/ In Hoagland ( 1981 )
しばらくお休みしている間に色々新作が出ていて。色々入手しているけれど、聴くのが追いつかない状況。まあぼちぼち紹介していこうかと。
とか、いいながら、思いっきり旧譜を聴いている。1981年の『In Hogyland』。ホーギー・カーマイケル晩年の本人も加わった、本人参加のトリビュートってな趣きのトリオ作。
結構人気盤のようで、LPもそこそこの値が付いているし、かつてCD化されたもの("Small Fry"がボーナス収録されている)もプレミア価格がついているようだ。というのも、誰でも知っているホーギーの名曲を、モッズのアイドル的なオルガニスト&シンガー、ジョージー・フェイムと女性ジャズ歌手のアニー・ロスと共に比較的コンテンポラリーな音で仕上げていると言うんだから、マコトにシュミが良い。文句付けようナシ。アレンジャーはハリー・サウス、ロンドン・レコーディングでイギリスのジャズ・ミュージシャンがバッキングを務める。ホーギーにとってはリリースの5ヶ月後に82歳で亡くなったと言うこともあり、最晩年のレコーディング。ホーギーというとセピア色の1930年代のイメージで捉えている向きには、ここまでビビッドな音で彼の歌とピアノを聴けることすら奇跡のマッチングと思えるかもしれない。
曲目はホーギーのキャリアをおさらいする感じで、アメリカン・スタンダードいや、世界のスタンダードとも言える”Stardust”、”Georgia On My Mind”をはじめ、”Rockin’ Chair”、”Up A Lazy River” 、”Two Sleepy People”、”Drip Drop”などを歌っている。
ジャズというカテゴリー内に押し込められて語られることもあるけれど、レイ・チャールズやウィリー・ネルスンといったソウル、カントリー畑のシンガーにも好んで歌われていることからも判る通り、太いアメリカン・ルーツ・ミュージックの幹に位置する重要人物。ライターでありながら、ピアノを弾いて自演もしたという点も、シンガー・ソングライターの先駆けという意味でも特異な人。ジャズならマット・デニスとか、そんな語り口を思い浮かべてしまう。
やっぱりアメリカの音楽の根は深いなとつくづく思う。そしてまた、ポピュラー音楽のある種の到達点が戦前にあったのだということに気付かされる。ボブ・ディランのラジオ番組の選曲や細野晴臣の新作『HoSoNoVa』を聴いても感じたことだけれど。9.11以降、アメリカを全否定するポーズを歓迎する向きが、かつてアメリカの文化的植民地だったここ日本で見受けられるけれども、それを馬鹿の一つ覚えと言わずして何と言おう。優れた文化は政府が作っているのではないという単純なことなのに、だ。知れば知るほどアメリカの音楽がたまらなく好きになってくる。