/ 明日の想い出 ( Forestaurant / 2013 )
なんて誠実な音楽なんだろう、と思う。私自身は佐久間さんとお話ししたことはないけれど、中川五郎さんのライナーを読んでそのお人柄と同じものなんだろうな、と思ってしまった。飲んだくれ、なイメージのある武蔵野フォークの現役世代からみると、音楽業界に残らないんじゃないか、と思ったくらいの優等生だったそう。世代的にも現役世代の少し下(といっても佐久間さんはもう還暦だそうです)だった。
後追いフォーク・ファンのワタシにとっては、高田渡から林亭に入った、というより南こうせつをはじめとしたフォーク・シンガーのバックで見かけるようになり、ヴァイオリンやマンドリン、ギターを持ち替えているのを見て、すごいぞ、ということになったのが最初。もちろんその後高田渡のライブ映像でもお見かけして、実際に生演奏を聴いたのは吉祥寺マンダラ2での瀬戸口修さんのライブ。当時お世話になっていたブルースターの社長さんに、佐久間さんだぞ〜なんて言われてあいさつしたけれど、当時は話しかける勇気がなかった。
ちなみに、楽器の腕に加えて佐久間さんの「うた」の巧さに気がついたのも瀬戸口修さんの『30周年記念LIVE』(2008年)での客演なのだった。
それから2004年の『最初の花』を買って、2009年林亭のまさかのセカンド『風は歌う』に感動して…
満を持してのフル・アルバムの今作、なんとも言えない新鮮さ、初々しさがあるのもとても良い。本盤のスタートは永六輔書き下ろしのジャジーな”明日の想い出”。デューク・エイセス提供曲のセルフ・カバー”はるなつあきふゆ”も永六輔が手がけたもの。映画監督になった小林政弘との共作”キミの歌を聞かせておくれ”や佐藤”GWAN”博との共作2曲、そしてグッと来てしまう”母への手紙”もある。チャップリンのかの名曲のモチーフを佐久間流にアレンジしたラストの”そう、スマイル!”はスタンダードの風格だった。
最近復刊された高田渡の詩集『個人的理由』の中の”夕暮れ”に曲をつけたものや”WATARU’S WALTZ”を聴いていたら、吉祥寺バウスシアターで観た大好きな映画『タカダワタル的』を見直したい気分になってきた。亡くなってからもう8年近く経つとは…ディスクユニオン特典のCD-Rには”生活の柄”のインストも収録されていた。林亭の盟友大江田信氏のハイファイ・レコード・ストアではまた別の特典CD-Rがついているというのだから悩ましい。ところで『個人的理由』だが大きく期待して買ってみたものの、詩の方はそこまで感心しなかったかな(天国の渡さんスミマセン…)。
2011年に瀬戸口修さんのシングル『ボレロ』にコーラスで参加させて頂いたが、そのアルバムのタイトル曲でヴァイオリンを弾いていたのも佐久間さんだった。日本のフォークに長年憧れてきたワタシとしては、レコーディングでお会いしたわけではないけれど、同じ紙にクレジットされただけで、天にも昇るような気持ちになったのを覚えている。