取られた妻への恨み節ソングだったなんて…滅法面白い本!この曲をフェスのオープニングでやたらと歌っていたフィルは相当根に持つタイプだったのかな…なーんて、冗談はさておき。


読んでいると、日本文化などというものは外来文化の受容の歴史であり、あくまで「翻訳」とその「勘違い」から成り立っていたことをつくづく思ってしまった。そういう意味で言うと、それは細野晴臣というミュージシャンの歩みにも当てはまるように思える。ただ、戦後のポピュラー・ミュージックにリアルタイムで触れてきたミュージシャンなだけに「翻訳」はお手の物だったにしても、「勘違い」にも自覚的だった点は特筆に値するだろう。西洋のオリエンタリズムという「勘違い」を、日本人としてあえて演じるという倒錯。これは音楽を知らなければ出来ないことだし、知るミュージシャンも少なくなってきてしまった。


そんなことを思ってかどうかわからないが、細野晴臣の新作カバー・アルバム『Heavenly Music』にも本人による長文の楽曲解説が付いていて。これもある種の、音・ジャケット・歌詞・解説からイマジネーションを膨らませるという旧来のレコード文化へのデディケーションだと勝手に受け取っている。


聴いていると、耳に心地よいホソノさんの低音が遠ざかったり、近づいたり。あえてそのままにしているのか、それとも自分の心が音楽に近づいたり、遠ざかったりしているからなのか。過去と未来を行ったり来たりしつつ、音のランドスケープに身を任せる40分間。


ザ・バンドものが2曲あるのだが(1曲は後期バンドが演じたディランもの)“All La Glory”と”When I Paint My Masterpiece”はホソノ自身による日本語詩を付けていて。それがHosono Houseの世界観になるのは一つの発見だった。


思えば2005年の狭山ハイドパーク・フェスがあり(あの時の感動はいまも新しい…)、そこから原点回帰の流れが生まれ、必然的にボーカルを取る曲が増えていった。そして2007年の前々作『Flying Saucer 1947』(Harry Hosono & The World Shyness名義)、震災後のリリースとなった前作『HoSoNoVa』http://d.hatena.ne.jp/markrock/20110604)という老いて尚盛ん!な傑作を生み出すに至っている。本作に至るまで、”デイジーワールドの集い”をはじめ何度かライブを観ているけれども、その才気と旺盛な創作意欲を思うと、今度はオリジナルで、とついつい期待してしまう。

http://youtube.com/watch?v=qeHTFlkBBcM

01. Close to You (作詞:Hal David 作曲: Burt Bacharach
02. Something Stupid  (作詞・作曲:C. Carson Parks)
03. Tip Toe Thru The Tulips with Me (作詞:Al Dubin 作曲:Joseph Burke 訳詞:細野晴臣
04. My Bank Account Is Gone (作詞・作曲:Jesse Ashlock)
05. Cow Cow Boogie  (作詞・作曲:Benny Carter, Gene Paul, Don Raye)
06. All La Glory (作詞・作曲:Jaime Robbie Robertson 訳詞:細野晴臣) 
07. The Song Is Ended (作詞・作曲:Irving Berlin 訳詞:細野晴臣) 
08. When I Paint My Masterpiece (作詞・作曲: Bob Dylan 訳詞:細野晴臣
09. The House of Blue Lights (作詞・作曲:Don Raye, Freddie Slack)
10. ラムはお好き? part 2  (作詞:吉田美奈子 補作詞・作曲:細野晴臣) 
11. I Love How You Love Me(作詞・作曲:Barry Mann, Larry Kolber)
12. Radio Activity (作詞:Ralf Hutter, Florian Schneider, Emil Schult 作曲:Ralf Hutter, Florian Schneider)

レコーディングメンバー:高田漣 / 伊賀航 / 伊藤大地(SAKEROCK) / コシミハル
ゲストミュージシャン:
坂本龍一(Key / Radio Activity)
岸田繁(Cho / When I Paint My Masterpiece)
Salyu(Cho / I Love How You Love Me)
アン・サリー(Cho / Something Stupid)
吉田美奈子(Cho / ラムはお好き? Part 2)

All Tracks Arranged & Produced by Haruomi Hosono