いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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Haruomi Hosono(細野晴臣)

markrock2011-06-04

/ HoSoNoVa ( Victor / 2011 )


もちろん発売日に入手しましたよ。ただ、諸メディアで余りに多くを語られすぎているだろうから、しばらく寝かせていた。ホソノ場ってな意味を持つこの作、単純解釈をしたリスナーによっては、そのタイトルからボサノヴァかと思って聴いたなんて言う勘違いもあったようだ。また、狭山のハイドパーク・フェス以降、歌う欲求が強まったという彼がワールド・シャイネスを率いたツアーにおいてホソノハウスおよびはっぴいえんどモノを解禁した…なんていうこれまでの経緯もあったものだから、今作を第2のホソノハウスだ!なんてそんな期待をして迎える機運もあった。前作『FLYING SAUCER 1947』がハリー・ホソノ&ザ・ワールド・シャイネス名義の作で、今作は細野晴臣名義のボーカル盤だったってこともあって。


でも、それもまた違うだろう。もちろん1曲目の”Ramona”の日本語カバーのニュアンスが、”ろっかばいまいべいびい”を思わせるモノであったとしても。別にいまさらジェイムス・テイラーを日本語で演ったような楽曲が収められているわけでもないのだ。


流石に古い楽曲をカバーすることを、才能の枯渇だなんて切り捨てる人はもうこのご時世いないだろう。やはり本作、ボブ・ディランと同様の心性を感じ取ってしまった。それはボブ・ディランの話題になったラジオ・プログラム、テーマ・タイム・レイディオ・アワーってやつ。毎回決められた楽曲のテーマに基づいた、古いブルーズやジャズ、リズム&ブルーズ、ロックンロール、カントリーを紹介した番組。もう著作権が切れている音源だから、番組で流れた楽曲のノン・オフィシャルの激安ボックスが各種出ているので、興味がある人は聴いてみてほしい。


ホソノは、日本人として、亜米利加文化の影響を受けまくってきたわけで、アメリカ人の心を持った日本人として、その自文化に感じとれるエキゾティシズムや東洋趣味をおもしろおかしく表現形態に変えてきた人。トロピカル三部作とかね。その頃取り上げたホンコン・ブルーズの作者、ホーギー・カーマイケルの”Lazy Bones”がヴァン・ダイク・パークスのピアノ演奏も加えて聴けるってのが素晴らしい。彼の音楽人生がつながり、おわり、はじまるという感覚。レスペクトしていた高田渡ともやっぱり共通する意識〜反骨するアメリカン・ミュージックの骨の一部となることにしか興味がない〜があるのだな。息子の高田漣も良い演奏を聴かせてくれるし、さきの"Lazy Bones"は高田渡が"ねこのねごと"と改作し、好んで歌っていた曲でもあった。


他にも、”Lonesome Road Movie”での鈴木茂のギターが唯一無二の好演だったり、トニカク聴き所多し。