/ Ballads ( Impulse / 1963 )
昨日藤岡靖洋氏のジョン・コルトレーン本のことを書いたけれど、あっという間に読み切ってしまった。ここまで内容の濃い新書は久々。とは言っても、古いジャズファンだったら知っている話も多いのかもしれないけれど。いずれにしても、コレを聴かずにいられないと思って取り出してきた。手元にあるのは2002年に2枚組でリリースされたデラックス・エディション。1枚はオリジナルの不朽の大名盤を収めたモノ。2枚目は別テイクとか、シングル・リリースされた”Greensleeves”などが収められている。
この穏やかさと判りやすさは、聴き手を選ばない。ジョン・コルトレーン、マッコイ・タイナー、ジミー・ギャリソン、エルヴィン・ジョーンズという黄金カルテットによるものだ。しかし、その穏やかな音が、代表作”My Favorite Sings”の熱を帯びた音に変化していく背景に2人の女性が関係しているとは知らなかった。家庭的な最初の妻ナイーマから、ピアニストでもあり、最後までジョンを支え続けた刺激的な妻アリスへと、ジョンの心が移っていく様がその音に表れているという指摘にはなるほどと思わされる。ジャズに関しては門外漢だけれど、そうした背景を知るにつけ、ジャズを理解する面白さに目覚めてしまう。
マイルス・デイヴィスとジョン・コルトレーン、同い年の二人だけれど、ロック・ファンにはどちらも人気がある。全盛期の知名度や長生きした分、マイルスに分があるように感じていたけれど、この本で、ラヴィ・シャンカールに心酔していたとか、ラヴ&ピースなヒッピーが共鳴していたとか、ジョンの思想を聞きかじるにつけ、たまらなく興味が出てきた。ブラック・パワーを体現した人物としても重要だ。もっと早く気がつくべきだった。