/ 白呪( 1975 )
兵庫県の殿ってのはお馬鹿なのですね。再三のNHK清盛大河批判。東京も相当のお馬鹿だけれども。だいいち『太陽の季節』なんていう、障子に逸物を突き立てるシーンを売り物にした下卑た小説で世に出た三流作家が、人の小説を批判してはならない。好きな事を言いたいように言う人間の根底に優しさがなければ、ただの暴力だ。どこへ出しても恥ずかしい人。けして人を貶めることなく、権力に屈せず、清潔な人でありたいと思う。
そんな気分の時思い出したのは美輪明宏だった。美輪さんがいる限り、日本は大丈夫だと思う。自分の中では下品な政治家と対極に位置する尊敬すべき存在だ。
これほどに演劇的な歌手を私は知らない。歌で表現できることをやり尽くした不世出の歌手・ソングライターだろう。生で唄を聴いて涙が止まらなかったのは美輪さんが初めてだった。
“祖国と女達(従軍慰安婦の唄)”、”悪魔”、”亡霊達の行進”といった戦争をテーマにした普遍的な楽曲から、代表曲”ヨイトマケの唄”の再演など、汗水垂らして働いた戦後ニッポンの心意気を思い起こさせてくれる楽曲を収録している。シャンソンと言うにはリアルで本流からは敬遠された音だろうが、当時フォーク・ミュージックが持っていたメッセージ性に近しいアプローチゆえ、当時エレックからリリースされた作品というのもうなずける。
自分の中では、白と黒の中にではなく、灰色の中に真実や強さを発見した、大切な1枚だ。